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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第3章 エリー
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ドラゴンの棲む洞窟

 マスターが荷物を運ぶのを手伝ってくれた。大して荷物は多くないが、結構な距離を歩いてきた後なので、ありがたい。

 下に降りると、早速マスターが飲み物を用意してくれた。一口飲むと、喉を通る冷たい感触が心地よかった。そんな暑くはなかったが、荒野に吹く空っ風のせいで喉が渇いていたのだろう。

「冒険者かい?」

 カウンターの一席空いたところに座っていた唯一の客が話しかけてきた。

「そうです」

 王騎士であると答えても良かったが、冒険者として情報を聞いた方がいいと思い、訂正しなかった。

「お前さんもあの洞窟狙いか」

「ええ。何か噂とか聞いたことありますか?」

「あそこはやめとけ。魔物がうじゃうじゃしていて、先に進めないって話だ。生きて還ってきた奴らはみんな入ってすぐにやばいと思って引き返してきた熟練冒険者だ。お前さんみたいな若い冒険者は無茶をするからいかん」

「誰も、奥に何があるか見たことはないのですか?」

「ドラゴンが棲んでいるという言い伝えがあってな。ドラゴンがいるなら、そううかつには近づけないだろうってことで、昔、魔剣を封じたっていうな。まあ、でも。そこまで辿り着いて還ってきた奴がいないんじゃあ、確かめようがないがなあ」

「そう、ですか」

 厄介そうな洞窟だ。ドラゴン以上に魔物がうじゃうじゃしているというのが面倒だ。部下を連れてきた方が良かっただろうか。仕方ない。魔法か剣技で蹴散らすか。

 夜になり、客もぽつぽつ増えたが、それ以上の情報は得られなかった。

「無茶するなよ」

 翌朝、マスターにそう言って送り出された。冒険者だったら、素直に従っただろう。だが、グレンは引き返せない。奥まで行って魔剣を拝まなければならない。しかも連れ出すか破壊するかという任務が待っている。

「さあ、行こうか」

 グレンは相棒の剣に声をかけた。

 町を出ると、朝焼けが地平線にくっきり見えた。きれいな景色だ。洞窟に入ってしまえば、しばらく日の光は浴びられない。


 すうっと剣を一振りすると、その軌跡に光が現れ、魔物たちがどっさりと斃れる。入口付近は小型のこうもりのような魔物が多かったが、少し奥に進むと手強い敵が多くなってきた。その代わり、出現する個体数は激減した。この調子なら思ったほどの消耗はなさそうだ。

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