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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第2章 サルニア
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思わぬ再会

 サルニア。ムーンホルンには森が多いが、サルニアもまた、その北側に森を有する町である。広い森は暗くて見通しが悪く、人があまり深部までは近づかないが、ヴァンパイアの出現と時同じくして魔獣が現れるようになった。上の方のクラスのヴァンパイアが召喚しているようなのだが、はっきりとしたことは分からない。ただ、ヴァンパイアが出現するようになってから、様々な種類の魔獣が現れるようになったことは確かだ。

 魔獣は普通の冒険者でも簡単に倒せるようなものが大半で、近年は森にばかりではなく、街道などにも現れるようになった。だが、まれに明らかに格の違う魔獣がよく確認されるようになってきた。幸い強い魔獣ほど人の通らないような場所に生息してはいるのだが、森に用があって入った人が襲われたなどという話は絶えない。そのような一般の冒険者の手には負えないような大物の魔獣の討伐はやはり王騎士が受け持つ。

 日も暮れたので、とりあえず酒場で情報収集することにする。今回は一人で来た。グレンはあまり他の人を危険に晒したくないという気持ちが強いので、極力一人で行動するようにしている。どうしても必要なときだけ最低限の部下を率いて現場に向かう。

「いらっしゃいませ」

 扉を開けると、店主の声と同時に目に知った顔が飛び込んできて、思わずそちらの方に気が行く。

「やあ、待っていた」

「ウィンター?」

 まっすぐウィンターの座っている隅のテーブルに向かい、グレンは尋ねる。

「どうしてここに?」

「だから。待っていたって言っただろう」

「どういうことですか?」

 グレンは分からなくなって少しいらだった声で言いながら、勝手に向かいにあった椅子に腰かける。客が多く、後ろからざわざわと話し声が聞こえる。かなり賑わっていてうるさい。

「そうだな。まあ、何か飲めよ。話はもっと客が騒ぎ出してからの方がいい」

 すでに賑やかだが、どの客もまだ始まったばかりだ。時間が経つにつれ、さらに活気づくことは間違いないだろう。ウィンターのことだ。きっと話すことといえば。

「あまり他の人には聞かれない方がいい話なのですね」

 声をひそめて、グレンが確認する。隅のテーブルでなければ、声がかき消されそうだ。ウィンターは黙ってうなずいた。仕方なくグレンは手を挙げて言われたとおり飲み物を注文しようと試みる。目は合ったのだが、店は大盛況で忙しくてなかなか来てもらえそうにもない。代わりに店の人は他の客の注文を取りながら、ちょっと待ってください、あとで行きます、とばかりにうなずく。

「グレン、ヴァンパイアはどこから来たのかとか考えてことはあるか?」

 やっと注文していた飲み物が来て、ゆっくり半分くらい空けた頃には、もう店の賑わいもピークに入りかけていた。

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