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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第14章 パイヤン
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執行者

「それは幻術だ。この空間もあなたの見たグレンの姿も全部ヴァンパイアの幻術だ」

 そう言われて初めてぶれていた意識がたぐり寄せられる。目の前にはウィンターが再び襲いかかってきた魔獣を剣で斬りつけて閃光とともに飛ばしていた。

「グレンもこの空間のどこかにいる。早くこいつを片づけて探すんだ」

 エストルはうなずいて剣を抜いた。その一歩前で剣を構えるウィンターは苦笑しながらつぶやいていた。

「こいつはさっき倒した奴よりだいぶ強いな」

 エストルは気を引き締めて魔獣の攻撃に備えた。


 光が消えて代わりにグレンの前に現れたのは、黒いマントを羽織った金色の瞳の男だった。宙に浮いているのかいないのか。だが、マントと長い髪は風になびいていた。

 その姿が現れるのと同時に隠れていた圧倒的な魔力を感じた。グレンはその魔力で相手が何者なのかすぐに理解した。

「あなた……〈執行者〉?」

 すると、男は目を細めた。

「そう。そのとおり」

「じゃあ、この空間は?」

「ここは私が自由に魔力を展開できる空間。無論、お前たちの世界でも自由に魔力を使うことはできるが、ここでは向こう以上に幻術が使いたい放題だ」

 言われて思い出したように忘れかけていた傷が痛み出す。

「ひょっとして見たことがあるかな。〈002〉もこのような空間を使うことができた」

 ある。だが、質問につき合っている暇はなかった。今は一刻も早く痛み出した傷を少しでも癒したかった。

「させるか」

〈005 執行者〉が冷笑すると、体に刺さっていた光のナイフがより深く食い込んできた。グレンは痛みのあまり絶叫した。

「苦しいか? 素直に殺されなかった己を呪え」

 そう言いながら〈執行者〉は巨大な光の球をぶつけてきた。グレンは激しく息を切らしながらも剣を手にし、光を退けようと力を込めて振り払おうとした。だが、〈執行者〉の魔力は圧倒的だった。振り払おうにも手が動かない。拮抗した状態で時間だけが経過する。腕がしびれてくる。傷口から血がにじみ出る。

 やられる。

 グレンはあきらめて高く飛び上がった。光の球はグレンの下を通過し、遠くの方からどこにあたったのか大きな爆発音がした。あまりの魔力の大きさに冷や汗が出た。

「交わしたか。賢明だな」

 不敵な笑みを浮かべると、〈執行者〉はすぐに攻撃を飛ばしてきた。先ほどよりは小規模の攻撃だった。これなら剣でも何とか払えそうだと思い、グレンは攻撃を払いのけた。重かったが、何とか払いのけられる。だが、攻撃は立て続けにやってきた。払いのけたり交わしたりで何とかやり過ごしたが、このままでは確実にやられる。

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