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【第二章開幕】乙女ゲームで存在しない悪役令嬢の双子の兄に転生してしまった  作者: かみながあき
第一章◇幼少期編

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九話◇八歳の夏

もうすぐだ


 時は流れて。

 誕生日を三度迎えた僕とアリシアは、次の春には学園入学となる八歳になった。

 

 教育の方も、ここ一年程で少しずつ本格的になってきた。

 今は週二日の休息日を除いて、一日に三教科、それぞれ二時間ほどの予定が組まれている。

 フェリクス王子との交流もずっと続いていて、日々手紙を交わしたり、月に二〜三回は王子宮に招かれたりしていた。

 

 

 二ヶ月ほど前に、ついにフェリクスとアリシアの正式な婚約が結ばれた。

 僕ら双子が揃って遊びに行く日とは別に、アリシアだけ週に一回の交流日があって、その時に少しずつ王子妃教育も受け始めているらしい。

 学園入学後には授業帰りに王宮に寄って日々教育を受ける事になっており、そこからが本番のようだ。

 

 いまだに破滅フラグの心配をしてしまう僕だったけど、アリシアとフェリクスの仲も良好そのもので。

 二人の間には幼い恋情やある種の愛情のようなものが感じられる瞬間もあった。

 

 

 婚約と言えば、クロードの方がアリシアよりもさらに早かった。

 入婿である"メルヴィン卿"の商才によりどんどんと家門を発展させ、今やそこらの侯爵家よりよほど裕福なのでは……なんて噂されているコールマン伯爵家。

 そんな伯爵家の令嬢であるシャロン嬢とクロードとの婚約が、相手側の強い希望により結ばれたのが、ちょうど一年ほど前。

 経緯はそこまで詳しく知らないけど、どうやらシャロン嬢の一目惚れだったらしい。

 

 婚約当初は「まあ知らない相手と婚約なんてよくある事だし、うちにとってもイイ縁談なんじゃねぇの?」とドライなことを言っていたクロードだったけど。

 一年も経った今では「シャロンはなんかこう、いかにも女の子って感じなんだよ。しかもあれだけ素直に好きって感じを出されたらさぁ……俺が守らなきゃって気になっちまうだろ……」と惚気まで聞かされる始末だった。

 

 シャロン嬢との婚約、そして入園間近の八歳。

 そろそろクロードの身に、筋書きの為の不幸が訪れるはずの日が近付いていた。

 

 

 事前交流会は古い慣習で、毎年秋頃に次年度入園予定の主要な貴族が集められている。

 建前としては、子供たちが後々スムーズに交流できるように。

 そして保護者側ではいわゆる派閥を入学前に確認しておきたいという思惑があるらしい。

 どこが主催するかで揉めた事があり、十数年前からは学園側が会場を提供して取り仕切り、費用だけは貴族家から集めているとのことだった。

 

 今は七月の中旬なので、開催まではあとほんの数ヶ月だろう。

 予防策としては。

『そもそも参加をさせない』

『ゴリ押しして警備を増やしてもらう』

『防護の魔道具を持ち込む』

 などが考えられたけど、僕らが参加をしなくても他の人が危険に晒されるのを分かっていて放置することになるからまずこれはダメ。

 警備を増やしてもらおうにも「魔物が出るので……」なんて言っても信じてもらえない可能性の方が高いし、ただ難癖をつけているだけに取られてしまいかねない。

 

 消去法で残されたのは『魔道具を持ち込む』ってことなんだけど。

 肝心の魔道具については、当然すでに手を打っている。

 兄様を通して父上に案を持ち掛けて貰って、ひっそりと魔道具開発に心血を注ぐグウェイン・スミス氏を専属職人として雇い入れたのが昨年春頃。

 

(……スミス氏は、ゲームで名前だけちらっと出て来た事があるんだよね……)

 

 そこから腕輪のメンテナンスを口実に直接会う事に成功した僕は、彼に依頼したい魔道具についてのプレゼンをした。


 かなりの乗り気で製作を引き受けてくれたスミス氏は、早々にプロトタイプとしてブローチ型の防護魔道具を完成させてくれた。

 今は更なる小型化に挑戦したいと励んでおり、カフス型の魔道具が完成まで秒読みのところまで来ているらしい。

 

 実際の所、クロードの惨劇を防ぐだけなら、もうすでにいくつかブローチ型の魔道具を貰っているからそれで事足りるはずなんだけど。


 役立つ魔道具にオシャレアイテムとしての幅まで広がるなんてすごく夢があるし、今は他に依頼したい魔道具も思い付かないからスミス氏の好きに研究開発してもらっている。

 

(それに、やっぱりカフス型の方がかっこいいし……!)

 

 

 ようやくクロードのフラグを叩き折る算段がついた僕は、最近は少しだけ肩の荷が降りた気持ちでのびのび過ごす事が出来るようになった。

 

 ちなみに筋トレもずっと続けていて、虚弱というレッテルを剥がす事にも成功したんだ。

 今では、正式に教師を付けてもらって、堂々と剣術の訓練を受けられるようになっていた。

 

 

 そんな充実した日々を送っていたある日。

 夏季休暇に入って家に居る時間が増えた兄様が、「次の週末に友人をひとりうちに招きたいんだけど、良いかな?」と僕らに尋ねてきた。

 父上と母上にも伝達済みで、特に反対はされていないらしい。


「とても勉強熱心でね、うちの蔵書を読んでみたいそうなんだ。きっと彼は書庫から動かなくなると思うから特に君達の邪魔になったりはしないと思うよ」


 そう言った兄様に、僕らは反対する理由なんて何も無いので快諾する。

 

「もちろんわたくしたちは構いませんわ。ね?」

 

「はい!むしろ兄様のご友人だなんて、ぜひお会いしてみたいです!……あっ、当然ご迷惑じゃなければ、ですけど……」

 

 なんだか前のめり過ぎた自覚があって、後半は抑え気味にこそりと呟く。

 そんな僕を見て兄様が小さく笑った。

 

「ふふ。じゃあ紹介することにしようかな?実は彼の方もアシェルに……いや、アシェルとアリシアに会ってみたいと言っていたんだよ」

 

 なんとなく気になる言い方だったけれど、ともかく僕とアリシアは初めて兄様の学園での友人とご対面!することになったのだった。

 

 

「どんな人なんだろうね?楽しみだなぁ」

 

 兄様と別れた後、アリシアと二人になった僕は想像を膨らませていた。

 

「あのカーティスお兄様のお友達ですもの。素晴らしい方に決まってるわ」

 

「だよね?大前提としてそれはそう。わざわざ本を読みに来たいって言うくらいに勤勉な人でしょ、やっぱり知的な感じなのかな」

 

「確か彼って言っていたし当然男の人なのよね。わたしは挨拶だけしたらお部屋に戻っていようかしら」

 

「兄様が女の子連れてくるなんてなったらすごい騒動になるんじゃない?想像つかないけど」

 

 なんせ兄様は釣書は山のように来ているけど、今はまだ学業に専念したいと言って全て保留にしているくらいにストイックなのだ。

 甘いルックスの超絶美少年なので男女問わず慕われていて『カーティス様を見守る会』なるものが存在するらしく、どうやら学園内で恋愛的な意味で近付こうとする者はことごとく会員達に阻まれているらしい。

 

「それもそうね。……そういえばお兄様ったら学業に専念したいって婚約を躱しながら、釣書の女性の素行を学園でチェックしてらっしゃるのよ?アシュってば知ってた?」

 

「えっ、初耳なんだけど……!うわあ、でもさすが兄様って感じ……」

 

 

 そんな感じでそれからも議題は何度か移り変わったけど、僕らのおしゃべりは就寝時間の間際まで続いたのだった。

 

 

 

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

(わたしはきみたちを見守る会を作るね……)

よければまたアシェルに会いに来てくださいね!


冬休み" まったり乙兄企画 " 2日目です☆


**12/26〜1/4まで毎日20時に更新します!**


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