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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第14章 パイヤン
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賭け

「その体でいつまでもつかな?」

 せめて体力を必要以上に削っていく傷だけでも何とかしたかった。グレンは長くはもたないだろうと思いながらも、少しでも時間を稼ぎ、可能なだけでも傷を癒そうと渾身の魔力で結界を張った。

「無駄だ」

 結界はすぐに〈執行者〉の魔力に押され、爆音とともに消滅したが、その時間だけでも充分だった。

 グレンの体から光のナイフは消え、傷口は止血されていた。痛みは残っているし、まだいつ傷口が開くとも限らないが、取りあえずこれで体力の消耗だけは少し抑えられる。

「この短時間でそこまで回復できたか。だが、お前の運命は変わらん!」

 今まで以上の激しさで攻撃が飛んでくる。グレンは先ほどと同じように交わしたり剣ではねのけたりしながら、攻撃をやり過ごした。

 このままではこちらから攻撃できない。強大な魔力だが、魔力に対抗するにはやはり魔力をぶつけて競り勝つしかない。今の自分の魔力で上級ヴァンパイアの中でも最強と言われる〈執行者〉の魔力に競り勝つことができるのか。

 やるしかない。

 グレンは剣を収め、両手を前方に伸ばした。ありったけの魔力を両手に込めてぶつけていくと、〈執行者〉もとっさに気づき、同じように強大な魔力をぶつけてきた。

「愚かな」

 二人の魔力はちょうど中間地点付近で接触した。そのまま押し合い、前後にわずかに動いたが、それ以上の距離は動けずに、再び中心で止まった。魔力は高速で回転し、光を放ちながら激しい火花を散らしていた。どちらも譲る様子はなかった。

「人間が私に勝てるはずがない」

 精一杯の魔力を放出しても押し戻せないグレンの魔力に〈執行者〉がいらだちを感じ始めていた。すると、その言葉を聞いてグレンは〈執行者〉をにらみつけた。

「僕は人間じゃない。あなたと同じヴァンパイアだ。人間に戻らないことを選んだ。あなたを倒すために」

 だから、負けられない。

 あとちょっと。あとちょっと魔力があればねじ伏せることができるのに。

 そのときだった。一筋の閃光が飛んできてグレンの魔力をすさまじい勢いで後ろから押した。

「ウィンター?」

 振り返る余裕はなかったが、グレンには分かった。そのはっきりとした迷いのない魔力は間違いなくウィンターのものだった。

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