探り合い
今、上級ヴァンパイアと戦ったらどうなるのだろう。グレンは漠然と考えた。あのときとは比べものにならないほどの力を手に入れた。少しは歯が立つようになったのだろうか。いずれにしても魔剣の存在は危険だ。
「グレン、お前の実力を持ってすれば、魔剣に到達できるだろう。魔剣を城に持ち帰るか、それが困難な場合には破壊してしまってもかまわない。とにかく魔剣がヴァンパイアに渡らないようにするのだ」
玉座の傍らに控えるエストルは目を閉じたままセレストの言葉を聞いている。
「はっ」
グレンは恭しく頭を下げた。誰も生還できない洞窟。何が潜んでいるのか。王騎士ならばその障壁を乗り越えられるだろうか。とにかくこの目で確かめてみなければ。
「大丈夫?」
「ああ」
部屋に入ると、貸していた肩からソードを降ろし、ベッドに横たわらせた。手をかざすと、大きく包み込むように柔らかい光が溢れ出した。ソードは静かに目を閉じた。傷がみるみるうちに塞がっていき、全身に力がみなぎる。光はグレンの手のひらに吸い込まれるように消えていった。
「さすがだな」
淡い笑みを口元に浮かべてソードが言う。
「何人宮廷治癒士が束になってもあれで限界だったのに」
グレンはにっこり笑った。こういうとき、魔力を授けてもらって良かったと思う。
「魔剣……か」
次の仕事のことを漠然と考えながらグレンは呟いた。
「もう封印されてかなりの年月が経つが、その姿を見たという話は聞かないな。ドラゴンが巣くっていて近づけないという噂もあるが」
洞窟のような暗くて人が近づかないような空間なら他の魔物も棲みついているだろう。腕の立つ冒険者でなければ、そのドラゴンまで辿り着くことさえ困難に違いない。
「そういえば、パイヤンのことだが」
思い出したようにソードが切り出した。
「他に何か聞いていないか?」
「いや。僕が聞いたのはさっき話した噂だけだ。ただ、近くに魔物の集まっている場所とかがあるのなら、そこだけでも一掃できないかと思って」
ウィンターからの情報はもちろん伏せる。




