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【第二章開幕】乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった  作者: かみながあき
第一章◇幼少期編

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【番外if】クリスマスの記憶(前世)

※このおはなしは、単体でも読める前世のお話です。

 クリスマスなので、なにか特別なエピソードを書きたくなりました。


 

 ◇    ◇    ◇

 

 ◇    ◇    ◇

 

 

「ねぇねぇおとや(乙也)にぃちゃん。クリスマスって、サンタさんくるかなぁ?」

 

 いつも通りに妹を校門の前で待ってから、帰り道を歩いていた時。

 さっきまで鼻歌をうたっていた妹が、突然そんなことを言い出した。

 

「…………は?いや、サンタってお前…………っ、あー……まあ、来るんじゃないか?」

 

 中学生にもなってまだそんなもん信じてるのか?

 思わずそう言いかけて、俺はとっさにそれを誤魔化した。

 

 目の前のこの妹は、そういえば底抜けに純真で、極端にアホだったことを思い出したからだ。

 まあ……だからこそ、中学と高校で微妙に距離もある中で、わざわざ迎えになんて来てる訳なんだけども。

 

 なんにしても、この愚かで可愛い妹の夢を壊さずに済んだことに、そっと胸を撫で下ろす。

 大きく吐き出した真っ白な溜め息は、冷え切った鼻先を少しだけ温めて、あたりに溶けていった。

 

「ふふふ!来る、かなあ?今年は欲しいもの決まってるんだ!」

 

「そうなのか?……また手紙、書くのか?」

 

 こっちの動揺も知らず気ままに笑う妹に、さり気なく探りを入れる。

 うちは父親は居ないし、母さんはいつも俺たちのために忙しそうにしてるから。

 きっと今年もプレゼントを準備するのは俺なんだ。

 

「もちろん書くよー。ねぇ、今年はおとにぃもちゃんと手紙書きなよ?去年はおとにぃだけサンタさんからプレゼント貰えなかったんだから……!」

 

「あー、うん。まあ……そうだな……」

 

 適当に相槌を打って、やり過ごす。

 高二の冬に、"今からバイト増やしてプレゼント準備しなきゃ"って焦ってる俺の内心わかる?

 分かるわけないよなぁ。言うつもりもないけど。


 自分の分まで何か買うくらいのバイト代稼ぐより、さっさとコイツの欲しいもの調べて、最低限のシフトだけ入れたいに決まってる。


(……まあ。母さんにも、好きな花くらいは買うけど……)

 

 そんなことを考えながら、コートのポケットの中で、半端な温度になっているカイロを小刻みに振っていた。

 

「ねぇねぇ。おとやにぃちゃんにだけ、教えてあげるね?」

 

「んー?」

 

 気のない返事をしながら、ついに来たかと耳を澄ます。

 頼むからあんまり高い物は欲しがってくれるなよと願いながら。


「あのね。乙女ゲーム?なの。青の季節……だったかな、そんな名前のやつ!」


「はあ!?乙女ゲームぅ?……しかもお前、なんでそんな曖昧なんだよ。欲しい物なんじゃないのか?」


「ええー?…………だって……」

 

 まあな?

 ぶっちゃけ、そこまで値段は張らなそうで安心したけど……それ以外は最悪すぎるだろ……。

 

 俺が?買うのか!?

 ……乙女ゲームを……?

 

(……勘弁してくれよ…………)

 

 誰か嘘だと言ってくれ……そんな気持ちを込めて。

 またしても俺は、今度は特大な溜め息を吐いた。

 

 それをどう受け取ったのかは知らないが、拗ねた妹は、アヒルみたいに唇を尖らせた。

 

「友達がみんなやってるんだもん……!わたしもみんなと一緒に、きゃっきゃうふふしてお話に混ざりたい!」


 きゃっきゃうふふって……実際に口にする奴が居るのかよ……。

 いや、目の前にいるけども、だ。


 そういえばコイツの友達って、何故か知らんがみんな順調にオタクっぽい感じに成長していってるんだよな……。

 みんな良い子たちで、ちょっと足りないアホな妹にも優しいし、何一つ文句なんてないけど。

 

 

「あー……分かった分かった。バカにするみたいに言って悪かったよ……」


「うー。…………いいよ、許してあげる」

 

 雑に頭をポンポンしてやると、まだ拗ねた顔のまま、そんなことを言う。


「…………お前は"よいこ"だから、サンタもきっと……そのなんちゃらってやつ、プレゼントしてくれるよ」


「なんちゃらじゃなくて、"青の季節"だもん…………たぶん……」


 タイトルが曖昧じゃ困るんだが。

 ただでさえ心理的に無理ゲーなのに、店員さんに尋ねる羽目になったらどうしてくれるんだよ……。

 

 そんな不安を抱えながら。

 忙しない日々を過ごして、ようやく迎えたクリスマスイブ。

 

 俺の懸念とは反して、"例のブツ"は思ったよりもすんなりと見つかった。

 レジで恥ずかしぬんじゃないかと思ったけど、そんな事もなく。

 

『クリスマスプレゼントですか?』

 

 という言葉で、俺はどうにかメンタルを削り切られることなく生き延びた。

 

 

 夜の十時前には寝こけてしまう性質の妹は、今日もすっかり夢の中だ。

 

 母さんには普通に花束を手渡して、すぐに立ち去るつもりだったのに。


「乙也……。ありがとう……!」

 

 なんて涙目になるほど、大袈裟に喜んで抱きついてくるから……。


(……くっそ!高校生にもなった息子に、気安くハグなんてするんじゃねえよ……!)


 そう思いながら、結局突き放すことは出来ず。

 俺は、変な顔をしながら、母さんの気が済むまで耐えるしかなかった。

 

 ある種の羞恥プレイからようやく解放された俺は。

 数日前から隠してあったプレゼントを持って、一応足音に気を付けながら妹の部屋へと侵入する。

 ベッドの低いポールに吊り下げられた、靴の上からでも履けそうなデカい靴下の中に、そっと包みを忍ばせて。

 今年で最後であって欲しいような、そうでもないような、サンタの任務を終えた。

 

 ふと見ると、枕元にサンタ宛ての手紙があって。

 一瞬、やっぱりプレゼントを変えて欲しい、だったらどうする?と気が気じゃなかったが。

 そんな事もなくて。


『 サンタさんへ

  いつもありがとう!

  今年はちゃんと、おにいちゃんにも

  プレゼントをあげてください。

  お手紙書かない悪い子だけど、

  本当は優しいおにいちゃんなんです。 』


「……っ……」

 

 変な声を上げそうになって、ぐっと唇を噛み締める。

 そのまま静かに自室まで急いで、枕で消音しながら控えめに叫んだ。

 

「っ、あぁぁぁぁあぁぁっ…………もう!なんなんだよアイツは……!」

 

 これだから、俺が"兄ちゃん"も"サンタ"も辞められないんだ。

 もう俺のクリスマスプレゼントはこれ(手紙)でいいよ。

 

 すぐに勝手に入ってくる妹に、サンタ宛ての手紙がここにあることがバレないように、勉強机の引き出しの奥に押し込んで。

 なんか今日の夜だけで一週間分くらい疲れた気がして、そのままベッドに沈み込んだ。

 

 

 翌日。

 ニッコニコの妹に叩き起こされて、俺は今リビングのソファで強制的に乙女ゲームのプレイを見せられていた……。

 

「ねぇ。ちゃんと一緒に見ててね。むずかしいところがあったら、手伝ってね?」

 

「あー。はいはい……」

 

 乙女ゲーで難しいところってなんだよと思うが、まあもしかしたら謎のミニゲームとかが突然始まるかもしれないもんな。

 知らんけど。


 あくびのしすぎで涙を擦りながら、俺は仕方なくテレビの画面を見続けていた。

 

 

 俺には、知りようも無かった。

 これがきっかけで、妹が恐ろしいまでの乙女ゲームマニアに育ってしまうことも。

 数年後に発売されることとなる"一つの乙女ゲーム"が、時間どころか世界まで越えて――


 俺の運命を左右する重大なものになることも。

 

 

 ◇    ◇    ◇


 ◇    ◇    ◇

 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(クロードのことが気になるだろう中で、突発的な番外編の更新ですみません……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


明日から、" まったり乙兄企画 " 開始です☆


**12/26〜1/4まで毎日20時に更新します!**


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