第24話 屍竜群襲
吼える竜骨の咆哮が、空を裂いた。
地面からはいくつもの巨大な骨の翼が突き出し、空を蹴り上げた異形の影が、ゆっくりと宙に浮かび上がる。その数、三体。
全てが、漆黒の禍々しい骨で構成されていた。かつて命を持っていた竜たちの骸。それらを強引に模倣した、不死の機構。
「三体もいるのかよ……!?」
咲弥が絶句し、叶多は唇を噛んだ。珠璃の指先が小刻みに震えている。
「正面からの突撃じゃ無理だ。布陣を変える。三体の竜は俺たちが引きつける。お前らは後衛を守れ!」
黒影教授の声が、戦場を貫いた。
銃を握る右手が揺るがない。教授はそのまま、生徒たちを守るように前へ出た。
「行くぞ!!」
同時に、生徒たちが動く。雷の導の叶多は瞬時に高台へ移動し、雷撃の狙撃体勢。咲弥は斜線を分断する遮蔽へ、珠璃は後方で治癒陣の展開を開始。
「俺は……!」
「宵は咲弥《水使いの彼》と共に動け!」
黒影教授が、こちらを振り返らずに叫ぶ。
そして骨竜の一体が咆哮とともに黒炎を吐き出した。
「来るぞッ!」
黒影教授が前へと跳び、銃を横に構えて引き金を連射。精密な射撃が骨の間接部を砕くが、竜の動きは止まらない。砕けた箇所から新たな骨が蠢き、瞬時に修復されていく。
「自己修復かよ……!」
「なら、壊しきるまで!」
咲弥が怒声を上げ、竜の足元へと突撃した。剣が閃き、骨を裂く。しかし竜は構わず前脚を叩きつけ、衝撃波で彼を吹き飛ばす。
「咲弥!」
だが彼は立ち上がった。血を流しながらも、牙を剥くような表情で剣を再び構える。
そこへ叶多の雷撃が竜を貫く。珠璃の治癒が間に合うたび、倒れた生徒が再び立ち上がる。
総力戦。これが、俺たちに与えられた現実だ。
「――ッ!」
そのときだった。
背後から、鋭く風を裂く音が聞こえた。
「宵、下がれッ!!」
黒影教授が叫ぶと同時に、俺の目の前に、影が躍り出る。
骸の男が放った、鎖剣。
地面を這い、死角から俺を狙って放たれたそれは、影化が間に合わず、まさに急所を貫かんとした刹那――
宵が反応するよりも早く、その前に黒影教授が滑り込んだ。
――ガギィィィィン!!
金属音が響き渡り、鎖剣が弾け飛ぶ。だが直後、その刃の一部が教授の脇腹を掠めていた。
「ぐっ……!」
響く肉を裂く音。咄嗟に跳び出した教授の腹部を、鎖の刃が深々と抉っていた。
黒影教授が片膝をつく。普段見せぬ苦悶の表情に、生徒たちの間に緊張が走る。
「黒影先生!」
駆け寄ろうとする宵を、黒影は片手で制した。
「……この程度で俺が死ぬとでも思ったか。……少々痛いだけだ」
淡々と呟く口調は変わらず。しかし腹からは赤い血が滴っていた。
「珠璃!」
「はいっ!」
すでに動き出していた珠璃が、手を翳して治癒の術を発動する。淡い緑と黄色の光が傷口を包み込み、じわじわと肉が繋がっていく。
「……助かった。君の回復速度は優秀だな。今度、研究室に招こう」
「け、結構ですっ!」
頬を赤らめながらも、珠璃は手を止めない。
一方、黒影教授は再びまっすぐ立ち上がり、奴の方を睨みつける。
「さて……今度はこちらの番だ」
圧が、空気を震わせる。




