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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第2章 サルニア
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ヴァンパイアの正体

「どこから?」

 そんなこと考えたこともなかった。ヴァンパイアって突然降って湧いて出てきたような気がしていた。だが、冷静になって考えてみると、そんなはずはない。必ず何か理由があり、どこからかは分からないが、ある場所から来たに違いないのだ。

「テルウィングから、と言ったらお前は信じるか?」

「テルウィング?」

 驚きのあまり目が丸くなる。

「で、でも、テルウィングからムーンホルンに来るにはゲートを通るしかないはず」

 だが、ゲートは120年前から封鎖されている。幾度も繰り返された戦争で傷つき果てた両大陸が互いに存続するために決めたことだ。

「もし、そのゲートの封印が解かれていたとしたら?」

「そんな……」

「ヴァンパイアだけじゃない。魔獣もテルウィングから送られてきている。それに、私だって」

「ウィンターが?」

 頭が完全に混乱してきた。ゲートはムーンホルンとテルウィング、双方から厳重に封印されているはずなのに。その封印は王族にしか解けないはずなのに。

「まさか」

 エストルの言っていたことがふと脳裏をかすめる。まさか国王が。

「魔獣はもともとテルウィングの生物兵器だ。テルウィング王の命で兵力を増強する目的で開発された。そして、その頂点に立つのがヴァンパイアだ」

 グレンはただぽかんと口を開けたまま、ウィンターを見つめていた。

「驚いたか?」

「……」

 驚きで声も出ない。

「120年前の戦争の後、大陸内は混沌と化した。各地で反乱が起き、どうしようもなくなっていた。それを平定するために、当時のテルウィング王は、戦時中に始めた生物兵器の開発を促進し、各地に派遣した。だが、内乱は治まらなかった」

 もうゲートが封鎖されてからテルウィングの情報など途絶えている。グレンは初めて耳にするテルウィングの近い歴史に耳を傾けた。

「そこで、開発されたのがヴァンパイア。人を殺すだけではなく、無力化し、ヴァンパイア化し、そのヴァンパイアとなった人がまた吸血することによって他の人をヴァンパイア化する、実に効率の良い兵器」

 グレンは震え上がった。そのような兵器が、今ムーンホルンに送り込まれているのだ。

「テルウィングの内乱は鎮静化した。だが、そこには人間がほとんど残らなかった。大陸に棲むのは彷徨えるヴァンパイア。わずかに残された人間は大陸の片隅で肩を寄せ合ってヴァンパイアから隠れるようにして生きている。あとは魔力や意志、精神の強かった者だけが意識をもつヴァンパイアとして人間と同じように生きている」

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