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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第15章 神殿
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全てを託して

「〈告知者〉を倒したのか?」

 ウィンターに聞かれてグレンはうなずいた。

「やっと大広間の敵も片づいたけど……」

 ソフィアが心配そうにセレストの顔をのぞき込む。

「大丈夫だよ。しばらくしたら、お目覚めになる」

 グレンが余裕のある笑みを浮かべて言う。ソフィアはほっと肩の力を抜いた。ソフィアが安心したのを見て、グレンはすぐにきりっとした表情になる。

「どうしようか。この先にソードがいると思う」

 すると、真っ先にウィンターが口を開いた。

「同行しよう」

 強い意志の感じられる瞳がグレンを刺す。グレンは毅然とした表情のままうなずいて、エストルの方を向く。

「エストル様は陛下についていてください」

「分かった。大広間の神官たちはどうする?」

 グレンもいつ目を覚まさせようかと考えてはいたのだが、先ほどの戦いで頭の隅の方に追いやられてしまっていた。もう大広間の魔獣たちを倒したので、起こしてしまってもいいかもしれない。

「分かりました。目覚めさせます」

「ならば、ソフィア、リン、ルイで神官たちへの状況説明と神官たちからの情報収集を頼む。私は階段の横の客室を借りて陛下がお目覚めになるのを待とうと思う。神官長にはその部屋に来るよう伝えてくれ。私が直接話を聞く。それから、外敵などが来た場合のことを考えて陛下の警護も手伝って欲しい。もう大丈夫だとは思うが」

 エストルの指示に抜かりはない。

「じゃあ」

 グレンは目を閉じてヴィリジアンの柄を握った。

「目を覚ましてください、神官の皆さん」

「行ってくるわ」

 ソフィアが扉を開け、長い廊下を走っていく。リンとルイが後に続く。

「では、グレン、ウィンター、頼んだぞ」

 エストルはセレストを抱えたままゆっくり部屋を出た。

 グレンを失う恐怖が消え去ったわけではない。だが、圧倒的な力を手にし、全てを託したグレンに無茶はするなとか無事で帰ってこいとは言いづらかった。信頼して全てを託したのだ。ただ信頼して見送りたいとエストルは思った。

「任せて。陛下を頼んだよ」

 グレンは曇りのない笑顔でエストルに言った。

「行くぞ、グレン」

 背後で二人の走っていく音が聞こえる。

 エストルは穏やかな表情で眠っているセレストの顔を見た。

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