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【第二章開幕】乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった  作者: かみながあき
第二章◆初等部編

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一話◆カーティス兄様の進学式

制服にテンション上がっちゃった……

 

 あれから数ヶ月が経ち、ついに今日は学園の入学式の日となった。

 以前ほど両親(の顔)に緊張しなくなった家族揃っての馬車に揺られていたら、学園までの道のりは、あの交流会の日よりもあっという間に感じられた。

 

 アリシアと二人で、初めての制服にはしゃいだりお互い褒め合ったりしていたら。

 僕らとは少しだけ違った制服を着た兄様も楽しげに参戦してきて、気が付けば三人での褒め合いになっていた。

 

 ちょうど兄様は中等部の歳になったので、校舎は同じ敷地内にはあるものの、学園内ではほとんど顔を合わせる事は無さそうで……。

 それだけがちょっと残念だった。

 

 貴族学園の"入学式"と中等部や高等部への"進学式"は同じ日に行われるため、それぞれ時間帯がズラしてあった。

 まずは朝の九時頃から高等部の進学式があったみたいだけど。

 僕らは高等部には関わりがなかったので、十時頃から行われたカーティス兄様の中等部への進学式に、両親と共に参列した。

 

 周りと同じ新しい制服に身を包んだ兄様はすごく格好良くて、沢山の生徒の中でもひときわ目立っていた。

 そんな兄様の隣にダリルさんの姿を見つけてしまった僕は、初めて見る彼の制服姿に衝撃を受けて……。

 ふらりとよろけて意識を持っていかれそうになってしまった。

 

 父上が無言で背中を支えてくれて、事なきを得たけれど。

 額や首元で熱を測られ、"少し熱がある"と抱き上げられて、そのまま退出しようとするのを止めるのが大変だった。

 

「少し興奮し過ぎてしまっただけなので、本当に何ともありませんっ。せっかくの兄様の進学式だから最後まできちんと見ていたいです……!」

 

 そう半泣きでお願いすると、父上と母上は少しのあいだ眉間にシワを寄せてとんでもなく怖い顔していたけれど(多分心配している)最後には折れてくれた。

 アリシアだけは「アシュってば、進学式の何を見て興奮したって言うのよ……?」と呆れたように呟いていた。


 次フラついたら、きっと今度こそ強制退出させられてしまう。

 でも、それじゃあ気持ちが高ぶって魔力も乱れちゃうから、これ以上ダリルさんの姿は見られないじゃん……。

 そんな風に落胆しかけた僕だけど。

 

 そういえばと思い出して、ポケットに忍ばせていた小さな魔石を握りしめる。

 高まる感情と、それに伴って体内で荒ぶる魔力を鎮めようと試みた。

 

 実は、数日前に。

 ……何の因果かは分からないけれど、暫定ヒロインであるクリスタからの手紙が僕の元へと届いたのだ。

 

 僕に、というとちょっと違うかもしれない。

 

 前世で言うところの空き瓶に手紙を入れて海に流すような、風船に付けた手紙を風に飛ばすような。

 そんな感じで『見ず知らずの誰か』に向けて送られたらしい手紙が、どういう訳か僕のところに一直線に飛んできたんだ。

 鳥の形をした何かの魔法で、文字通り一直線に。

 

 ちょうど一緒に居たJが、僕目がけて飛んできた謎の飛行物体をすんでの所で叩き落としてしまったんだけど、いざ見てみるとそれはただの手紙で。

 しかも中には、聖魔法で満たされた治癒の魔石まで同封してあった。

 

 蓋を開けてみれば、悪意の欠片すら感じられない"ソレ"を叩き落としたことで、Jがちょっとだけ気まずそうに笑っていた。

 僕としては、とっさに得体の知れないモノから護ろうとしてくれたJには感謝しか感じていなかったんだけど。


(それに、とっさの判断力がプロって感じでカッコよかったし……)

 

 そんなわけで、届いた手紙は秘密共有仲間の三人にも読んでもらった。

 返事を出すかどうか悩みながら、今は引き出しの中で眠っていてもらってるんだけど……。

 同封されていたお守りはありがたく使わせてもらっていたりする。

 

 僕が魔石に触れた瞬間、なんだか身体の奥がポカポカするような……どこか癒されるような感じがしたんだけど、アリシアとJは特に何も感じないようだった。

 

 そしてKが魔石に触れた時には、彼女の顔の左半分にあった痛々しい火傷の痕がものの数分の内にどんどんと消えていって――

 僕とアリシアとJの三人は、口をぽかんと開けたままその光景を呆然と眺めることしか出来なかった。

 

 僕らの様子に何が起こっているのかを察したKは、火傷痕が完全に消え去る前に、お守りを僕の手の中へとなかば無理やりに戻してしまった。

 完全に治癒してしまえば良いのにとアリシアが言うと、Kは魔石に内包された魔力を減らしてしまう恐れがあるからこれ以上は自分に使うべきではないと、それを固辞した。

 

 その時、魔石の効果が目に見えて分かったのはKのお陰だとお礼を言ったら。

 前にJがしていたのに似ている、どういう感情なのか分からない不思議な顔をしていた。

 

 

 数日の間に、少しずつ検証を繰り返して。

 この"ヒロイン謹製のお守り"は、目に見える傷は古い新しいに関わらず、癒してしまうこと。

 風邪気味のメイドさんがすぐさま完治したことや、過去の事故により片耳が不自由になってしまったという使用人が僅かに聴力を取り戻したことから、おそらく病や身体の異常も、症状が重いほど時間はかかるが治癒してしまうらしいこと。

 そして、乱れた体内魔力を穏やかにする効果があることなどが分かった。

 

 他にも効果があるかもしれないけど、色々と試しているうちに最初に比べてほんの少し色が薄くなった様な気がして。

 それに気付いてからは、僕の体質――たぶん魔力回路の詰まり(?)が改善されるまでは、極力他の事に使用しないようにとアリシアから厳命されてしまった。

 

 お守りのあまりの有用性に、「ヒロインさんマジチート過ぎない?」と思わなくもなかったけど。

 聖女になり得る存在なんだと考えれば、チートで当然なのかもしれない。

 

 女子学習院の入学式は数日前に終わっているという情報を聞いたので、今日はここにダリルさん()の進学式を見に来れてはいないかもしれないけれど。

 返事も出さずにごめんね……お守り本当にありがとう、と心の中でお礼を言いつつ、僕は兄様と女神様の姿を遠くから眺めていたのだった。

 

 

 学園長のヒゲのおじいさんが壇上を降り、続けて中等部の新一年生を歓迎する挨拶に、生徒代表としてフレディ第一王子殿下が壇に上った時には。

 さすがに貴族しかいないので歓声が起こったりはしなかったけど、生徒たちの間から色めき立ったような騒めきが聞こえたりもした。

 

 フレディ殿下とは、フェリクスに会いに王宮を訪れた時に、何度か挨拶程度は交わした事がある。

 でも、こうしてじっくりその姿を眺める機会は今までなかったなぁ。

 

 前世の妹がコモハナで一番好きだと言っていただけのことはあって。

 その美貌は勿論のこと、穏やかで聡明な眼差しは、次代の国を背負い立つ第一王子としてなにひとつ不足など無さそうだった。

 

 こんなに立派な次期国王がいるのに、なんでゲームの第二王子派はフェリクスを担ぎ上げようとしたんだか……。

 いや、フェリクスだって十分立派な王子だし、彼に国王の資質が無いなんてことじゃ決してないけど。

 

 フレディ殿下が壇上を降りていく姿に、確かこの後は国王陛下からのお言葉と閉式の挨拶だけだったなと思い出した僕は、残りわずかな時間を兄様たちの姿を眺めることに費やしたのだった。

 

 

ナンバリングのあるお話としては、

第二章の一話目となります。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

(国王のお言葉をスルーするアシェルくん……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


⭐︎乙兄の更新は週2回(火・土 20:00)の予定です。

__

※追伸

ep.21の後書にも追記しましたが、

"【幕間】お嬢様とよく笑う影 " の作中でJが歌っていた子守唄の「歌詞全文」を掲載したページが出来ました。

もしご興味のある方がいらしたら、ご覧になってみてください☆(そのうち黒歴史も掲載予定です。笑)

タイトル:ポエム・作詞集【いつかの言葉たち】

Nコード:N2774LQ

該当歌詞のURL:https://ncode.syosetu.com/n2774lq/1/

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