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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第13章 魔術研究所
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新たな力

「これは好都合だな。何度も同じ町に浄化しに行く必要はないということだ」

 ヴァンパイアの数が増えないようにするという面から見ると、非常にはかどる。

「そして、私も何度も斬られなくても良いということだな」

 エストルが言うと、グレンは思い出したように肩を落とした。

「ごめん、エストル。我慢、していたんだけど……昨日、吸わせてもらったばっかりなのに……」

 こんなことはなかった。一度吸血すれば、何日も持った。

 エストルはグレンの前にかがみ込んで、肩に手を載せた。

「一度に大量の魔力を使ったり、ヴァンパイアの体なのにヴィリジアンの力の器になったりしたのが原因だろう。吸血というのは、魔力を補うことも目的なのだろう?」

 すると、ウィンターもうなずいた。

「特に、ヴァンパイアの体にヴィリジアンの力を一時的にとはいえ、ため込んだというのは負担が大きかったと思う。いくらヴィリジアンの魔力が大きいとはいっても、グレンほどの術士があんなに苦痛を感じることはないはずだ」

「そう、なんだ」

 吸血して魔力が少し回復したグレンは立ち上がった。まだ体がふらついている。エストルが何も言わずに壁に立てかけてあったグレンの剣を台の上に持ってくる。

「ありがとう、エストル」

 剣を受け取ると、できたてのヴィリジアンの結晶を手に取って剣の柄の上に置いた。

「これが僕の剣だよ。気に入ってくれるかな?」

 そう言いながら、グレンは手をかざす。青白い光を当てると、ヴィリジアンの結晶から強く大きな緑色の光が八方に飛んだ。そのまばゆさに一瞬目がくらんだが、光が消えると、ヴィリジアンの結晶はグレンの剣にしっかり埋め込まれていた。

「居心地は悪くなさそうだね」

 剣の一部となったヴィリジアンの結晶を観察して、グレンは微笑む。

「これからもよろしくね、ヴィリジアン」

 ヴィリジアンがグレンの言葉に反応するようにきらりと光った。エストルがグレンの肩に手を置く。

「グレン、少し仮眠室で休ませてもらえ。まだ足下がふらついているぞ」

「うん。分かった」

 エストルはグレンの返事を聞いて、グレンの剣を手に取った。ついで、ヴィリジアンの柄に手を伸ばすと、ウィンターがその手を制した。

「ヴィリジアンはシャロンのところに持っていこう。私から話をしておく」

「では、お願いしよう」

 エストルはヴィリジアンから手を放し、ウィンターに譲った。

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