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【第二章開幕】乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

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恋心の自覚【SIDE Asher】※R15版

本話には 一部 ※ R15 程度の性的描写 ※ が含まれております。

苦手な方は、そっとブラウザバックでお戻りください。


※なお、ムーンライトノベルズにて、R18描写を含む** 乙兄◆アシェルくんの限界突破部屋【R18差分】**も公開しております。

興味のある大人の方は、タイトル検索等で探していただければ幸いです。

 

 

 ◇    ◇    ◇

 

 ◇    ◇    ◇

 

 ふと手元の本から顔を上げると、書庫にある唯一の窓からは茜色が差していた。

 本棚が並んでいる場所から少し離れた位置にあるこの窓際の読書スペースには、なぜか僕とダリルさんのふたりしか居なかった。

 

「……あれ、兄様は……」

 

 思わず呟くと、それに気付いたダリルさんが僕の方へと視線を移した。

 

「カーティスなら、読んでいた本に気になる記述があるって言って、図書室にある本を調べに行ったよ」

 

 小さな机を挟んだ向かい側、夕陽に染まるダリルさんの姿がなんだか幻想的に映って……一瞬呼吸を忘れてしまったけれど少し遅れて言葉を返す僕。

 

「そうだったんですね。教えてくれてありがとうございます」

 

「一応アシェルくんにも声をかけてたみたいだけど……ふふっ、やっぱり聞こえてなかったんだねぇ」

 

 彼がよく見せてくれる、大好きな柔らかい表情でふんわりと笑う。

 その顔を見るたびに僕はドキドキと鼓動が早くなってしまうんだけど、いつもは白磁のような肌が赤く照り映えるさまに、どくりと普段と違う高鳴りを感じた。

 

 なんだ、この感覚……。

 

「そんなに熱中しちゃうなんて、いったいどんな本を読んでるんだろ?」

 

 そう言いながらダリルさんは席を立ち、元々そう遠くなかった距離を詰めて僕の真隣の椅子に腰掛けた。

 

 机に頬杖を付くようにして顔をこてりと傾けると、かつて無い至近距離から僕の瞳を覗き込む。

 

「えっ、あの、だっ、りるさん……?」

 

 低い位置で結ばれた薄桃色の長い髪が、慣性のままにサラサラと流れていく。

 

 そんな一瞬の出来事ですら永遠のようにも感じられるような、どこか現実味のない世界に居る気分だった。

 

 

「私のことがだあい好きなアシェルくんが、目の前にいる私よりも夢中になっちゃうような本って、どんななのかな?」

 

 見たこともない表情で微笑むダリルさんに、いつものように頬をすりすりと撫でられて……僕は一気に顔どころか全身に火の気が上がったような感覚がした……。

 

「まっ、て……ちょっと待ってダリルさんっ!どどどどどうしちゃったの?」

 

 ガタンと椅子を鳴らして立ち上がりなんとか距離を取ろうとしたけど、きゅっと手を繋がれてその場に縫い止められてしまう……。

 

「どうもしないよ?ほら、アシェルくんは座って続きでも読んでいてくれていいから」

 

「はゎ…………」

 

 導くように優しく手を引かれて、再び元の席に座ってしまう。机にはまだ開かれたままの本があるけど、こんな状態で読書なんて出来るわけないよ……。

 

「あれ。続き読まないの?」

 

 妖しく微笑んだダリルさんの手は、握ったままの僕の手を撫でながら滑るように移動すると、今度は指同士を絡ませるようにして繋ぎ直した。

 全ての動作に過敏な反応を示してしまう僕の身体は、もうどうしようもないくらいに動揺して統制が利かなくなっていた。

 

「…………や、めて…………僕、このままじゃっ……」

 

 整わない呼吸を浅く繰り返し、飛びそうな意識の中どうにか制止の言葉を口にする。

 だけどそんな僕の必死の思いはダリルさんには届かなかった。

 

「いやなの?…………ウソなんてついて、わるい子になっちゃった?」

 

 素直でいい子のアシェルくんに戻ってもらわなきゃ……。

 そんな囁きと共に、ダリルさんは囚われた僕の指先に、ちゅ……ちゅ……と何度も啄むように口付けていく。

 

「まっ、まって!ほんとに、ちょっと待って……ダリルさんッ…………」

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 ◇    ◇    ◇

 

 ◇    ◇    ◇

 

 

 目を開くとそこは自室のベッドの中で。

 まだ生暖かい思春期の粗相の不快感と、自身の脳内で女神様を汚してしまった事への自己嫌悪がじわじわと湧いてくる。

 

「…………最悪だ……」

 

 なんて夢を見てしまったんだろう。

 次にどんな顔でダリルさんに会えばいいのか……というか顔を直視できる気がしない。

 

 ありえない。どうして。なんでこんな、と……似たような言葉ばかりが頭の中で回っている。

 僕はずっと、ダリルさんのことが大好きだという自覚はあったけど、そういう感情じゃなくて……ただ純粋に、人としてどこまでも好ましく思っているだけのつもりだったのに……。

 

 憧れていただけのはずの、ましてや同じ男性に対してそういった好意を持ってしまうなんて……自分でも知らない間に僕はどこかおかしくなってしまったんだろうか?

 

 今世ではまだ恋愛感情なんて抱いたことは無かったけど、前世では普通に女の子が好きだった。

 いや、この言い方だと語弊があるけど、恋愛対象は異性だけだったんだけどなぁ。

 

 ……というか何をどう想像してみたって、ダリルさんが特別なだけで、きっと今世でも同性に対して恋愛対象として見ることなんて出来ないと思う。

 

 

「ダリルさん、だから……好きなんだ」

 

 言葉に出すと、収まりが悪かった気持ちが在るべき場所へストンと嵌まった気がした。

 

 そっか。

 別におかしくなった訳じゃなくて。ただ、人として人を好きになってしまっただけ、なんだ。

 

 ………………だからって今世初の(自主規制)をしてしまった事実には変わりなんてないんだけどね?どうするんだよこの汚れ物……。

 最悪の事態は免れて寝具は無事で済んでいるけど、下着とパジャマはどうにかしないと。

 

 本当に無垢な九歳児だったならいざ知らず、仮にも前世の記憶があってそれなりの知識を持つ僕としては、素知らぬ顔で普段通りに着替えさせてもらうなんて出来っこない!

 とりあえず早く起きちゃったってことでもう勝手に着替えて、こっそりお手洗いででも洗っちゃうしかない。

 

 そう決めた僕は、早速行動に移してまだ人の気配の少ない廊下をこそこそ歩いて、誰にも見咎められることなく目的地へと辿り着いたのだった。

 

 なんとかバレずに衣服の汚れを洗うことには成功したけど、濡れた衣服をどうするかまでは考えていなくて途方に暮れてしまう僕。

 

「うう…………手を洗う時に派手に濡らしてしまった事にでもするか……?」

 

「まぁた一人でブツブツ言ってんの?」

「うわあああっ!」

 

 突然頭上から声をかけられて盛大に驚いてしまった……。

 ちょっとくらい気配を出してくれてもいいのに、Jは僕がこうなるのを分かっててわざと完全に気配を遮断して至近距離から話しかけてくる。

 

「ほんとやめて……って文句を言いたいところだけど、今だけは有難いな…………Jくん、何も聞かずにこれをランドリーにぶち込んで来てくれ……」

 

 声のした方へそっと例のものを差し出すと、Jが受け取ってくれたことで隠匿の恩恵を受けたソレは手品のように消え去った。

 

「アシュ坊ってばついに俺をアゴで使うようになっちゃったんだ…………なーんて冗談は置いといて。とりあえず言われた通りにしてやるから、後で訳くらい話せよな?」

 

 笑い声でそう言った救世主は、最後には茶化すのをやめて依頼を請け負ってくれたのだった。





 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(通過儀礼だったんです……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


⭐︎乙兄の更新は週2回(火・土 20:00)の予定です。

__

▼追記

作品を通しての補足をひとつだけ。


【 ◇ ◇ ◇ 】が縦に二列並んで区切られている場面は、

"夢と現実の境目" を表現しています。

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