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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第3章 エリー
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消えた魔剣

 相当進んだような気がする。突如広い空間が目の前に現れた。今までずっと一本道だったので、何だか異様だ。

 来た一本道の正面に空洞があった。ちょうど来た道に続く空洞と同じくらいの大きさだ。ここが最深部だろうか。グレンは気を引き締め、剣を構え、その空洞に入った。すると、部屋の中央付近に人影があった。

「魔剣を探しに来たのか?」

 構えていた剣に力を込めようとしたそのとき、聞き覚えのある声がした。

「ウィンター?」

「魔剣ならもうここにはない」

「何ですって?」

 グレンはウィンターの方に走っていった。ウィンターが腰を下ろしていた部屋の中央付近には二重の円が描かれている場所があった。円と円の間に古代文字が記されている。「魔剣ヴィリジアンここにあり」。グレンは屈んで文字に魔力を注いでみた。洞窟に刻み込まれていただけの文字が光を帯び、金色に輝いて消えた。間違いない。

「そう。魔剣はここに封印されていた」

「ウィンター」

 グレンは静かに抑揚のない口調で話すウィンターを見つめた。

「なぜあなたは魔剣のことを知っているのですか? そもそもなぜこんな危険な洞窟に」

「魔剣がここにないことをお前に伝えるためだ。探しているのだろう?」

 そのとおりだが。

「なぜ、魔剣がここにないことを知っているんですか?」

 グレンの口調からも抑揚が失われてきた。静かに探るようにウィンターに尋ねた。

「以前ここに来たことがあるからだ」

「あなたは知っていたのですか? 魔剣がヴァンパイアの手に渡ると危険だということを」

「ヴァンパイアの手に渡ると危険な魔剣もある、ということは知っている」

 魔剣といっても一様に危険、ということではないということか。いずれにしても、ウィンターも自分と同じ目的でこの洞窟に来たことがあるということだ。

「どのような魔剣が危険か分かるんですか?」

 ウィンターは首を横に振った。

「魔剣に秘められた力は様々だ。それをどのように引き出すかは使い手次第だ。ただ一つ言えるのは」

 ウィンターは複雑な表情をした。

「魔剣の力は魔力によって引き出される。そして、上級ヴァンパイアは強大な魔力を持っている」

 グレンは不安になった。もしすでにここにあった魔剣がヴァンパイアに渡っていたら。ここに棲んでいると言われていたドラゴンの姿もない。ドラゴンを倒せる程度の力を持ったヴァンパイアがドラゴンを倒して魔剣を持ち去ったという可能性は大いにありうる。最悪のシナリオに考えを巡らせていると、ウィンターにぽんと背中を叩かれた。

「帰ろう。ここにもう用はないだろう?」

 確かに魔剣がないなら、もうここに用はない。

「そうですね。帰りましょう」

 気分が晴れないまま、ウィンターと出口を目指した。

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