表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヴィリジアン  作者: 千月志保
第1章 ムーンホルン
3/170

宰相エストル

 ノックをすると、エストルがわざわざ迎えてくれた。

「入れ」

「失礼します」

 グレンが部屋に入ると、エストルはすぐにドアを閉めた。

「執務室で話を聞いても良かったのだが、お前もここの方が気が楽だろう」

「確かに」

「私もお前に敬語で話されると何だか落ち着かない」

 グレンとエストルは士官学校の同期で、その頃からの友人だ。今はエストルの方が位が上のため、人前では敬語を使って話しているが、二人だけのときは昔と同じ口調だ。

「何か飲むか?」

「そうだな。コーヒーがいい。何だか気分が晴れないんだ」

「ヴァンパイア討伐から帰ってきたお前はいつもそうだ。だがな、グレン」

 エストルはコーヒーを淹れながら言った。

「陛下の前ではあまり態度に出さない方がいい」

「分かってる。でも」

「お前の身のためだ」

「でも、君だって言っていたじゃないか。陛下のご様子がおかしいって」

 エストルは口をつぐんだ。


 まだ士官学校に入って間もない頃だった。

「どうしたんだ、エストル?」

「いや、気のせいだ。気にしないでくれ」

「何だよ、エストル。話せよ」

「聞いて、くれるのか?」

「当たり前だろ」

 エストルはそれでも少し話すのをためらった。そして、ようやく重い口を開いた。

「殿下のご様子が……おかしいんだ」

「え?」

 エストルは代々宰相を始めとする要職に就いていた名門の出だったので、幼い頃から当時の王太子つまり現国王セレストの遊び友達だった。

「飛んでいた蝶を素手で捕まえて……」

 グレンは息を呑んだ。

「握り潰されたんだ。狂ったように……笑いながら……」

「そんなばかな」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ