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ヴィリジアン  作者: 千月志保
第12章 王のいない城
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ヴィリジアンをめぐって

「他の王騎士にもグレンの実力を見てもらった。異論はなかった。実力的にも人格的にもグレンほど王騎士にふさわしい者はいなかった。私はすぐにグレンに引き継ぎをし、クレッチとデュランを直属の部下にするよう勧め、滞りなく王騎士の職を辞した」

 クレサックは一息つくと、また切り出した。

「その後、隠れやすそうな森を見つけて外部からの侵入者を欺けるような結界を張り、隠れ家を建ててシャロンの指導をした。充分な実力がついたところで、エリーの洞窟に向かった。エリーのドラゴンは強かったが、ウィンターと三人で協力して何とか倒せた」

 エリーにドラゴンがいなかったのは、そのためだったのかと今更ながらグレンは思った。

「そして、シャロンにヴィリジアンの封印を解いてもらった。そのままシャロンにはヴァンパイア化した人たちの浄化に当たってもらった。クレッチやデュラン、ウィンター、そしてエストル様からヴァンパイアの出現情報をいただいてね」

 そこまで話し終わると、今度はエストルが続きを引き継いだ。

「その後、テルウィング側でもヴィリジアンの存在に気づき、調べ始めたらしい。陛下からヴィリジアンの捜索の命が下る。かなり正確な情報を把握していたらしく、グレンを指名してエリーに派遣するように命じられた。私たちにはヴァンパイアの力を増幅する魔剣だと説明し、見つけ次第、持ち帰るか破壊するように命じられた」

 テルウィングの計画の妨げになる可能性のあるヴィリジアンを何とかして排除しようとしたわけだ。

「でも、ヴィリジアンはなかった。すでにシャロンの手にあったから」

 グレンはつぶやいた。すると、エストルはにやりと笑った。

「そう。テルウィングは焦ったのだろう。引き続きヴィリジアンの捜索を陛下に命じさせる。一方で、テルウィングはヴィリジアンがエリーにないと報告したグレンに疑いの目を向け始める。まさか先にドラゴンを討伐してヴィリジアンの封印を解く者がいるとは思わなかったから」

「思わぬところから綻びが生じる形になったが、まあそろそろ潮時だったな」

 ウィンターがいたずらっぽく笑う。すると、エストルも苦笑した。

「このところ、王騎士の派遣先とシャロンの浄化先がかぶってきていて、王騎士を派遣したものの、町がヴァンパイア化していなかったという事態が何件か出ている。これ以上この状況を続けるのは困難だ。振り返ってみると、ちょうどいい頃合いだったのだろう。とにかく、そうなると、グレンが虚偽の報告をした可能性を考えるようになる。そう考えると、グレンが以前、パイヤンから魔物が発生している可能性を指摘して自ら調査に行きたいと志願したことなどが疑わしく見えてきたのだろう。グレンが何か突き止めているかもしれないと思って、テルウィング側は罠を仕掛けてみた」

 それがモーレでの出来事だ。

「僕はモーレに魔獣討伐に行くように命じられた。でも、行ってみると、そこには〈追跡者〉が待っていて、僕の意識を操ってヴィリジアンのことやウィンターたちのことを聞き出そうとした」

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