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異世界ハーレムプロデュース〜歌と魔法とサバイバル!?問題児だらけの育成計画〜  作者: 大川とら
第四章:精霊の森、天空の劇場 ~響け、希望のセレナーデ~
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第四章-6

 亜空間転送の光が強く輝き、俺たちの体を激しい衝撃と浮遊感の喪失が襲った!

「うわっ!?」

「きゃあっ!」

 まるでジェットコースターが急停止したかのようなGを感じながら、俺たちは光の中に叩きつけられるようにして、固い石の床の上へと放り出された!

「いっ……てぇ……」

 全身を打った痛みに顔をしかめながら、俺はゆっくりと目を開けた。どうやら無事に転送は完了したらしい。周囲を見回すと、そこは薄暗く、埃っぽい石造りの部屋だった。壁には見たこともない紋様が刻まれ、部屋の隅には壊れたような機械の残骸が転がっている。おそらく、王都にある、今は使われていない古い転送施設の一室なのだろう。

「……着いた、のか……?」

「……みたい、ですわね……」

「はぁー、やっと着いたぜ……」

「……静かな場所ですね」

 俺と同じように床に転がっていたヒロインたちも、それぞれ体を起こし、安堵の息をついていた。なんとか、王都までたどり着けたようだ。身体的な疲労はない、というルナの言葉通り、体は驚くほど軽い。……ミャオの蹴りが原因(絶対そうだ)で、到着が少しばかり乱暴になったことを除けば、転送は成功と言えるだろう。

 ……そう、思っていた、のだが。

 俺が立ち上がろうとした時、隣で体を起こしたリリアの悲鳴が響き渡った!

「ひゃあああああああっ!?」

「ど、どうしたリリア!?」ミャオが驚いて振り返る!

「な、何ですの、急に……!?」セレネも眉をひそめる!

 そして、俺たちは気づいた。いや、気づかざるを得なかった。

 リリアが指差していたのは……自分自身の体。

 そして、俺たち全員の体から……服が、綺麗さっぱり消え失せていたのだ!


「「「「「………………え?」」」」」


 一瞬の沈黙。

 そして、次の瞬間。


「「「「きゃああああああああああーーーーーーっっっ!!!!」」」」


 リリア、ミャオ、セレネの絶叫が、狭い石室に木霊した! (ルナだけは「あらあら」と少し驚いた顔をしているだけだったが!)

 俺も自分の体を見て、絶句した。……ない! 服が! 俺もトランクス一丁じゃないか!

 ミャオの蹴りによる故障か!? あの古代の転送装置は、とんでもないエラーを引き起こしていたのだ! 身体だけを先に正常に転送し、衣服のデータ(?)の転送に致命的なラグが発生しているらしい!

 目の前には、四人四様の、非常にけしからん、いや、神々しくも刺激的すぎる美少女たちの下着姿が!!!

 リリアは、ペールグリーンのフリルと小さなリボンがたくさんついた、いかにも清純派なコットン製のブラとショーツ! 普段のゆったりした服の下に隠されていた、華奢ながらも女の子らしい柔らかな曲線があらわになっている!

 ミャオは、オレンジ色の元気いっぱいのスポブラとボーイレッグショーツ! 引き締まったくびれ、形の良いお尻、そしてスポブラからこぼれんばかりの豊かな胸! 健康的な小麦色の肌が眩しい!

 セレネは、予想通りというか、期待通りというか……深紅クリムゾンの、繊細な高級レースで縁取られた、見るからに高価そうなシルクのブラジャーとショーツ! その完璧すぎるボディラインと、白い肌とのコントラストが、もはや芸術品の域! 普段の高慢な態度とのギャップがヤバすぎる!

 そしてルナは……白い、非常にシンプルなキャミソールと、フレアパンツのようなものを身に着けていた。装飾はないが、その生地は滑らかで、彼女の神秘的な雰囲気と、華奢ながらも美しい体のラインを際立たせている!

 悲鳴! 混乱! 羞恥!

「み、見ないでくださいぃぃぃ!」リリアは涙目でその場にうずくまり、必死に胸元と下半身を腕で隠そうとする!

「こ、この変態プロデューサー! ジロジロ見てんじゃねぇ! 目ぇ潰すぞ!」ミャオは顔を真っ赤にして叫びながら、同じく胸と股間をガード!

「……っ! き、貴様! この痴れ者! 万死に値しますわ! いや、万死でも足りませんわ!」セレネも顔を沸騰させんばかりに赤くし、プルプルと震えながら俺を睨みつけている! 普段の冷静さはどこへやら!

「あらあら……これは、少々困りましたね」ルナだけが、比較的落ち着いているように見えるが、それでもその白い頬はほんのりとピンク色に染まっている!

 俺!? 俺だって被害者だ! ……いや、目の前の光景は、男としては正直言って……ご褒美以外の何物でもないのだが! だがしかし! この状況はマズすぎる!

 俺の鼻からは、限界を超えた興奮(と衝撃)で、盛大に赤い液体が噴き出していた! 視界がクラクラする! 思考回路は完全にショート寸前だ!

 まさにその時!

 ポトリ……ポトリ……。

 天井から、俺たちの衣服が、まるで雨のように降ってきた! どうやら、数秒遅れて衣服のデータだけ転送されてきたらしい!

「ふ、服!」

「早く着なきゃ!」

 俺たちは、床に散らばった衣服めがけて、我先にと殺到した! しかし、パニック状態の中だ。まともに自分の服を探せるはずもなく……。

「きゃっ! それ私のスカートです!」「おいプロデューサー! それアタシの短パン!」「あ、ご、ごめん!」「下僕! さっさとわたくしのドレスを寄越しなさい!」

 服の取り合い、着間違い、慌てて着ようとして転びそうになる……まさに地獄絵図、いや、別の意味で天国絵図……? 狭い石室の中は、さらなるカオスと、ヒロインたちの悲鳴と怒号、そして俺の鼻血で満たされていた……。

 ……幸か不幸か、この世紀の大ハプニングを目撃した者は、俺たち以外には誰もいなかった……はずだ。たぶん。きっと。お願いだからそうであってくれ!


 あの後、俺たち『セレスティアル・ノート』は、互いに視線を合わせるのも憚られるような、最高に気まずい空気の中で、なんとか自分の衣服を身に着け、人心地つくことができた。……まあ、俺の鼻血はしばらく止まらなかったし、ヒロインたちの顔はリンゴみたいに真っ赤なままだったが。

 俺たちが転送された場所は、幸いにも王都の旧市街にある、今は使われていない古い転送ギルドの建物の一室だったようだ。人通りはなく、あの破廉恥極まりないハプニングを目撃された心配はなさそうだ……と信じたい。

 建物の外へ出ると、そこには圧倒的な光景が広がっていた。辺境の町トルンとは比較にならないほどの規模と活気。石畳がどこまでも続き、美しく装飾された石造りの建物が軒を連ねている。空には、馬車のような乗り物や、鳥のような形をした小型の飛空艇が飛び交い、道行く人々の服装も、トルンで見たものよりずっと洗練されている。様々な種族が共存しているのは同じだが、その数も種類も桁違いだ。これぞ、アークライト王国の首都!

 そして、街のどこからでも見える、ひときわ高くそびえ立つ白亜の王城と、その隣に建設された巨大な円形劇場――あれが、最終決戦の舞台となる『天空劇場ソラリス』か! その壮麗さと威容に、俺たちはしばし言葉を失い、見上げていた。同時に、あの場所で大神官長アルテミスと対峙するのだという現実が、ずしりと重くのしかかってくる。

 さっきまでのハプニングの気まずさも吹き飛ぶほどの、決意と緊張感が、俺たちの間に再び満ちてきた。

 俺たちは、審査委員会から指定された宿舎へと向かった。それは王都の中心部にある、貴族の邸宅を改装したかのような、非常に豪華な建物だった。あの安宿とは雲泥の差だ。ふかふかのベッド(今度こそ一人一つ!)に、専用のバスルーム(!)、そして美しい調度品。……正直、落ち着かない。

 ロビーでチェックインの手続きをしていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「あらあら、随分とご到着が遅かったようですわね、セレスティアル・ノートの皆さん」

 振り返ると、そこには『レーヴ・ロワイヤル』の三人が、優雅にティーカップを傾けていた。彼女たちは通常の移動手段で、とっくに到着していたらしい。その服装も、長旅の疲れなど微塵も感じさせない、完璧な状態だ。

「道草でも食っていらっしゃったのかしら? それとも、何かよほど恥ずかしいハプニングでもありましたの?」

 ロザリアが、探るような視線で俺たち(特に妙にぎこちないヒロインたち)を見ながら、嫌味たっぷりに言う。……まさか、あの転送事故のこと、知ってるわけじゃ……いや、そんなはずはない!

「……貴女たちには関係ありませんわ」セレネが、冷たく言い返す。

「ふん! 最後はアタシたちが勝つんだからな!」ミャオも負けじと睨みつける。

 最後の決戦を前に、両チームの間にはバチバチと火花が散っていた。

 俺たちは、ライバルとの遭遇でさらに気を引き締め、宿舎内の会議室に集まり、最後の作戦会議を開いた。テーブルの上には、『天空劇場ソラリス』の見取り図(ギルド経由で入手したものだ)と、アルテミスに関する(少ないが)情報、そして……俺が転送中に書き上げた、新曲の楽譜が広げられている。

「これが……俺たちが最終審査で歌う、新しい曲だ」

 俺は、楽譜をメンバーに見せた。タイトルは『オーバーライト・フューチャー』。

「……すごい……」リリアが、楽譜に描かれた旋律と歌詞を見て、小さな声で呟いた。「なんだか……力が湧いてくるような……希望の歌……」

「へぇ……プロデューサー、やるじゃん!」ミャオも、珍しく感心したような声を上げる。

「……確かに、これは……」セレネも、赤い瞳を細めて楽譜に見入っている。「希望……そして、運命に抗う強い意志を感じますわね」

「…この歌には、特別な力が宿っていますね」ルナも、静かに、しかし確信を込めて言った。「星々が、祝福しているようです」

 ヒロインたちの反応に、俺は安堵し、そして興奮を覚えた。この曲なら、きっと届く!

 俺は、改めて最終決戦の作戦を説明した。

「最終審査のパフォーマンスで、俺たちはこの『オーバーライト・フューチャー』を歌う。これは、単なる歌じゃない。俺たちの想い、絆、そして未来への希望を込めた、アルテミスの闇を打ち破るための力だ!」

 俺たちは、アルテミスが仕掛けてくるであろう妨害や攻撃を予測し、それに対するカウンタープランを練った。ミャオの前衛、セレネの魔法、リリアの歌による支援と浄化、ルナの結界と予知。そして、俺の指揮と、いざという時のためのスキル活用。全ての力を結集し、パフォーマンスを完遂させながら、アルテミスの野望を打ち砕く!

「これは、俺たち『セレスティアル・ノート』の、アイドルとしての、そしてこの世界を守るための、最後の戦いだ!」

 俺の言葉に、ヒロインたちの瞳に、決意の炎が燃え上がった。転送ハプニングの気まずさなど、もうどこかへ吹き飛んでいた。俺たちの心は、完全に一つになっていた。

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