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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第13章 魔術研究所
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揺るぎない信念

「それにしても、ヴァンパイアだったんだな。強いわけだ」

 三人は苦笑いした。皮肉なことだ。ヴァンパイアに吸血されることによってヴァンパイアを倒す力を得るなんて。

「ウィンター、気がついているんじゃないかと思って、ずっとどきどきしていて」

「考えもしなかった」

 そうだったんだ。怯えすぎていただけか。

「ごめんね。自分でもなかなかヴァンパイアになった事実を受け入れることができなくて。一生誰かの血を吸って生きていかないといけないのかとか考えていたら」

 かけてやれる言葉がなかった。今そこに存在する現実が重すぎる。

「だから、ソードには感謝しているんだ。ソードが血を吸わせてくれなかったら、きっと生きていくために誰かを犠牲にしなければならないって考えて……僕、駄目になっていたと思う」

 考えるだけで苦しそうな表情になる。

「ソードにとって僕は駒の一つでしかなかったかもしれない。でも、僕にとって、ソードは、どこかに行ってしまいそうだった心をつなぎ止める最後の糸だった。ヴィリジアンの存在を知るまでは」

 すると、ウィンターが優しい目をして言った。

「ソードも、お前と向き合ったことで、何か感じたことがあると思う。お前の優しさに触れて一瞬だったかもしれないけど、ほっとできる瞬間があったはずだ。あいつだってあいつなりの信念があってテルウィング王に従っているのだろうから」

「ねえ、ウィンター」

 真っ直ぐグレンがウィンターを見つめる。

「やっぱり、ソードを説得することはできないのかな」

 一旦は引き下がった。だが、ソードにはグレンと同じようにまだしっかりとした自分の意識がある。人間の心がある。

「そうだな」

 ウィンターは重そうに口を開いた。

「ソードがどれだけ強いかはお前がいちばんよく知っているだろう」

「それは……そうだと思う」

 すると、ウィンターは言った。

「強くなるには揺るぎない信念が必要だ。強くなるにはいくつもの試練を乗り越えなければならない。そのときに揺るぎない信念がなければ途中で心が折れる。そうだろう?」

 そのとおりだ。グレンにもそれはよく分かる。強くなるために多くの試練を克服してきた。厳しい練習にも耐えた。何度も負傷して痛い思いをした。強い魔獣やヴァンパイアと命がけで戦った。ヴァンパイアに吸血された。苦しい思いもした。幻覚にもうなされた。上級ヴァンパイアの血を吸って先ほども苦痛と闘った。だが、それでも大切な人たちを守りたい。

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