とある日常の風景
これはとても昔のお話。
今よりも、世界がばらばらだったころの話。
今では風の国と呼ばれている辺りで起きた。
その日は記録ではいつになく暑い日が続いていたという。雨も降らず、雲もない。そんな日が長く続いた。
こうも異常な気象が続いていたため、周囲の村から生贄が選ばれ、捧げられることになった。
「すまんねぇ。お前をこんな目にあわして」
生贄に捧げられることになったのは二人の双子。
一人はおとなしい少年と元気な少年の兄弟でした。
「雨を降らせし神よ。これよりこの二人を生贄に捧げます」
神は生贄にささげられた少年たちを不憫に思い、兄弟に三つの試練を与えました。その試練を乗り越えることができれば、もう一度よみがえることができるという条件でした。
兄弟は力を合わせ、試練をクリアしていきました。しかし、神は最後に一番の試練を出しました。それは、生き返らせることができるのは一人だけというのでした。
これは、兄弟には厳しい試練でした。
産まれたときから二人は一緒だったからです。
「それで? それで? そのあとどうなったの?」
「わからないよ~ この後の部分は残ってないんだもん~」
「そうなの? どっかで買ってきたんじゃないの?」
「そうだよ~ なんか掘り出し物として売ってたんだよ~ だから僕がどうしようもないの~」
買ってきた本をリルとスズは読んでいた。
風の国の昔話のような話だった。
「この後ってどうなると思う? 私は神様が二人ともを助けたんだと思うんだけど」
「僕はそうは思わないな~ 神様がそんなに甘いとは思わないな~」
「これって本当に風の国の昔の話なのかな?」
「わかんないよ~ 誰が書いたのかもわからないしね~」
リルが買ってきた本は誰が書いたのかもわからない本だった。
いつ書かれたのかも、書いた人もわからない謎だらけの本。
「まぁ暇潰し程度にはなったかな~」
「そうだね。それじゃヴォル君のところに行こっか」