第15話 各々の行き先へ
廊下を歩く足音が、午後の静けさの中に響いていた。俺は咲弥、叶多、珠璃と並んで歩きながら、先ほどのセリエ先生の授業を思い返す。
「……この世界の真相を追うためって言葉、あれ、何だったんだろうな」
ふと漏らした俺の問いに、咲弥が腕を組んだまま小さく鼻で笑う。
「さあ?でも、あの先生があんなふうに言うのって珍しい気がするな。普通の授業っぽく始まったから、もっと退屈かと思ってたのに」
「そうそう。それに模擬戦終盤のセリエ先生の技も凄かったよね。あれ……神託顕現って言うんだっけ?正直なところ、鳥肌が立ったよ」
叶多が首筋をさすりながら言うと、珠璃が静かに頷いた。
「うん……正直、私、途中で息するの忘れてたくらい緊張してた……。でも先生は、すごく穏やかなままで……」
咲弥が苦笑まじりに言葉を返す。
「けどさ、あれを見てもなお、何かを隠してるって顔だったのが気になるよな」
やがて、分岐点となる中庭前の階段に差しかかる。生徒たちが各々の行き先へ散っていく中、咲弥が立ち止まって言った。
「さて、私は水の導の教授のところへ行ってくるよ。その人、いつも何か食べながら講義するらしいんだってさ(笑)」
「僕もそれ聞いたことあるよ。雷の教授はまあまあ普通らしいけど、いきなり雷撃飛ばされるという噂はあるね……」
そう言って肩をすくめる叶多に珠璃が小声で続けた。
「私は……回復系だから、また別のところ。あまり戦ったりはしないけど、ちゃんと勉強はしなきゃって思うし……」
「そっか。……じゃあ、また後で」
互いに軽く手を振って、三人はそれぞれの方向へと別れていく。俺も静かに踵を返した。
向かう先は闇の導の専門教授の元。校舎の中でも特に陽の当たらない、半地下のような部屋。その扉の前に立つと、空気がひんやりと冷えて感じられる。
ノックしようと手を上げたその瞬間、中から低く落ち着いた声が響いた。
「入っていい。来ると思っていた」
戸を開けると、そこにいたのは、鋭い目つきをした痩せた男。黒のロングコートを羽織り、顎には無精髭。歳は四十代後半だろうか。だが、背筋はまっすぐ伸びており、その気配には隙がなかった。
彼の右腰には、長銃――異様に長い、黒く重厚な銃が吊るされている。その存在だけで、戦闘の格がまるで違うことが伝わってきた。
「天帝 宵だな。……まあ、座れ。軽く話をしよう」
まるで初対面ではないような物言い。だが、俺は無言のまま頷き、椅子に腰を下ろした。
この男――今の俺の全力でも、おそらく敵わない。そう、本能が告げていた。




