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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第12章 王のいない城
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和やかな時間

「一度手合わせしてみたいと思った。テルウィングの剣技を見てみたい」

「ずるいよ、エストル。僕だってまだウィンターに相手してもらったことないのに」

 すると、ウィンターが笑い出した。

「全く。一国の宰相とは思えない発現だな」

「エストル強いんだよ。宰相にならなかったら、王騎士になっていたと思う」

「冗談はよせ。お前がいる限りは王騎士になどなれん」

 ウィンターは楽しそうに笑っている。

「ところで、ウィンターって剣技だけじゃなくて魔術もすごく強いよね。どこで教わったの?」

 湯が沸くのを待ちながら、グレンが尋ねる。

「私は魔術師の一族に生まれた。だから、魔術は祖父や父から教わった。だが、どうしたことか、学校で習った剣術が面白くて、自警団の事務所に行っては教えてもらっていた。私はそっちの方が性に合っていたらしい」

 ウィンターは苦笑した。

「ヴァンパイアから逃げた後は、そのときヴァンパイアを追って村に来た剣士にお願いして剣術を教わった。ある程度力がついたら、あとはその剣士について回って実戦で鍛えた。そのあとは自己流だな」

 エストルがテルウィングの剣技についてあれこれ聞いているうちに湯が沸いた。グレンは茶を淹れた。

「慣れた手つきだな。頼めば運んできてくれる者がいるのではないのか?」

 ウィンターが不思議そうに尋ねる。

「そうだね。でも、いちいち頼むの面倒くさいし」

 グレンはカップを置いた。

「そうそう。エストルの淹れるお茶すごくおいしいんだよ」

「あなたも自分で茶を淹れるのか?」

 テルウィングの常識で考えると、それはないような気がして驚いた。地方の貴族でさえ何でも使用人にしてもらっていた。

「士官学校にいた頃は全部自分でしなければならなかったから、それに慣れてしまっていて。自分でできることはついつい自分でしてしまう」

 最初の頃は耳にたこができるほど使用人たちに「何でも遠慮なくお申しつけください」と言われた。

「お茶、エストルに頼めば良かった」

「宰相に茶を淹れさせる気か?」

「だって、いつも淹れてくれてるじゃない」

「それはお前が私の部屋に来たときの話だろう」

「そうでした」

 とほほとグレンは頭をかきながら座った。

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