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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第16章 海に浮かぶ橋
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全力

「お前を倒さなければ力を証明できない。ウィンターにはその程度の力で充分だ」

「何……だと」

 悔しい気持ちしか湧かなかった。ソードの目の前で証明してみせたかった。人間が、どれほど強くなれるのかを。だが、グレンは首を横に振った。

「違うよ」

 そして、グレンは目を見開いて挑むように言った。

「今までずっと、僕にも本当の力を見せてくれたことがないでしょ」

 グレンは拳を握りしめて力を込める。

「上級ヴァンパイアの力はそんなものではない。それは僕が、いちばん知っている」

 すると、ソードが噴き出した。そして、それは狂気じみた笑いに変わった。

「そうだな。お前の言うとおりだ。さあ、お前の本気をぶつけてこい。どこまで力を解放できるか楽しみだ」

「いい加減にして!」

 グレンが走り出した。距離をつめると、剣ですっと弧を描いた。ソードは交わしたが、頬に一筋浅い傷が入った。構わず左手に魔力を集中させ、グレンにすさまじいスピードでぶつけてゆく。グレンが交わすと、足下で魔法が爆発した。

「君とは戦いたくない。でも、君がそこをどかないと言うのなら、君が最後の上級ヴァンパイアだというのなら、僕が、倒す!」

 宙に飛び上がり、魔力を込めて剣を振り上げる。だが、そのとき急に全身が赤い光に包まれ、空中に静止した。腕も動かない。

「く……体が」

 呪縛の魔法の一種だろうか。グレンは全身に魔力を行き渡らせ、解除を試みる。だが、体を縛りつけている魔力は想像以上に強力で、いつもの要領ではいかない。

「お前は強くなりすぎた。まずはその魔力を削らせてもらう。

 ソードが手をかざすと、光がゆらゆらと歪みだし、強い輝きを放った。

 体の内部から激痛が込み上げ、グレンは体をよじろうとしたが、それさえ叶わない。それでも、苦痛に対する体の反応が少しだけ呪縛の魔法を上回ったようで、わずかに体がぴくりと動いた。その瞬間、意識が遠のきそうになってあわてて引き留める。

「まだ……だめ」

 痛みが体を侵食していく。何とかしてこの痛みを断ち切らなくては。早くしないと、本当に意識を持って行かれる。もう一度先ほどよりも集中して、全身に大きな魔力を拡散してみる。中途半端な魔力では駄目だ。この痛みは上級ヴァンパイアのソードがこれまでセーブしていた力を解放して放った魔法によるものだ。それに対抗できるだけの魔力を放出しないとこの状態から抜け出すことはできない。

「あと、少し……」

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