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「――ああ、そういうわけだ。
ああ…、ああ…、よろしく」
聞き覚えのある声が耳に入ってくる。
眠気が徐々に覚めていき、寝起きの脳がゆっくりと始動する。
わずかに瞼を開け、視界にうっすらと入ってきたものは、知った顔だった。
「よお、ベン」
リアムが屈んでベンを見下ろしていた。
「お勤めご苦労」
両手にコーヒーを持ち、そのうちの一杯を口にしながら、仰向けで倒れてる彼に挨拶を交わす。
なぜ、居場所が分かったのか、などの疑問は、もはやこの男には無意味だと感じ、訊く気が失せた。
「…遅ェぞ」
「 一人でやるんじゃなかったか?」
文句を垂れるが、軽く言い返されてしまう。
「これ、お前が全部やったのか?」
リアムは周りを見渡し、地面に転がってるギャング達について尋ねる。
「ああ、そうだよ…っと」
ベンは、ゆっくり体を起こすと、窓から陽の光が見え、夜が明けたのだと気づく。
そして、右腕もいつの間にか元通りに戻っており、一時の夢を見た気分になった。
「ほう、是非経緯を聞かせてもらおうか」
呑気に尋ねられたベンは、気怠く応える。
「経緯も何も、ボコボコにされて、疳之虫が使えるようになって、全員シメたって話だよ」
「お〜、ついにデビューか、おめでとう」
棒読みの上に気持ちがこもっていない祝福を受ける。
「ほら、勝利の一杯」
「ん…」
差し出されたコーヒーを手に取り、口にした途端、熱と苦みが同時にやってきた。
「あのさ、砂糖とか無いの?」
「おっと、悪いな」
ポケットからスティックシュガーを取り出し、ベンに手渡す。
「 アイツ等はどうなる?」
ベンは紙コップの蓋を開け、口でスティックの封を切る。
砂糖を全部投入し、再度蓋を閉めて軽く振り始めた。
「ついさっきキャンベルに連絡した。
探し物が見つかったってな。
もう少しで警察が来るだろう」
甘くなったコーヒーを飲み、冷え切った体に染み渡って一息つく。
「それじゃ、その前に撤収しないとな。
しばらくあのオッサンの面を見たくない」
膝に力を入れて立ち上がると、疲労で重くなった体を伸ばし、骨が所々鳴る。
「そんなに嫌ってやるなよ。
素直で面白い奴だろ?」
「オレは、アンタみたいに大人じゃないんだよ」
リアムは鼻で笑い、立ち上がってはコーヒーを口にする。
その時、ベンの頭に血が通い、冴え渡ったからか、ふと気になることがあった。
「そういえば、探し物、って…」
突如、全身の力が抜け、膝がガクンと折れた。
手に持っていたコーヒーは地面にこぼれ、倒れてしまったベンをリアムは動じることなく、ただじっと見下ろしていたのだった。




