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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第16章 海に浮かぶ橋
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希望と現実

「目覚める……前?」

 セレストは記憶をたどった。

「森に、狩りに行って、少女に出会って……」

 少女は森の中で迷ったと言った。だから、森の出口まで送った。そして――

「少女を送られた後、どうされました?」

 セレストは愕然となった。急に記憶が途切れている。

「やはり、覚えておられないようですね」

 エストルは表情を緩めた。思っていたとおりだ。セレストは操られていた間、意識がなかったのだ。

「私が今からお話しします。驚くようなことや心の痛むようなお話もあると思います。ですが、落ち着いて聞いていただきたいのです」

 エストルはじっとセレストの目を見つめた。

「我々は最善を尽くし、全ては、解決の方向に向かっています」

 セレストも不安にさいなまれながらエストルの目を見ていたが、やがて決心したように毅然と答えた。

「分かった。話してくれ」

 穏やかな表情でうなずいて、エストルはこれまでの経緯を話し始めた。


 ウィンターは力が完全に尽きて動けなくなっていた。

 エルのことが好きだった。ソードと同じように好きだった。エルを失って悲しかった。だが、ウィンターはそれを言葉にできた。言葉にして出会ったばかりの人にも話せた。ソードにはそれができなかった。それがうまくできるだけの年齢に至っていなかった。それがうまくできる正確の人間ではなかった。

 そして、そのソードを救うことさえ、できなかった。

「私が……私の手で止めたい。止めたいのに」

「止めるだけの力もないくせに。償え、その死をもって!」

 完全にうちひしがれたウィンターにソードが渾身の魔力を放つ。ウィンターは避けることもできず、その場で呆然としていた。頭の中は真っ白になっていた。

 しかし、目の前でまばゆい光が広がり、大きな破裂音がして、ウィンターは我に返る。

「大丈夫、ウィンター?」

 クリアブルーの美しい結界がウィンターの目の前で消滅する。まだかすかに煙がふわふわと舞っていた。

「グレン」

 堂々とした姿勢でグレンは立っていた。

「手加減、してたでしょ」

 ヴィリジアンの瞳が静かに輝く。ソードはにやりと冷酷な笑みを返した。

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