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【第二章開幕】乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

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三話◆そして帰路へ

てっ、てが……!

 

 揉め事が起こることもなく。

 全員がわりとあっさり席に着いた事で時間を持て余した生徒達は、おおむね隣同士でのおしゃべりに夢中になっていた。

 

 ちらりと右隣を見てみれば、まだ落ち着かない様子のニールくん。

 いま彼にこれ以上構うのも可哀想かなと思って、僕は後ろの席の子達に話しかけてみる事にした。

 

 前の座席の二組も、それぞれ仲良さそうに話してるんだもん……。

 

 振り返ってみると、そこに座っていたのは。

 交流会でも挨拶を交わしたブレイン・パルトロウ伯爵子息と、こちらは初対面のヒューゴ・レストレンジ辺境伯子息という、二人の男子生徒だった。

 ブレインくんとヒューゴくんは親戚筋で元から知り合いなんだという。

 わざわざ交流会のために王都まで来るのは面倒だと参加を見送ったヒューゴくんは、クラスの中にブレインくんの他には顔見知りが居なかったらしい。

 

 少しの間二人と話していたら廊下から足音が聞こえてきて。

 流石にAクラスと言うべきか、途端にみんなお喋りをやめて静かに待機をし始めた。

 九歳っていう年齢で、ここまでパッと切り替えられるのって、地味にすごいよね。

 

 足音が間近で一度止まって、僕を含めほとんどの生徒が見つめる先にある教室の扉が開かれる。

 そこから現れたのは、おっとりとした雰囲気のまだ二十代前半くらいに見える女性だった。

 

「あら。あらまあ……!もう座席が決まっているなんて、とっても素晴らしい生徒さん達で、先生うれしいわぁ〜」

 

 教卓の前に立った、ぽわぽわと気の抜けたような独特な話し方をするこの女の人は、どうやら僕らAクラスの担任らしい。

 

「みなさん、はじめまして。今日からあなた達Aクラスの担任になるメイジー・ボールドウィンです。早くみんなと仲良くなれるように、メイジー先生と呼んでくださいねぇ〜」

 

 にこにこと穏やかな笑みで、僕ら一人一人の顔を確かめるように眺めているメイジー先生。

 高位の子息子女を相手にするには少し頼りない気もしなくもないけど、厳しそうな先生よりは優しそうな先生で良かったかも?

 

 メイジー先生から今後の授業についての説明を聞いたあとは、僕らも窓側の列から順番に簡単な自己紹介をしていく流れになった。

 何人かやけに気合の入った子がいたけど、基本的にはみんなシンプルに名前と一言のみで済ませていた。

 

 フェリクスは王族なのでまず除外するとして、僕ら兄妹とクロード以外では、侯爵家の子息が一人と令嬢が二人。

 あとはヒューゴくんとニールくん以外の十八人はみんな伯爵家の子息子女だった。

 

 侯爵令嬢の二人はフェリクスの婚約者候補として名前だけは聞いたことがあったし、他にも何人かは交流会で話したことがあるから何となく覚えがある。

 そう考えると、クラスメイトの名前と顔を完全に一致させるのにもそこまで時間はかからなそうだった。

 

 ちなみにニールくんは、あの日も今日みたいにどうしていいか分からずに一人でオロオロとしている所に、僕から話しかけた子なんだ。

 話の途中で自己紹介がまだだったと思い出して名前を名乗ったら、そこで固まっちゃったんだよね……。

 

 それまではわりと普通にお話し出来ていたし、すごく良い子だと思うから、僕としては仲良くなりたいんだけどなぁ。

 そのうち慣れてくれるかな?

 

 ブレインくんはなんとなくお調子者の気配がするけど悪い子じゃ無さそうだし、ヒューゴくんは言葉数は多くないしパッと見ではちょっと怖そうに見えるけれど。

 "顔が怖いだけで実は優しい人"を見慣れている僕にとっては、見た目の印象は大した問題じゃなかった。


 

 今日はある程度の説明を受けたら、通学組はそのまま解散となるらしい。

 寮生活を送る生徒達は、そのまま寮へ案内されて、規則や施設についての説明を受けてから各自の部屋へ向かうことになるのだろう。

 

 兄様も通学組だったし、僕とアリシアも寮に入る必要は無いんだけど。

 学生寮って、ちょっと憧れちゃうんだよなぁ。

 

 ――そんなことを考えていたら。

 顔に出ていたのか、もしかするとまた言葉に出てしまっていたのか。

 ブレインくんとヒューゴくんに、落ち着いたら寮の部屋を見せてもらえることになった。

 

(やった!めっちゃ楽しみ……!)

 

 学年が上がるごとに成績順でクラス編成をし直すらしいけど、一年間はこのメンツで過ごす事になるから。

 早くも仲良くなれそうな子たちが居て良かったなと思いつつ、僕は楽しい気分で教室を後にしたのだった。

 

 

「俺は先にシャロンを親御さんの所まで連れて行きますんで、ここで失礼しますね。アシェルもアリシアも、またな」

 

 前半はフェリクスに向けて、僕らにも簡単に声掛けすると、クロードはシャロン嬢を連れて馬車の順番待ち用の待機スペースへと歩いていった。

 寮生が多いとはいえ、結構な数の馬車が待機しているから。

 馬車寄せには、高位から優先的に出られるように馬車が並んでいた。

 

「ぼくもアリシア嬢をエスコートするべきだろうか」

 

 冗談めかして笑うフェリクスに、アリシアもクスリと笑みをこぼす。

 

「お気持ちだけで充分ですわ、フェリクス様」

「どっちかと言うと、僕らがフェリクスを送るべきなんじゃない?」

 

「ふむ。ままならんな」

 

 そんな軽口を叩きながらも歩を進めていく僕ら。

 初等部に在籍している家門を考えれば、どうせすぐ近くに馬車が並んでいるんだけどね。

 さほど遠く無い距離を談笑しながら進めば、あっという間に馬車まで着いてしまった。

 

「ではまたな」

 

 短く告げるフェリクスに言葉を返し、見慣れたガルブレイスの馬車へと向かう僕とアリシア。

 まずはアリシアに手を貸し、ステップを上っていくのを確認して、僕もステップに足をかけた時。

 

「まあ……!」

 

 という驚いたようなアリシアの声に顔を上げると。

 

「やあアシェル。おかえり」

「アシェルくん、お疲れさま」

 

 馬車の中にはいつも通りに微笑む兄様と、僕の方に手を差し出すダリルさんの姿があった。

 

「えっ、あれ、なんで?兄様?ダリルさん?」

 

「ふふっ、せっかくだから一緒に帰ろうと思って待ってたんだよ。父上と母上には、僕が残るからと言って先にお帰り頂いたんだ」

 

 兄様は分かるけど、何でダリルさんまで?


 頭が働かずにぼんやり眺めていたら、こちらに手を差し伸べたままのダリルさんが不思議そうに首を傾げた。

 

「アシェルくん?あっ、もしかして手助けなんて要らなかったかな……?」

 

 ハッとしたような顔になり、次いで躊躇いがちに聞かれた僕は、反射的にダリルさんの手に自分の手を重ねていた。

 

「そんなことないです!ありがとうございますっ」

 

(ひええええ!思わず手を取っちゃったけどめちゃくちゃ緊張するぅぅ……)

 

「先週はお家に行けなかったから、アシェルくんに会いたくて。それに入学のお祝いもちゃんと言いたかったし、カーティスと一緒に待たせてもらったんだ」

 

「そっそうだったんですね……!うれしいです……」

 

 滑らかな素肌の感触にドギマギしながら、なんとか平常心を保ってダリルさんの手を借りてステップを上り切る。

 

 兄様とダリルさんは向かい合って座っていたらしく、当たり前だけどアリシアは兄様の隣の席に座っていた。

 そちら側に三人並んで座ることは出来るけど……二人ずつ座る方がどう考えたって自然な訳で……。

 

「ダリル。今日はこのままうちに来るかい?それとも先に送ろうか」

 

「うーん……お言葉に甘えてお邪魔してもいいかな?さっきの話もあるし……」

 

 意を決して、そろりとダリルさんの隣に腰を下ろす。

 さっきも遠目から見たけど、間近で見る制服姿のダリルさんが眩しすぎて、僕は自分の靴先へと視線を落とした。

 

「どうして君がアシェルに込み入った話があるのかは、その話の後に聞かせてくれるんだったね?」

 

「うん…………ごめんね」

「いいよ、ダリルの事は信用してる。……馬車を出してくれるかい?」

 

 なんだか真剣そうな話をしていた兄様とダリルさんだったけど。

 触れ合っている訳でも無いのに隣り合った左半身が熱い気がして、僕には二人の会話を気にしている余裕はなかった。

 

 兄様が少し声を張って御者へ伝えると、僕らを乗せた馬車はゆっくりと動き出したのだった。

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(ブレインくんとヒューゴくんは幼なじみ……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


⭐︎乙兄の更新は週2回(火・土 20:00)の予定です。

________

***

 

【 SYSTEM MESSAGE 】

1. 学園の友人たち の unlock 完了。

2. 資料保管庫02 の unlock 完了。

※system error

 一部の情報の閲覧許可が確認出来ません

 

 

***

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