バイト中、お邪魔します
「いらっしゃいませ。こんにち…あ」
「やっほー」
私が手を上げると、バイトの制服姿の彼が固まった。
「来ちゃった」
「何で来るかな…」
「来ちゃいけなかった?」
「そうじゃないけど、その、ゆっくり話せないだろう?」
彼は周りを見、今、客が2、3人しかいないのを確認したようだった。
まるで眼光が獲物を狙うライオンのようである。
「他のスタッフのこともあるし、悪いな。あんまり話せない」
「いいよ。私の勝手で来たんだもの。ちゃんと買い物して帰るからね」
ICカードを出すと、私はコンビニの店内を歩き出す。
外とは打って変わって、涼しい店内。
まるで冷蔵庫を開けた時の冷たさみたいで、二の腕を擦る。
そういえば私服で会うのも珍しいかもしれない。
彼はどう思っているだろうと、ちらりと振り返ると、ずっと視線を追いかけてくれているようだった。
そんなに心配かなと考えていると、彼が客の対応をし始める。
初めて見る、社会人手前の姿。
慣れてきたのか、すらすらと話だし、客に商品を差し出す。
「ありがとうございました」
客が出ていくと、彼は忙しそうに動き出す。
「これから商品を補充するから」
早口で言うと、バックヤードから、パンやスイーツを出してくる。
私は邪魔しないように、商品を眺めていく。
しかし彼が気になり、つい見てしまう。
学校の彼とは違う、きりっとした姿。
彼の目には私はどう見えているのか気になり、近くに寄って行く。
「オススメのパンってある?」
「そうだな…。デニッシュかな。クリームたっぷりで、美味しいぞ」
「じゃあそれにする」
パンを受け取ると、スイーツのほうへ行く。
和菓子や洋菓子が並び、まるで宝の山みたいな感じだった。うーんと考えた結果、好物のプリンを手に取り、最後にジュースのところへ行く。
買うジュースは決まっていて、すぐに取り出すと、、彼の声が聞こえる。
「ありがとうございました」
よく通る声。
独り占めしたいけれど、ここは我慢してレジへ向かう。
「お願いします」
「おう。分かった」
彼が差し出した商品を見たので、聞いてみる。
「太るかな?」
「大丈夫だ。太ったら、一緒にダイエットしてやる」
「ありがとう!!」
優しい彼に甘えたくなったが、ぐっとおさえる。
「袋はどうなさいますか?」
「あ、エコバッグがあるから」
肩にかけたバッグから取り出すと、商品を入れていく。
あとはICカードをかざすと、精算を済ます。
「また後でね。連絡するね」
たくさん、たくさん、話したいことがあったが、ここは名残惜しくても去ることにした。
「じゃあね」
「ああ。気をつけて帰れよ」
バイバイと手を振ると、私はコンビニを後にする。
しかし彼の視線が追いかけてきているのに、気づいていた。
嬉しいやら、恥ずかしいやら。
1人でキャーと心の中で叫んでいると、車に乗り込んだのだった。




