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35. 計画的犯行


 結局私は今日の午後の授業もサボり、逃げてしまった。

 電車を使い向かった先は風間が入院している病院だった。


 「ぷっ、あははははっ!!」


 午前中の出来事を話すと何故か風間は腹を抱え膝をバンバン叩き爆笑した。


 「は、腹イテェ~ヒヒヒッ、何お前、俺を笑い死にさせる気か?」


 「・・・・・・」


 「笑い過ぎてキズ口が開くって、ハハハ~」


 今の話しの何処に笑う要素があるんだ?

 顔をしかめると笑いながら風間が言った。


 「でもお前らしいよ」


 はぁ?


 「女子は皆、そのイケメン研修生に夢中なのにお前は違うもんなぁ~」


 別にイケメンには興味無いと言ったら風間は笑いながら、やっぱお前変だよ、普通の感性持ってないんだよと言われてしまった。


 「変って・・・・・・」


 イケメンに反応しないんなら十二分に変だよ、普通じゃないねと笑いを堪えながら風間が言った。

 

 「変なのは、あのイケメンの方だ!」


 「嫌な感じがするんだっけ?」

 

 「そうだよ、何て言うか近寄りがたいモノを感じたんだよ」


 ムフフと風間がニヤけた。


 「野生の勘ってヤツ?」


 誰が野生だ!


 「そこは直感と言え!」


 もしくは、第六感だ!


 「イケメン研修生かぁ~、学校行くのが楽しみだな~」


 少しウキウキしながらそんなコトを風間が言ったが私の気持ちは真逆だった。


 「私は憂鬱だよ」


 ハァ~とタメ息をついた。

 タメ息だってつきたくなるだろう、ピンクとダークなオーラが漂う教室で授業受けなきゃいけないんだぞ、二つの物質が混ざり会ったら未知の危険物質が生成されそうで怖い。


 風間への見舞いもそこそこに自宅へ帰るコトにした。学校生活でのコトを考えると足取りが重くなりそうだ。あまり考えない様にしよう、考え過ぎて頭痛がする。


 それにしてもあのイケメン研修生から感じるオーラもそうだけど、実はもう一つ気になるコトがある。

 研修生アラン・スミスから匂った香りだ。

 多分、香水か何かだろうが、あの匂いには前にも嗅いだコトがあった。風間と相川を人質に廃工場で大勢の仲間を引き連れた不良達が集まる場所で、助けに入って来た謎の人物も似た様な匂いがした。

 キスをされるというハプニングはあったが近距離で相手に接触したので確かだ。

 あの日の光景を思い出した途端、勢いよく唇を擦って摩擦消毒をした。あんなコト、二度とあってたまるかと入念に消毒を行った。

 あのキス魔、立ち去る前に耳元で呟いていた。


 「また会おう・・・・・・」とーーー。


 同じ香水の香り、武術家特有のオーラ・・・・・・

 研修生アラン・スミスとキス魔は同一人物?

 ただ、同一人物かどうかはまだ少し判断材料が少ない。

 ブルッと全身に謎の寒気が走った。

 何だろう?

 取り敢えず、帰ったら今日の出来事を義理兄にも話してみよう。私一人では消化出来そうになかった。 


 「研修生? 変な時期に入ったんだな」


 「私もそう思う、女子はキャーキャー言ってたし男子はブツブツ呪詛を唱えていて教室内は凄いよ」


 二人分の夕食を作り談笑しながら義理兄に話しをした。


 「怪我で入念してた友達にも話したら爆笑してた」


 今日のこ献立はご飯、味噌汁、焼き鮭、煮物、サラダ等々を作って出した。


 「ピンクにダークなオーラなぁ~」


 義理兄も少し失笑していた。

 私は見たまま、有りのままに話しているだけなんだけど・・・・・・


 「アラン・スミスかぁ~、名前からして外国人だな」

 

 見た目は二十代後半位で長髪の金髪、瞳が珍しいオッドアイだったコト、人相の特徴を知っている事全て義理兄に話した。


 「オッドアイって珍しいな」


 イケメン、外国人、二十代後半男性というワードを口にする度に不機嫌になるも夕食を続ける義理兄だった。


 「確かに珍しいけど、ちょっと変な感じもするから私としては、そっちが気になるよ」


 「変な感じ?」


 私が感じた"変"について義理兄に伝えた。

 むしろコッチの方が本題(メイン)の話しになる。


 「その研修の人から武術特有の(オーラ)みたいなモノを感じるのよ」


 「(オーラ)?」


 まるで義理兄さんや一ノ瀬さんみたいな感じと言うと義理兄は少し黙った。他にはと聞かれたので、香水の香りがしたコトを伝えた。


 「香水ってどんなだ?」


 どんなと言われても・・・・・・


 「多分、花の香り・・・・・・だと思う」


 香水なんて普段使わないから分かる訳ないだろう!


 「ふ~ん」


 お茶を啜りながら何かを考えている様だ。

 でもよく、特徴を色々覚えていたな~と関心しながら呆れられた。


 「だって気になって」


 「容姿より外見の特徴の方が気になる処は、女としてどうなんだかなぁ~」


 顔なら研修生より一ノ瀬さんの方が断然好みだと言ったら目を細めて少し不機嫌になる義理兄だった。

 会話をしながら夕食を終えると時計は20時になろうとしていた。

 キッチンで洗い物を済ませ、私はお風呂場に直行した。


 「ふぃ~・・・・・・」


 今日も一日自分にお疲れチャン!

 肩までお湯に浸かり身体を温めた。


 「休み明けからどうしよ~」


 鼻から下までお湯の中に浸かりながら学校生活で起き得るコトを考えた。ピンクとダークなオーラの中で授業を受ける光景を想像するだけで気だるい。

 相川、泉先輩、風間、義理兄に言われたコトを思い出した。


 「イケメンよ!」


 目の色を変える相川。

 

 「格好良いじゃない!」


 鼻息荒い泉先輩。


 「お前本当に女か?」


 爆笑した風間。


 「容姿より人の特徴の方が気になるのか?」


 失笑する義理兄。

 自分ってズレているのか? 

 いや、そもそもイケメンの定義とは何ぞや?

 顔か? 中身か? 筋肉か?

 お風呂の中で悶々としていると奥の部屋にいった武藤 仁はPCの電源を入れリモートで相手と会話をしていた。


 「それで隊長の行方は掴めたのか、一ノ瀬」


 「色々手は尽くしているけど、余り・・・・・・」


 「そうか、痕跡を消して雲隠れするとは、その辺は流石だな」


 「何か手掛かりが有れば良いんだけど」


 手掛かり・・・・・・


 「そう言えば、蘭から妙な話しを聞いたな」


 「蘭ちゃんから?」


 時期遅れに来た研修生アラン・スミスという人生について調べる様に一ノ瀬に頼んだ。


 「成る程、確かに妙な人物だ、分かった調べてみるよ」


 「出来るだけ急いでくれ」


 「しかし、もしアラン・スミスという人物が隊長だったとしたら、これは計画的犯行だね」


 「もし隊長本人だと分かったら締め上げてやるよ」


 長年共に仕事をしてきた一ノ瀬には分かった。画面越しでも武藤 仁の意思が伝わってくる、腹腸(はらわた)煮えくり返って今にも爆発寸前だというコトに。


 「じゃあ、成るべく早く調べるよ」


 頼んだと言ってリモートをオフにした。

 深いタメ息をついた。


 「計画的犯行かぁ・・・・・・」


 俺の有給消化も計画の内ってコトなのか? 隊長・・・・・・

 

 一方である人物は一室で落ち着かず貧乏揺すりをしていた。


 「どうする、どうする、どうしたら・・・・・・」


 ブツブツと何やら呟やく。


 「金が入ったと思ったのに、もう無くなっちまった・・・・・・これからどうすれば?」


 持っていた缶ビールを荒々しく喉を鳴らしながら勢いよく流しこんだ。


 「ぷっはぁーーー」


 その人物はある考えを巡らせた。何度も何度も脳内でシュミレーションを行い答えを出した。


 「もうこれしかねぇな、これしかねぇんだ!」


 僅かに口元から零れたビールも気にせず、その人物は恍惚(こうこつ)に不気味に(わら)うのだった。

 

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