第26話 龍と骸
黒煙が裂け、そこへ歩み出た男の影があった。
純白の長衣に金糸の刺繍が揺れる。踏みしめた石畳が低く呻き、まるでその存在そのものが重圧を放つ。
神宮寺 龍空。学園の大黒柱にして、龍の導を操る男。
黒骨の兵士たちが、龍空の行く手を遮るように殺到した。その瞬間、彼の背後に幻のような龍の影が幾重にも立ち昇る。
「龍々神・破滅」
低く響いた声と同時に、龍の影が一閃。大気が激しく震え、数多の骨の兵士は一瞬で粉砕され、残滓すら風に消えた。残るは、奴のみ。
鎖剣が唸りを上げ、広範囲を薙ぎ払う。鎖に繋がれた刃は蛇のように伸び縮みし、まるで空間そのものを切り裂くかのごとき軌道を描いた。
龍空は一歩も退かず、足元から噴き上がるように龍の導を解き放つ。地を割り、風を引き裂く龍の咆哮が鎖剣に衝突し、衝撃波が空を震わせた。
「ほう……これは面白い」
奴の声は低く、しかし確かな愉悦を帯びていた。黒骨のローブ越しに覗く瞳孔は、常人には理解し得ぬ光を宿している。
「私が名乗るに相応しい……私は正の一員。骸の導を継ぐ者、怨骸と申す」
その名が吐き出された瞬間、周囲の空気はさらに重く沈み、黒煙が渦を巻く。
龍空は目を細め、ただ無言で構えを取る。
次の瞬間、地面を砕く爆音。鎖剣が横薙ぎに走り、龍空は前へ飛び込む。
「炎神龍ッ」
赤色の炎を纏った龍が鎖剣の連撃を押し返す。火花が炸裂し、辺りを照らすほどの閃光が走った。
怨骸は一歩も引かない。鎖剣を地に叩きつけ、その反動で四方八方に刃の雨を散らす。
龍空は風神龍を使い、空中で空気を凝縮させ、龍の咆哮を解き放つ。衝撃が刃の雨を飲み込み、黒煙をも吹き飛ばす。
だが、骸鎖の気配は揺らがない。むしろ、その不敵な笑みがさらに深まっていた。
「いいぞ……もっとだ。お前の全てを、私に試せ!」
鎖剣と龍の影が衝突し、空は裂け、地は割れる。
それはもはや一つの戦いではなく、二つの異なる存在が世界の在り方そのものをぶつけ合う激突だった。




