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異世界ハーレムプロデュース〜歌と魔法とサバイバル!?問題児だらけの育成計画〜  作者: 大川とら
第二章:激闘! 忘れられた神殿 ~絆と覚醒、そして密着!?~
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第二章-1

 第一次審査の祝勝会の興奮も冷めやらぬまま、俺たち『セレスティアル・ノート』は、第二次審査の舞台となる「忘れられた神殿」へと向かうことになった。早朝、まだ薄暗い中、トルン町のギルドで手配してもらった乗り合い馬車に揺られていた。他の乗客はおらず、狭い車内は俺たち四人だけで、それでも少し窮屈だった。

「うへぇ……狭っ苦しいな……」

 俺の隣に座るミャオ・フェリダーニャが、不機嫌そうに尻尾をパタパタさせながら文句を言う。彼女の猫耳が、時折俺の肩にコツンと当たる。その度に、なんだか妙に意識してしまった。

「仕方ありませんわ。辺境の町でこれ以上の移動手段を望む方が酷というものです」

 向かいの席で、セレネ・フォン・アビスゲートが優雅に(見えるように努力して)足を組んでいる。しかし、時折馬車が大きく揺れるたびに、彼女の膝が俺の膝にぶつかり、その度に冷たい視線が飛んでくるのが怖い。

「あぅ……少し、酔ってきました……」

 セレネの隣で、リリア・ヴィリディエルが青い顔をして口元を押さえている。彼女は乗り物酔いしやすいらしい。

「大丈夫か、リリアさん? 少し窓を開けよう」俺は彼女を気遣い、ガタつく小さな窓を少し開けて外の空気を入れた。リリアは感謝するように小さく頷いた。

「さて、改めて第二次審査について説明するぞ」

 俺は、ギルドで仕入れてきた情報をまとめた羊皮紙(俺が書いたメモだ)を広げた。

「舞台は『忘れられた神殿』と呼ばれる古代遺跡。課題は、遺跡の最深部にある祭壇に制限時間内に到達し、そこで『勇気』をテーマにしたダンスパフォーマンスを行うことだ」

「ダンス! よっしゃあ!」ミャオの目が俄然輝きだす。

「ただし、道中には危険なモンスターが多数徘徊し、古代の罠も仕掛けられている可能性が高い。戦闘も避けられないだろう。パフォーマンスの質だけでなく、そこに至るまでのチームワーク、戦闘への貢献度も評価対象になるそうだ」

「せ、戦闘……ですか……」リリアの顔が再び曇る。

「フン、古代遺跡……面白そうですわね。失われた魔法の知識が眠っているかもしれませんわ」セレネは、戦闘よりも遺跡そのものに興味があるようだ。

 やる気満々の奴、不安な奴、別のことに興味がある奴……。本当に、このチームは個性の塊だ。だが、第一次審査を乗り越えたことで、以前のようなバラバラ感は薄れ、不思議な一体感が生まれつつあるのも確かだった。

「とにかく、今回はミャオのダンスと戦闘能力が鍵になる。だが、全員の協力が必要不可欠だ。気を引き締めていくぞ!」

「「「はいっ!(おう!)(フン)」」」

 それぞれの返事と共に、馬車は森を抜け、やがて巨大な石造りの建造物の前に到着した。

 そこが「忘れられた神殿」だった。

 蔦に覆われ、風化が進んだ巨大な石壁には、見慣れない模様がびっしりと刻まれている。入り口は、まるで巨大な獣の口のように、ぽっかりと暗い闇を開けていた。周囲には、俺たち以外にも数組の参加者チームがいたが、皆、その遺跡が放つ、荘厳でありながらもどこか不気味な雰囲気に気圧されているようだった。

「うわ……なんか、ヤバそうな雰囲気だな……」ミャオがゴクリと喉を鳴らす。

「……空気が重いですわね。強い魔力の残滓と……長い年月の淀みを感じます」セレネが周囲を警戒するように魔力を探る。

 俺は松明に火を灯し、セレネにも魔法の光球を出してもらった。そして、深呼吸を一つ。

「よし、行くぞ! 遅れるなよ!」

 俺を先頭に、『セレスティアル・ノート』は、暗く、冷たい遺跡内部へと足を踏み入れた。

 内部は、予想以上に広く、そして複雑な構造をしていた。高い天井、太い石柱、そして壁一面に描かれた風化した壁画。内容は、神々のような存在や、異形の怪物、そして古代の人々が何かを祀っているような儀式の様子などが描かれているようだ。通路には、崩れた石像や瓦礫が散乱し、歩くたびに足音が不気味に反響する。カビ臭さと土埃の匂いが混じった、ひんやりと湿った空気が肺を満たした。

「気をつけろ、足元に何か……」

 俺は常にスキル【アイテム鑑定(簡易)】を発動させ、罠の気配を探っていた。床に仕掛けられた感圧式のスイッチや、壁の小さな穴(吹き矢か?)、天井から吊り下げられた不安定な岩塊など、油断すれば致命傷になりかねない罠が、至る所に仕掛けられている。

「リリアさん、そっちは危ない!」「ミャオ、少し右に寄れ!」

 俺の指示で、なんとか罠を回避しながら進んでいく。リリアは、不安そうに俺のマントの裾を掴んで離さない。

 しばらく進んだところで、前方の通路の角から、カサカサという不気味な音と、低い唸り声が聞こえてきた。

「…来たか!」俺が身構えるのと同時に、暗がりから数体のモンスターが飛び出してきた!

 緑色の肌をして、錆びた棍棒を振り回す小鬼――ゴブリンが3体。そして、天井から糸を垂らして音もなく降りてきた、人の頭ほどもある毒々しい紫色の巨大蜘蛛が2匹!

「うげぇっ! 気持ち悪ぃ!」ミャオが顔をしかめる。

「雑魚ですわね」セレネは冷静に杖を構える。

「ひぃっ!」リリアは俺の後ろに隠れてしまった。

「っしゃあ! アタシに任せろ!」

 戦闘となれば話は別だ。ミャオが、待ってましたとばかりに前に飛び出す!

「まずは手前のゴブリンからだ! 『キャット・ステップ』!」

 低い姿勢から、猫のように俊敏な動きでゴブリンをかいくぐり、その懐に飛び込む!

「にゃにゃにゃ! ニャンコ・ラッシュ!」(やっぱりその技名なのか……)

 目にも止まらぬ速さで繰り出される蹴りと拳(爪のイメージ?)の連打が、ゴブリンをサンドバッグのように打ち据える! 一体目を瞬殺!

「ミャオ、右! 蜘蛛が糸を!」俺が叫ぶ!

「見えてるぜ!」ミャオは振り向きざまに高く跳躍し、吐きかけられた粘着性の糸を回避! 空中で体を捻り、そのまま踵落としを巨大蜘蛛の背中に叩き込む!

「次はテメェだ! ゴブリン!」着地と同時に、別のゴブリンへ突進! まるでステージで踊っているかのように、華麗で、それでいて獰猛な動き!

「フン、少しはしゃぎすぎですわね、あの獣は」

 後方で見ていたセレネが、冷静に呟き、的確な援護魔法を放つ。

「『アイシクル・ショット』!」

 ミャオが相手にしていないゴブリンの足元に、鋭い氷の礫が突き刺さり、その動きを封じる! さらに、天井から奇襲を仕掛けようとしていたもう一匹の巨大蜘蛛に対して、

「『フレイム・ダーツ』!」

 小さな炎の矢を連射し、蜘蛛が嫌がる熱で牽制する! その魔法は無駄がなく、ミャオの動きを邪魔しない完璧なサポートだ。

「あ、あの……!」

 一方、リリアは戦いの激しさにすっかり怯えてしまい、俺の後ろで震えているだけだった。「ごめんなさい、私、やっぱり怖くて……何も……」

 だが、その時! 足止めされていたゴブリンが、氷を砕いてセレネに襲いかかろうとした! セレネは別の敵に魔法を放っており、反応が遅れている!

「セレネさん、危ない!」俺が叫ぶ!

「―――っ!」

 その瞬間、リリアが、恐怖を振り払うように、意を決して声を上げた! それは歌というより、強い祈りを込めたような、高く澄んだ声!

「♪~~~!」

 その清らかな響きに、ゴブリンが一瞬、動きを止めた! その音色に聞き入るかのように。

 その一瞬の隙を突き、セレネは冷静に距離を取り、反撃の魔法を放った!

「……助かりましたわ、リリア」セレネが、少しだけ驚いたようにリリアを見た。

「リリア、やるじゃねーか!」ミャオも、ゴブリンを蹴散らしながらニヤリと笑う。

「あ……えへへ……」リリアは、自分の声が役に立ったことに気づき、少しだけ顔を赤らめ、嬉しそうな表情を見せた。

「よし、いいぞ! その調子だ! 連携を意識しろ!」

 俺は全体の指揮を執りながら、スキルで敵の弱点や、隠された罠の気配を探る。「セレネ、その蜘蛛の弱点は腹部の模様だ!」「ミャオ、そこの床、色が違うぞ! 罠だ、跳べ!」

 プロデューサーとしての観察眼と分析力が、この遺跡攻略でも確実に役立っていた。

 戦闘中、壁から飛び出す毒矢の罠が作動! 俺は咄嗟に一番近くにいたリリアを突き飛ばし、自分も床に転がり込む! ゴン!という音と共に矢が壁に突き刺さる。

「いってぇ……大丈夫か、リリアさん?」

 顔を上げると、狭い通路でリリアと折り重なるように倒れていた。彼女の柔らかな体と、甘い花の香りがすぐそこに……!

「きゃっ! だ、大丈夫です! そ、それよりジョージさんこそ……!」リリアは顔を真っ赤にして慌てて離れる。

 やがて、最後のゴブリンがミャオの回し蹴りで壁に叩きつけられ、動かなくなった。最初の戦闘は、俺たちの勝利に終わったのだ。

「へへっ、なかなかやるじゃねーか、お前ら!」

 汗を拭いながら、ミャオが満足そうに笑う。

「わたくしの魔法があれば当然の結果ですわ」セレネは澄ました顔で杖を降ろす。

「少しだけ、役に立てたでしょうか……?」リリアが、まだ不安そうに尋ねる。

「ああ、もちろんだ! みんな最高だったぞ!」俺は力強く頷いた。ぎこちないながらも、互いの能力を認め合い、連携して戦うという意識が、確かに芽生え始めていた。

 しかし、安堵する間もなく、遺跡の奥から、先ほどとは比較にならないほど重く、不気味な気配が漂ってくるのを感じた。壁画に描かれた異形の怪物の絵が、松明の光で揺らめき、まるで生きているかのように見える。

「気を引き締めろ。どうやら、ここはまだ入り口に過ぎないらしい。本番はこれからだ」

 俺の言葉に、ヒロインたちは緊張した面持ちで頷く。最深部の祭壇は、まだ遠い。果たして俺たちは、この先に待ち受ける更なる危険を乗り越え、第二次審査の課題であるダンスパフォーマンスを成功させることができるのだろうか?

『セレスティアル・ノート』の、本当の試練は、まだ始まったばかりだった。

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