第7話 3人の候補者と新たな光
実技試験の翌日。
校内の一室には、教員たちと審神者学園の関係者たちが集い、試験の結果をもとにした重要な会議が行われていた。議題はただ一つ――誰が、審神者学園へ推薦されるのか。
「まず、堂々の一位を勝ち取った白斂 叶多君は文句なしに推薦対象としましょう。問題は、残る枠です」
司会進行を務める神宮寺がそう切り出すと、教員たちは一斉に手元の資料をめくり、真剣な面持ちで互いに顔を見合わせながら意見を交わし始めた。
「私は灘 咲弥君を推薦したい。彼は校内でも数少ない神之片鱗の行使者であり、その実力は折り紙付きです」
一人の教員がそう口火を切ると、次々と別の教員たちも賛同の意を表明していった。資料を指でたどりながら、ある者は技術の高さを、またある者は冷静な判断力を称賛した。
数十分の議論の末、神宮寺が場をまとめるように声を上げた。
「現時点で名前が挙がっているのは、白斂 叶多、灘 咲弥、そして小鳥遊珠璃。この三名で異論は?」
一同は、静かに頷く。だがその空気を切り裂くように、神宮寺がふと付け加えた。
「……もし許されるなら、私から1名、追加で推薦したい生徒がいます」
その言葉に、ざわめく場。数人の教員が小さく眉をひそめた。
「その者の名は――天帝 宵。彼の力に、私は《《可能性》》を感じています」
教員たちの目が一斉に神宮寺へと向けられた。
「彼が導を得てから、まだ日は浅い。それでも……試験中、一時的にとはいえ神之片鱗に呑まれ暴走状態に入った。しかしそれは、裏を返せば《《制御されれば計り知れぬ力を持つ》》ということでもある」
言葉に熱がこもる。神宮寺は、あの瞬間を(宵が闇を纏い、空気を震わせるような一撃を放った場面を)最も近くで目撃した唯一の人物だった。
「……私は、彼に強い関心と、期待を抱かずにはいられないのです」
神宮寺の真剣な眼差しに、他の教員たちは沈黙を余儀なくされた。彼らはその力を“実際には”見ていない。だが、試験場に立ちこめたあの凄まじい気配は、確かに記憶に焼きついていた。
(あれは……まるで、神そのものがそこにいたかのようだった)
「では、異論は……ありませんね?」
神宮寺の問いかけに、教員たちはしばしの逡巡の末、渋々ながらも頷きを見せた。否定はできなかった。《《可能性》》という言葉が、確かな熱を帯びて心に残っていたからだ。
「では――この4名は審神者学園への入学を決定します」
神宮寺の言葉と共に、会議は静かに、しかし確かに結論へと至った。その名前の中に、天帝 宵という未完の逸材が記されたことを、誰もが忘れることはなかった。