笑顔に励まされて
ロソー城の客室を一室割り当てられ、その場所がクレサックの執務室となった。
グレンたちがパイヤンに向かった日の午後だった。
「シャロンです」
ドアの向こうから声がした。
「入っていいぞ」
すると、シャロンがドアを開けて、
「失礼します」
と言いながら、入ってきた。
「お仕事かしら?」
シャロンが聞くと、クレサックはうなずいた。
「ヴァンパイアの目撃情報が何件かあって、昨日エストル様に説明を受けながら目を通した。まずはここから行ってみてくれないか」
「アーロンね。あまり遠くないからすぐに終わりそう」
「ああ。近いところからどんどん浄化していこう」
「では、行ってきます」
「頼む」
いつもの笑顔を残してシャロンが部屋を出ていった。
クレサックは穏やかな表情で見送った。
ヴィリジアンの瞳を持つシャロンがこのように明るい姪で良かったと思う。ヴァンパイアに関わると、気が滅入ることが多い。しかし、シャロンはそのような状況でも必ず前を向いている。
一人でヴァンパイアの浄化に行かせ始めた頃は、必要なことは全て教えたつもりでも、やはり心配だった。だが、心配をしていると、逆に、
「行ってきます」
と行って出ていくシャロンの笑顔に励まされている自分がいたりする。
みんな、がんばっている。
椅子にもたれると、ドアをノックする音が聞こえた。
部隊長か、事務官か。
私もがんばらなくてはな。
つぶやきながら、クレサックはドアの向こうに立っている部下の名前を聞いた。
ばさっと光の球を喰らった鳥たちが地に落ちて消える。
「確かに魔物の数が増えてきてますね」
リンが言うと、エストルがうなずいた。
「この森を抜けたらもうパイヤンが見えるはずだ」
すると、頭上遥か高くまた黒っぽい鳥の群が通過した。




