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第5話『俯く背中に、今呼び覚ます勇気の力』

希万里と喧嘩してしまった陽菜。陽菜はその事実に耐えられず泣き崩れてしまう。

そんな中、蠢く影があり───

「何かきっと事情があったんだよ………」

陽葵が言った。

「でもさ、あの言い方は無いよ………じゃ無くて!日陽ちゃんにひどいことをした!希万里さんはあんな人じゃ無いと思ってたのに………あんなこと言われたらもう無理だよ………本当はわたしのことバカだと思ってたんだから。しかも私が一番気にしてた『医者になれなかったこと』を!」

「てことはさ。陽菜は1番触れられたくないことに希万里さんが触れたって言いたいの?」

「そうだよ姉さん!わたしだって、頑張らなかった訳じゃな………いや、そもそも高校から既に諦めてたから………頑張ってないのかもね。でもあれだけは無いよ」

「陽菜ッ!」

パンッ───

陽葵が陽菜に平手打ちした。

「なんでわからないの!?陽菜らしくないよ!!」

「姉、さん………」

「陽菜は希万里さんの触れられたくないところに触れたんだよ!あんなに優しかった希万里さんが怒るのってそれくらいしか無いでしょ!?」

「でも姉さんだってそれは知らないんじゃ」

「知らないよ!けどわかるでしょ!?陽菜ならいつも人の気持ちがわかるのに!わからないなら………わからないのにあの言い方はだめだよ!」

「でも希万里さんだって同じじゃん!わたしに対してさ!」

「そうだよ。」

「えっ?」

陽葵の「そうだよ」という言葉に戸惑う陽菜。

「ならなんでわたしを叩いたの。痛かったよ、姉さん………ひぐっ………」

泣き出してしまう陽菜。

「陽菜が冷静さを欠いていたからよ。陽菜は昔、1度冷静さを欠いてたことがあったから………いじめられっ子を助ける助けないでわたしと揉めた時にさ………」

陽葵は寂しそうな表情で遠くを見つめる。

「陽葵さん。叩かなくても良かったんじゃ無いですか?」

「あなたは黙ってて。」

「!?は、はい………」

陽葵に気圧され黙る歌恋。

「それと、そんなに落ち込まないで。陽菜から見れば日陽ちゃんをあんな風にされて怒るのも仕方の無いことだと思うからさ………さっきのは冷静にさせたかっただけ。ごめんね、陽菜。」

「………ぅん。」

陽菜は泣きながら返事をした。

「………っふぅ───歌恋ちゃんだったね。ッ!もしッ!陽菜のことを元気づけられるって言うのならッ!そばに居てあげてっ!わかった!?」

「ふえぇっ!?わかりました………」

「姉さん。もしかして見苦しいところ歌恋に見せちゃって焦ってる?なんか、かわいかったよ姉さん………」

「ご、ごめん陽菜………ちょっと取り乱しちゃったかも。」

「もう姉さんったら。取り乱したのはわたしでしょ〜?」

くすくすと笑う陽菜。

「仲良し姉妹でとてもいいですね………」

2人の様子を見てほんわかする歌恋。


「希万里ねえさん………」

日陽は儀式の準備を手伝っていた。

「日陽。今こう言っても信じて貰えないかもしれないが、これだけはいっておきたい。わたしは日陽を大切に思ってる。」

「あぅ………」

「すまない。だが儀式があんな風に言われるのが我慢できなかったんだ。」

「希万里ねえさんはどうしてわたしのことが大切なの?」

「それは、わたしが日陽のことが大好きだからだ!こんなにちっちゃくて可愛い子なら誰だって可愛がりたくなるだろう?」

「えへ、えへへ………」

笑顔になる日陽。

(日陽はおだてると笑顔になるからな。日陽のことはよーく知ってるよ。なぜならわたしは日陽の───なんだから。)




これは、陽菜が中学一年生の時の話。

「うーん………バブルキングを何回配合してもバブルキングのままか………」

田舎暮らしで、ごく普通に学校に通ってごく普通にご飯を食べて、ごく普通にご飯を食べたりゲームをしたりしていた。

「でも、このくらい強かったらオムド・ロレス倒せるかな?スライムベホマズンだとHPが低いから………うーん………」

陽菜にとってとてもとても楽しい人生であった。

「いってきま〜す!」

「いってらっしゃい、忘れ物しないようにね。今日も頑張ってきてね!」

陽菜にいってらっしゃいを言う母親。


「おはよ〜!」

教室に入り、皆に対して元気よく挨拶をする。

陽菜は交友関係をとても大事にしており、忘れない限り挨拶を欠かさない。

「お、おはよ!」

「おはよ〜。」

「お。」

「月城、おはよ。」

男子4人、小栗(おぐり)悠成(ゆうせい)寺本(てらもと)(じゅん)山田(やまだ)凌平(りょうへい)有岡(ありおか)秀吾(しゅうご)が陽菜に気づき挨拶をする。陽菜はそれなりに人望も厚いため挨拶すれば殆ど返してくれる。

「月城ちゃん。今週の見た?」

話しかけてきたのは、同じクラスの男子の的石(まといし)祥太郎(しょうたろう)

「見た見た!今週もかっこよかった!でもきりやさんやられちゃうなんて………」

互いの趣味に花を咲かせる。陽菜は男の子が好きそうなことでも好きなので男子とも話が合う。

学校でいちばん楽しい時間。友達と話す時間。

「楽しいなぁ………」


それから数日が経った。

「今日は転校生来るんだって!どんな子かな〜?」

嬉しそうな陽菜。しばらく待っていると、女の先生が来た。

「こ、こんにちは!東雲杏恋っていいまふ!は、はわわ噛んじゃった………」

「じゃあ席は………人数少ないから結構空いてますね。」

先生が席を見渡す。都市開発の一端で、田舎の学校のわりに設備が良かった。

「はい先生!ここ!わたしの隣がいいです!」

そう言ったのは陽菜だった。陽菜もそのコミュニケーション能力からクラスの人気者で、みんながそれに同意した。

「よろしく!名前はなんて言うの?」

「陽菜!月城陽菜だよ!こっちこそよろしくね!」

「えっ!………あぁごめんなんでもない!よろしくね!」

杏恋はコミュニケーション能力は普通だったが、愛嬌があり人気者になった。

「杏恋ちゃんは前どこの学校にいたの?」

「あのね、わたし前までは学校に行けてなかったんだ。だから家庭教師で遅れを取り戻してたの。賢いって褒められてたから遅れを取り戻すのはあんまり苦労しなかったけど。」

クラスに編入してくる前は家庭教師で勉強をしていた杏恋。

「俺、的石祥太郎。よろしく。」

「うん、よろしく………的石くん。」

杏恋に自己紹介をする祥太郎。

「的石くんって漢字どう書くの?」

「あぁ、それは───」

ノートを見せる祥太郎。

「これの字じゃ無いんだ。惜しいかも。」

杏恋が書いたのは、『翔』の字。

「惜しい?何が?」

杏恋の言葉に疑問を感じる祥太郎。

「あ………ごめん!なんでもない!こっちの話!」

ぺこりと謝る杏恋。

「あ」

何かを思いついた陽菜。

「もしかして、仮面ライダーWのこと?」

「そう、それそれ!」

陽菜の言葉に、表情がぱあっと明るくなる杏恋。

「でも、陽菜ちゃんなんでわかったの?」

杏恋が聞いた。

「え?いやわかんないから聞いたんだけど。」

きょとんとしたような表情の陽菜。

「あ、それもそうか………ふふっ。」

納得する杏恋。

それから、陽菜、祥太郎、杏恋はだんだんとつるむようになった。祥太郎は男子にも友達がいる。クラス人数は少ないので大体が友達である。

「東雲ちゃんはなんか好きなアニメとかあるの?アニメじゃなくてもいいけど。」

祥太郎もそれなりに杏恋と仲良くなっていた。

「えっと………」

どんどん仲を深めていく陽菜、杏恋、祥太郎。この3人の間では特に恋愛感情には発展していない。

そして、中学の間に陽菜は医者を目指して挫折した。良くも悪くも杏恋と出会ったから。杏恋は母親と関係が悪くなる陽菜の泣く様子を見て謝ったが、陽菜は杏恋のせいなどとは思っていなかった。

そんなある日、陽菜を慰めるために駄菓子屋に行こうと計画を立てた杏恋と祥太郎。陽菜は駄菓子屋に連れていかれた時の一連の出来事で、友達の暖かさを感じていた。




(ッ!頭痛が………)

頭が痛くなり思わずしゃがむ陽菜。

(なにか、暖かさのところに違和感がある気がする………何が?)

「陽菜ちゃん!大丈夫!!!?」

陽菜を心配する歌恋。

「わたしは大丈…ぶ………あ、あ。」

抑えていたものが止まらなくなる。

「うえぇぇぇ………びぇぇぇぇぇぇ!あぁぁぁぁぁぁ!」

泣き出してしまう陽菜。

「陽菜!陽菜!!!」

焦る陽葵。

「どうじでぇぇぇぇぇ………どうじでごうなっぢゃっだの………あぁぁぁぁぁぁぁ!」

人生で初めて人間関係に『失敗』した陽菜。例えいじめられている杏恋を助けた時に疎まれるようになったとしても、親友を助けた結果であるからそれは失敗だと思わない。

しかし今回は『失敗』だと思っていた。何故なら、いじめから杏恋を守った時とは違い、ムカついて口論になったという要素が強かったから。

「陽菜ちゃん!悲しいの?それなら、わたしの胸でいっぱい泣いて?」

陽菜を抱きしめる歌恋。

「びぁぁぁぁぁぁぁぁ!うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「よしよし。陽菜ちゃん。今までがんばっててえらいね。」

「ぐすん………歌恋………」

「陽菜。顔拭こ。」

ティッシュを取り出す陽葵。

しばらくして陽菜が泣き止んだ。

「はぁ………」

泣き止んだが、今度はため息。

「そういえば、みんな何してるんだろう?聞いてみようかな。」

歌恋がLINEグループを開く。萌果、美結、陽菜、歌恋はLINEグループを作っている。

《今、陽菜ちゃんがしょげ中。そっちは何してるの?》

《ABクラスで行動中。グループで固まって希望出していろんなところに回っててね、今ここのゲーセン。》

その文章とともに、萌果から写真が送られてきた。

《それ、さっき陽菜ちゃんと陽菜ちゃんのお姉さんと親戚の子と行ったところ!入れ違いになったんだね。》

返信する歌恋。

「陽菜ちゃん。」

「………うん。」

手を繋ぐ2人。

「ふふっ、かわいい。」

「………んっ。うれしい。」

照れる陽菜。

「………」

短髪がほんの少し風で靡く。

「陽菜。よかったら………あ、ママが家にいるんだった。」

思い出したように何かを言おうとするが、母親が家にいることに気づきしょんぼりする陽葵。

「陽菜も歌恋ちゃんも、2人とも楽しんでおいで。」

「はい!ありがとうございます、陽葵さん!」

「うん、久しぶりの梧村だから楽しむよ。」

陽菜は手を振り、歌恋はお辞儀をしながらその場を去った。陽葵は2人を見ながら手を振る。

「………」

ただひとりその場に残された陽葵は、しょんぼりとした表情になった。


「希万里ねえさん?悲しそうな顔だよ………?」

今は儀式の準備の休憩中。日陽が希万里に心配そうな表情を向ける。

「えっ。わたしの表情が分かるのか?」

「うん………陽菜姉と喧嘩しちゃって悲しいって言ってる。」

「言ってるって………そんなこと………」

「だって、陽菜姉は優しいもん。なかなか喋らない茉希にも一生懸命だったもんっ………希万里ねえさん!希万里ねえさんと陽菜姉が喧嘩したままなのやだよ!」

声をあげる日陽。

「でもな!儀式は………もし何かあった時のためにやっておかなくてはならないんだ!」

希万里は拳を握る。

「希万里ねえさん!お願い陽菜姉と仲良くして!」

「でも………!」

「陽菜姉がいつも言ってた!みんな仲良くしたらにこにこ幸せになるって!」

「ッ………」


旅館の部屋に戻った陽菜と歌恋。萌果と美結はまだ帰ってきていない。

「陽菜ちゃん、だい………大好きだよ。」

歌恋は大丈夫?と出かかった言葉を飲み込んだ。

「うん、ありがと………」

キャリーケースからヨッシーのぬいぐるみを取り出し、抱っこする陽菜。

「あ〜はわわ〜っ。ヨッシーちゃん。もちもちギュ〜ちようね〜。」

もふもふふわふわのぬいぐるみに頬ずりをすると、とても癒される。

「むへへ〜。」

寝転がり、向かい合って寝る体勢のようになる陽菜とヨッシー。

「ふふっ、可愛い。」

「ヨーッシ〜!とーってもかーわいいヨ〜ッシー………ヨッシー!もふ〜〜〜!もふ〜………ん。ぎゅ。」

座って寂しそうにぎゅっと抱きしめる陽菜。

(喧嘩しちゃって悲しいんだ。つらいんだ。)

「陽菜ちゃん。わたしがいるからさびしくないよ………」

後ろから陽菜を抱きしめる歌恋。

「ううっ、さびしいよ………」

「………そうだよね、ごめん。仲良い人と喧嘩しちゃったら寂しいよね。」

「うん。他に誰かがいるからとかじゃ無くて………仲良くなった人がいなくなるのはつらいんだ。小さい頃、飼ってた金魚が死んじゃって悲しくなっちゃった事があって。だから、それから金魚は持ち帰らないしペットは買わないようにしてる。それでずぅっとぬいぐるみをぎゅ〜ってしちゃうんだ。でもね、ひとりは寂しいからやっぱりそのうち別れるとしても友達………人間関係が欲しくなっちゃう。」

「陽菜ちゃん………」

「歌恋………わたし、間違えちゃった………希万里さん………うぅっ。」

ポロポロと涙を流す陽菜。今まで人間関係に失敗したことが無く慣れていないからか、やはり陽菜にとって大切な人と喧嘩してしまうことは耐え難いことであった。

「わたしは陽菜ちゃんのことが好きだから………笑顔でいてほしい。後悔しない選択をしてほしい。」

「………ぅん。」

「でも、喧嘩してすぐに謝るのは難しいかな。ゆっくりでいいから、後悔しないうちにね。」

「ぅん。」

頷く陽菜。と同時にお腹が鳴った。

「ふふっ。お昼食べに行こっか。陽菜ちゃんが決めていいよ。」

「うん………あ、そうだ。」

LINEのトークルームを開く陽菜。

《藤吉芭那って人から、よろしくって伝えておいてくれってさ。》

《びっくりしたわ。芭那に会ったの?》

《うん。友達が怨霊っていうのに襲われてるところを助けてもらって。》

《陽菜も怨霊の存在を知っちゃったのね。陽菜には危ない目にあわせたくないから怨霊だとか陰陽師の存在を知られたくなかったんだけど。》

トークルームを閉じる陽菜。大好きなヨッシーを抱っこする。

挿絵(By みてみん)

「ヨッシー………わたしに勇気をちょうだい。」


「陽菜ちゃん、か………陽葵が妹のことを言ってたのは覚えているが………誰だっけ?」

芭那は額に手をやり考えていた。

「依頼されている事件の調査をしてもいいが、陽菜ちゃんは陽葵のいちばん大事な人だから守りたいんだよね………変死事件がどれだけ被害を拡大するかわからないし………」


「お好み焼き?」

村の近くのとあるお好み焼き屋の前。歌恋が陽菜に聞く。

「うん、わたしのお気になんだ。まあお気にの店なんてたくさんあるんだけど。」

陽菜はヨッシーを抱っこしながら店の外観を眺めている。

「そう。」

店の中に入る。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

女性店員が陽菜たちに聞いてきた。

「2名で。」

陽菜がそう答え、席に案内される。

「陽菜ちゃん、メニュー決めた?」

「うん!この1番でかいやつ!」

「ふふっ、陽菜ちゃんらしいね。」

談笑していると、注文したお好み焼きがやってきた。

「「いただきます。」」

お好み焼きを食べ始める。

「ん〜!ゥンまあ~いっ!!!」

陽菜は満足そうな表情だ。

「ところで歌恋、ここ4から6人くらいは座れそうだけどわざわざ隣に来なくても」

「ちゅ。」

陽菜の頬にキスをする歌恋。

「ひぅんっ!」

「こういうこと♡」

他の客からは見えないようになっているため、陽菜のズボンの中に指を這わせる歌恋。

「あッ……/////」

「流石に店の中だからじらすことしかできないね♡」

「んん……/////はぁ、はうッん………………もうっ!今は食べる時間でしょっ!」

そうは言いつつ、嬉しそうな陽菜。

「ふふっ。」

陽菜はお好み焼きを一口サイズに切って食べる。

「ん、美味しいね。」

歌恋も満足そうにしている。

「歌恋………わたし、希万里さんにごめんなさいを言って仲直りしてくる。」

「うん、それがいいよ。」

食べ終わり、会計を済ませて外に出る。

「こっちかな………」

陽菜は希万里のいる場所におおよその見当をつけてその場所へ向かう。歌恋は無言でそれについていく。


「よし、それじゃ準備を再開しようか。」

「うん………」

希万里と日陽は再び準備に向かう。

「いた!希万里さんっ………」

陽菜が希万里を見つけ、駆け寄る。

「あ、あの………」

「陽菜。なんだよ?」

「ごめ、ごめんなさい………ごめんなさい………」

「それは何に対してだ?」

「何も知らなかったのにひどいこと言って………」

「………」

「………」

しばし流れる沈黙。

「ごめんなさい………ひぐっ………」

今の陽菜にできることは、ただ泣きながら謝ることだけだった。

「陽菜………もういい。顔を上げろ。」

「希万里さん………」

「わたしの方こそ、ごめんな。わたしは儀式には大きな意味があると思っているんだ。星乃家は特別な血筋だと言われているから特にな。でも日陽が嫌がっているのに無理に手伝いをさせたのは良くなかった。日陽………日陽が今いちばんしたいことは何だ?」

希万里は日陽の方を向いた。

「陽菜姉と遊びたい………」

「よく言った。さあ遊んでおいで。親御さんには土下座してでも頼んでおくから。わたしは………日陽のことを大切に思っている。」

「希万里さん………希万里さん!」

陽菜はぬいぐるみと一緒に希万里に抱きついた。

「おおよしよし。かわいいかわいい陽菜。ほら、陽菜も日陽も遊んでこい。きみも、陽菜のことをよろしくな。」

陽菜を撫でる希万里。

「はい!希万里さんももし暇ができたら来てくださいね!」

「あればな。」

陽菜、歌恋、日陽の3人はその場を去った。希万里はその様子を眺めていた。

「日陽にとってはそれがいいんだろうな………星乃家に使命があるというのなら、わたしにも使命がある………」

希万里は少し息を吸い、吐く。

「アレをちまちま燃やしてもいいが、それではまた書き記す者が現れるかもしれない。ならば根本を断てばいくら書物があったとしても意味が無い。これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだから………」

希万里は悲しそうな表情をした。


そして陽菜たちは1日を遊んで過ごした。夜になると日陽は月城家に行き、そこで寝ることになった。陽菜はいないが父、母、姉といるためあまり寂しさは感じていなかった。

陽菜は帰省していることを母には内緒にしているため家に帰ることができなかった。

希万里の説得の甲斐があり、日陽は陽菜と遊んでもいいということになった。

「おやすみ。歌恋、萌果、美結。」

旅館の部屋。消灯の時間になり、電気を消して寝始める。


「陰陽師たちはどう思っているかなぁ………最近は平和だからとうつつを抜かしている?それなら好都合。」

白い着物を着た女が不敵に笑う。

「いひひ………陰陽師たちも踊らされて馬鹿ね………そんなことに意味は無いのに………」


「どうして!どうして!どうして!」

パリン───

夜の闇の中。()3()()が寝静まった時間、皿を割る音がキッチンのある部屋に響く。

「ああああ!痛い痛い痛い痛い痛い!」

キッチンの金属製であろう部分に血の雫が滴り、ボンッというと小さな音が鳴った。

痛さに思わず手に持っていた小さな何かを落とす。血の雫と同じく小さなボンッという音が鳴った。それには小さな刃物がついており、持ち主のものであろう血痕がついていた。

「あぃったっ!!!あああ!!!血が………血が止まらない………痛い…痛いよ………」

声を上げる。

「血、拭かなきゃ………はぁっ、はぁっ………手当てを………」

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