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辺境駐在  作者: BLUESTAR
5/6

Report.5 レリンクス

「おはようございます」

 と、私は中に入って彼女にあいさつした。

「おはよう。えーと・・・ピンチヒッターの早川さんかしら」

「はいそうです。早川えりなといいます。今日一日よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 今日は1月17日の日曜日。今年は世紀末といわれる1999年。真希にいわせる

と、アニメファンの間では空から1・2キロの巨大戦艦が落ちてきたことで有名な年

らしい。

 私はクラスメートの望月さんが法事に行くのでそのピンチヒッターとして、かわり

にバイトにやってきたのだった。ハイスター・ショップというところだ。

 ここはアクセサリー・ショップで、友角市中条町の島田ビルの2階にある。

 取り扱っているものは主に銀製品だという。

 ここのオーナーがアメリカ人ということもあって、客には外国人が多い。望月さん

があえて私にここのバイトを頼んだ理由はそれだった。

 つまり、この店では英語がしゃべれないと仕事にならないのだ。私はばりばりに

しゃべれるし、望月さんの友人でもあるというわけで一日くらいならということで、

バイトすることにしたのである。


「私は東部相子(とうぶあいこ)です。桜台学園大学の1年です。ここのバイトはひ

まな時はけっこうひまだから安心してくださいね」

「忙しい時は大変なんですか、そのいいかただと」

「ええ・・・まあ。たまにですけど」

 おいおい。

「英語は結構できるんですか」

「ええまあ。ただ、望月さんには負けますけどね」

「そんなんで今日は大丈夫なんですか」

「望月さんにはピンチヒッターはもっとうまい人にしてくださいって頼みましたから」

「・・・それで私に頼んだわけか・・・そりゃ自信はあるけどさ」

 そこへドアが開いて黒い格好の女性がやってきた。

「おはよう、東部さん。おはよう・・・誰だったかしら」

「ピンチヒッターの早川えりなです。はじめまして」

「こちらこそはじめまして。エリ・ミナミザキ・ハイスターです。エリってよんでね」

「ミス・ハイスターじゃなくてですか」

「ミセス・ハイスターっていわれてもいまだにピントこないのよね」

「了解しました。・・・もしかして、ここのオーナーの人ですか」

「はずれ。オーナーは私の旦那のアルフなの。アルフはここにはたまにしかこないか

らあれだけど・・・まあまあいい男よ」

「あ・・・そうなんですか」

 そのあと、しばらく話をしたところで、

「それじゃ私はこれで。夕方にもう一度くるつもりだから」

「わかりました」と東部さん。

「じゃあね」


 私は東部さんと一緒になって、中の掃除とかをして開店にそなえた。

 そして、開店時間の10時を過ぎたがやっぱり客はなかなかこなかった・・・


「・・・いまのエリさんてひとだけど・・・かわった人ですね」

「私も最初はそう思ったわ。でも結構フランクで気さくな人でしょ」

「ですね。ところで、外国人にしては日本語がうまかったような・・・」

「ああ。もともと日本人なのよ」

「あっそうなんだ」

「上中市出身で友角大卒よ。旦那と結婚する前は日本人だっていってたから」

 上中(かみなか)市は、本州の南にある上都島(かみとじま)の中の上中県の県都。

「じゃ、エリとかミナミザキって元は漢字なんですね」

「ぴんぽーん。こういう字だっていってたわ」

 メモ用紙にさらさらとかいてくれた。"南崎 江里"

「へえ。こんな字なんだ」

「そういえば、あなたのえりなってどんな漢字かくのかしら」

「うぅ。私のはひらがななんですけど」

「そうなんだあ。・・・ついでにいうと年齢は29」

「よく知ってるわね」

「11月にバースディパーティに招かれたのよ。来年はいよいよ大台だっていってた

から・・・多分29よ。おそらくね」


 たまにぽつぽつとしかこないお客さん。そりゃまあコンピニとかじゃないんだし、

こういう店にはあんまりこないかもしんないわねえ。おまけにここ2階だから通りす

がりで入ってくる人もまずいないだろうし・・・


「望月さん、法事っていってたけど・・・法事ってまる1日かかるもんなんですか」

「あらあら早川さんには説明しなかったみたいね」

「電話で法事だから頼むからっていわれただけですから」

「望月さんの法事はね、行き先が大分なのよ」

「大分・・・って九州の大分ですよね」

「もちろんよ。望月さんの話だと、大分空港がすごく田舎にあるから、移動に時間が

かかるっていってたわね」

「大分も東京みたいに土地がないんでしょうか」

「かもね。なんでも大分空港は別府湾の北にあって、大分市までバスで1時間かかる

っていってたわ」

「空港が遠いのは成田だけじゃないんですね」

「そうね。しかも大分空港が県の北部なのに、法事の場所は大分県の南部だっていっ

てたわ」

「・・・つまり、移動ですごく時間を食うってことですね」

 それならまあ・・・しかたないかな。


 午後1時すぎになって外国人な客が4人ほどやってきた。

 かなりなまりがあって早口だったけど、なんとか聞き取れた。

 彼らは銀製品をたくさん買い込むと箱に放り込んで去っていった・・・


「今の人たち、常連さんですか」

 態度からしてそんな雰囲気だったから・・・

「ええまあ。月に1度くらいですけど、きたときはどかどかっとまとめて買っていき

ますから」

「へえ。そうなんだあ」


 午後7時に閉店。まああのあとはわりとひまだったわね。

 ・・・にしてもいつもこんなんでもうかるんだろうか。疑問だわ。

 東部さんがちょうど鍵をしめたところで、エリさんがやってきた。

「あらあら。しめたところだったの」

「ちょうどいましめました」と東部さん。

「・・・閉店前にくるつもりだったのに。しょうがないわねペナルティとして、コー

ヒーでもおごるわ。約束違反だしね」

「あの・・・いいんですか」と私。

「ええ。それともこれからなにか予定でもあるかしら」

「ありませんけど」


 エリさんの愛車ワゴンQに乗って、喫茶店「ワイルドキャッツ」に向かった。

 私と東部さんはコーヒー。エリさんはアメリカンとカツカレー。

「どうだったかしら」とエリさん。

「まあまあでしたけど」と私。

「早川さんて望月さんより英語得意みたいですね。みてて安心しました」

「まあね。日ごろの地道な努力のおかげよ」

 もちろんうそ。本当はニコニコ社のテープのおかげなんだけどね。

「よかったら早川さん、これからもバイトしてくれないかしら」とエリさん。

「あいにくだけど、私、別にやってますんで。今日はたまたま開いてたからピン

チヒッターにきたんですよ」

「そうなんだ。で・・・どんな仕事かしら」

「えーと、貿易関係のバイトです」

「外国との貿易かしら」

「ええまあ。そんなところです」

 本当は惑星外とでもいうべきだけど。

 そんなこんなでそこから話題がとんでしばらく楽しいおしゃべりとなってしまった

のだった。家に帰ったら22時を回っていた。


 家に帰ったら、メリーがいきなり妙なことを言い出した。宇宙船の新型のセンサー

の動作テストをしていたら、なんと亜空間歪曲波を拾ったというのだ。

 地球みたいな田舎でそんなものをひろうことは普通はありえない。変だ。

 時間は今日の午前10時40分。場所は東山下町の山下第3ビルの地下だった。

 山下第3ビルの地下には、ハイスター探偵事務所がある。

 ハイスター探偵事務所の所長はアルフ・ハイスター。

 ・・・今日私がバイトしていたハイスター・ショップのオーナーも同じ名前。

 まさか・・・。

 それから調べた結果は予想通りだった。エリさんの旦那の事務所で亜空間歪曲波が

出ていたことになる。

 今の地球の科学力では出せないそれが出ていたということは・・・

 エリさんの旦那は宇宙人なんだろうか。

 そう思って、汎銀河連盟人地球連絡会(カリフォルニアのブラック・ヴァレーにあ

る)に問い合わせてみたけど、アルフ・ハイスターについてはデータがない。

 ・・・まあ地球に住んでるすべての宇宙人が連絡会に入会しているわけではない

からしかたないけど・・・。

 これはどうやらしらべてみたほうがいいかもね。


 ハイスター・カンバニーについて重大な話がある、といって、私はエリさんに電話

したら、エリさんはじゃ明日夕方事務所で会いましょうと言った。

 そして私は事務所に入った。へえ探偵事務所ってこんなかんじなんだ・・・

「それで話ってなんなのかしら。アルフはいないから副所長の私が聞くわ

 探偵と店と両方なのか・・・かわった人だなあ。

「昨日朝10時40分に亜空間歪曲波がここから出ました。説明していただけますか」

「・・・あちゃあ。なんでそれがわかるのよ~。今の地球の科学力じゃわかるはずが

ないのに・・・」

「説明してもらえますか」

「・・・とってもいやなんだけど。だいいちあんた、ディメンションコントロールの

関係者かなにかなのかしら」

「ディメンションコントロール・・・次元管理局。そんなもんがあったとはこれは

いいことをきいたわねえ」

「・・・あやややあ。・・・まずいわね。・・・どうしましょうか」

「全部説明してください」

「わかったわ。でもその前にあなたの正体を教えてちょうだい。少なくともあなたが

地球人じゃないことは確かね。となると実は宇宙人とか」

「・・・なんでわかったんです」

「あてずっぽうなのにあたるとはね・・・そっかあ。それならわかって当然ね。安心

してくれないかな。あなたが宇宙人だっていったりしないから。こっちだってここの

地球人じゃないしね」

「ここの・・・ってどういう意味なのよ」

「ついてきてくれる。いいものをみせたげるから」

 ついていくと、奥にはおっきな扉があった。男が2人立っている。

「中に入ります。フォース・フィールド解除」

「わかりました」

 そして中に入ると・・・

「スター・パトローラーの転送装置に似てるわね」

 スター・バトローラーはアメリカのテレビドラマ。転送装置は人や物体を自由に

送ることができる装置だ。

「そうねえ。これは、ディメンション・トランスポーター。次元間転送装置よ。パラ

レル・ワールドを自由に行き来できるの」

「なかなかすごそうね。・・・でも今の地球にはこんなのがまだあるはずが・・・」

「これはね。わがレリンクス王国の遺跡から発掘したものなの。原理や機構について

は、よくわかってないわ。亜空間歪曲波はこれから出ていたってわけ」

「なるほどね。・・・それでこれはちゃんと制御されてるんでしょうね」

「ええもちろん。20年以上もつかってるのよ」

「20年も前からここにあったのね」

「ええ。・・・こっちの説明は以上よ。あなたは宇宙人だっていってたわね。どこか

らきたのかしら。そしてどのくらい仲間がいるのかしら」

 私はおおざっぱに、自分のことと、連絡会のことを説明した。

「・・・この地球には宇宙人がたくさんいたってわけね。異世界人だけでなくて」

「まあね」


 私とエリさんと(途中で現れた)アルフさんの3人でそのあと延々話し合った。

 私はエリさんたちの正体をばらすつもりはなかったし、エリさんも私の正体をばら

すつもりはないとのことだった。

 私にとってはパラレル・ワールドにかんする知識が欲しかったし、エリさんたちも

銀河社会にかんする知識が欲しかった。

 ・・・かくして結論としては、今後、情報交換を時々行うということになった。

 私としては、地球は汎銀河連盟未加盟である以上、連盟の規則には縛られないから

この件を汎銀河連盟次元中央管理局に報告する義務はなかったのだ。

 ただ、連絡会には一応報告することにしたけど。

 エリさんやアルフさんとしては、地球だけでもいまのところ手一杯なので本格的に

銀河進出できる状態ではないとのことだった。

「・・・まあ要するに取引ですね」とエリさん。

「そうね。まあ世の中取引であっさり決着つけるのもそう悪くないわね」

「そうよね」


 こうして取引は成立。

 後日。エリさんは私を信頼していることを示すためにわざわざパラレル・ワールド

に招待までしてくれたの。

 ラステニア・ワールドのレリンクス王国。ハイスターさんはそこの出身だという。

 そして招待された私はそこで、エリさんの意外な正体を知ることになった。

「あの・・・プリンセスって」

「ああ。それは私のことよ。びっくりしたかしら」

「・・・ええまあ」

「私のフルネームはね。エルセア・ミナミザキ・ハイスター・ガル・レリンクスなの」

 名前に国名が入ってる・・・なるほどね。

「それじゃ上中出身というのはじゃうそなんですか」

「ノー。レリンクス生まれ、上中育ち、友角で結婚。それが私なの」

「・・・かわった人生ですね」

「あなたにはいわれたくないわね」

 私のプロフィールもすでにかなり話していたのでこういわれてしまった。

 そしてつれていかれた先は、レリンハイム・ファンタジーランドだった。

 巨大遊園地というやつだった。世界はかわれど遊園地の構造自体はたいしてかわら

ないようだ。

 そしてレリンクスの海は東京と違って、とっても青くてきれいだった・・・

 そのうち、私もねお返しにエリさんをフロンティア99に連れて行ってあげないと

いけないわね。


BLUESTAR「久しぶりですね」

エリ「そうですね。私のことなんてもう忘れたかと思いましたわ」

BLUESTAR「ははは。忘れてなかったでしょ」

エリ「というわけで今回のゲスト、エリ・ハイスターです。よろしく」


エリ「それにしても普通、ヒロインとゲストってここまで似た名前にはしないわよ」

BLUESTAR「そうはいっても、今さら名前を変えるっていったら怒るでしょ」

エリ・エリナ「もちろん!!」

BLUESTAR「まあそういうわけで、まぎらわしいですけどどうしようもないです」


BLUESTAR「というわけで次回はいよいよ最終回の アフター・オール です」

エリ「ちゃんと終わるのかしら」

BLUESTAR「あうあう~それをいったらみもふたも・・・」

エリナ「次回作もきまってるからなんとか終わらせると思うわよ」

エリ「どうかしら」

エリナ「きっと大丈夫だと思うけどね」

BLUESTAR「・・・それじゃ次回もエリナといっしょにれりーずっ(^^;)」


BLUESTAR(1999/11/17)



p.s.

 というわけで「レリンクス・ブルー2」以来久々の登場だったエリ・

ハイスターさんでした(爆)


 ・レリンクス・ブルー2

  http://freett.com/bluestar/relinks2.txt


by BLUESTAR 2012/4/5


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