2話 エウクカプロス
2話から本格的にケモノの国に入るのでケモ描写が増えますが全キャラの服装やら体色やら何から何まで書くと話のテンポが死んじまってとてつもなく読みにくくなるので端折ります、端折ったから全裸でいる訳ではありませんので脳内補完お願いします、自分の好きな服装を着せてあげてください。
アニマディアオンラインのストーリーはこうだ。
アニマディアというケモノ達の楽園の星『リアーズ』
その星に突如として現れた謎の生命体『ザグリス』
ザグリスは鉄のような甲殻を持ち動物の体躯を持つ。
有り体に言えばロボだな、ロボ。
アニマディア達はザグリスに対抗すべく街を作り城塞を築いた。
それは決して1箇所に留まるものでなくリアーズの各地に国というものが組織されていくようになった。
そしてその世界に降り立つプレイヤーは『渡り』と呼ばれ各地を冒険することになる。
というものだ。
サバイバルアドベンチャーなのに『生きた』国があるのはなかなか珍しいと思った、大抵滅んだ都市から残骸探したりするのがサバイバル系の常だしな。
気がつくと龍ことレドックスはポツンと浜辺に立っていた。
左右を見回すと長い海岸が続いている。
足元に違和感を感じる、素足とは違う靴下一枚はいて砂の上に立っているような感触がする。
手を見ると体毛に覆われたそれに肉球。
視線がかなり低く感じる、キャラメイクで90cmに設定したから当然と言えば当然だが…
それはそれとして
「俺は…俺が、アニマディアだ!!」
どこのマイスターだろうか。
まずはマップを確認しよう、他のプレイヤーがいないのも気になる。
(マップ)
少し念じると視界内にマップUIが表示された。
「現在地は…ソロエリア、始まりの海岸ね。
んでこの先にある谷を進んでいくと最初の街があるのか…よし、先に進まなきゃ何も起きないみたいだし行くか、最初の町。」
マップにならって海岸を進むと崖に両脇を挟まれた谷道がある。
目印のように生えるヤシの木を横目に谷道を進む、少し進むと谷肌にぽっかりと大穴が口を開けていた。
何となく手彫りっぽいトンネルって好き、秘密基地感というか…あるじゃん、そういうの。
トンネルを進む、岩壁には爪痕のような跡がついておりこの穴は『誰か』が掘ったものであることを証明しているようだった。
先に光が見えた、不思議と走り出していた、身体を前傾に…手も着き4つ足で駆ける、驚く程に滑らかな動作に初めから自分は四足で駆け回ることが出来るのではないかと錯覚してしまうほど当たり前のように駆ける。
一視界が開ける。
晴れ渡る空に水平線まで広がる海、白い砂浜、レンガ造りの街並みが良く映える。
街の周りにはオリーブ畑が広がる…海の青に浜の白、レンガの赤に畑の緑。
この美しさを言い表せない自分の語彙力の乏しさが歯がゆいな、畜生。
「アニマディアオンライン観光ガイドがあったならトップページなんだろうなぁ…それはそれとしてもしかしてこのゲームキャラメイク時にステータス補正的なのがある…のか?世界観以外も説明書読んどけばよかったな…。」
(ステータス)
ステータス画面を呼び出す、ええと…
項目はレベル.HP.スタミナ.重量.攻撃力.移動速度.抵抗力.クラフト速度
なるほど、多少RPG要素はあるけど基本はサバイバルアドベンチャー…LUCK(運)やVIT(生命力)枠を削ってかなり簡略化されてるように見えるな。
気になるのはクラフト速度だ、この手のゲームでクラフト関連ステータスは大抵高レベルになればなるほど制作物にバフがつくのが常だ、積極的にあげていこう。
んでステータス横、クラフトツリー。
開くとさらに武器.防具.建築.服飾.料理に分かれる。
こーれアレです、ソロでやろうとすると全部中途半端になってオシャレとかそっちまで手が回らないやつです、本当にありがとう(ry
「まだソロエリアだしステータス関連は街に着いてから他のプレイヤーにも聞いてみることにしますか。」
そう心に決め走り出す、4つ足での移動は予想に反して頬で風を感じながら走れてかなり楽しかった…
【ソロエリア エウクカプロス】
街に入った俺の目に飛び込んできたのはケモノ、ケモノ、ケモノ…正しくこの世の天国であった。
中世ヨーロッパを思わせる街並み、レンガ造りの家がメインストリートに連なるように並び露店が軒を連ねている。
往来する住民たちは皆ケモノ、ケモ耳からヨツケモまで数多のアニマディアがそこで生きていた。
そんな中俺は
「あそこで狼のオスケモが鍛冶屋の太眉クマお兄さんから武器買ってる…あっちじゃ露店でフリフリ着た子猫ちゃんがりんごっぽいのを抱えて、あ、ぁ…ウゴゴゴゴゴ」
耐え難い程の感動と興奮の波(限界化)をなんとか理性で食い止めていた。
「やあ、お兄さんこんにちは、お兄さんは見たところ『渡り』っぽいね、ようこそエウクカプロスへ」
急に話しかけられて少し驚きながら声の主を探す、俺のそばにシャツにホットパンツという出で立ちのドーベルマンのお姉さんが立っていた。
獣人、と言った方が馴染み深いだろうか、すらっと伸びた背丈にキリッとした目、それと相対するようにしなだれた耳と艶やかな黒のロングヘアー…服装がそうさせるのかあまりのグラマラスさに本当に18禁じゃないのか本気で疑いかけた。
「こ、こんにちは…お姉さん?
俺はレドックス、ご明察の通り渡りだよ、よろしく。」
「うん、よろしくね。私はアレッサ、まあ案内人ってところかな。
街に来てすぐならまずギルドに行くことをおすすめするよ、ギルドの組合員登録するとギルドで依頼を受けたり外で取ってきた素材を売ったり出来るよ。」
ピコン、というSEと共にマップが表示される。
<施設:ギルドが登録されました。>
教えてもらったスポットは自動でピンが刺されるらしい。
「ありがとうございます、アレッサさん。
この後ギルドに行ってみようと思います。」
「いいのいいの、私この辺で露天の店番してることも多いから何か分からないことがあったら聞きに来てね。」
パチン、という擬音が聞こえてきそうなくらい綺麗なウインクだった、そうだせっかくだしスクショしよスクショ、後でネットに上げよう。
アレッサと別れ地図を頼りに組合に向かう、メインストリートを離れ民家が建ち並ぶ道をぬけ大通りに面する突き当たり、他の民家より2周りほどの大きな建物…それこそギルド、ユーティリティの拠点である。
【ソロエリア ギルド:ユーティリティ】
中に入ると正面に受付、右手には巨大なボードが掛けられておりいかにもクエストボードです。と言った感じだ。
(ギルドと言えばこの雰囲気だよなぁ、受付!クエストボード!酒場!)
そこかしこから「イェーイ」や「ガハハハハ」と言った笑い声が聞こえる、やっぱギルドと言えばこうでないと。
んで組合員登録ってどこでやるんだ?その辺の受付でいいのか?専用の窓口があるのか?受付のチンチラ娘可愛いなぁ、真ん丸で大きな耳が良き…ネズミとは違うおっとりとした表情がたまらんなぁ。
なぁんてことを考えてたら
「おう兄ちゃん、そんなとこで突っ立ってると間違えて踏んじまうぞ。」
と腰には布鎧に胸当てと言ったまさに冒険者的な格好をした虎の獣人に絡まれた、まさしく筋骨隆々って感じのナイスバルクだった…でも顔めっちゃ優しそう、総受けって感じの見た目してる。
「すいません、組合員登録ってのをしに来たんですけどどこでやるか分からなくて迷っちゃってて。」
「そうだったか、新規の登録なら左端の羊の嬢ちゃんの所でできるぞ、ちぃとのんびりだからカリカリしないようにな。なんかあったら聞きこいよ、俺はアッチで連れと飲んでるからよ。」
と長テーブルの一角、ガチムチ狼獣人と大型のヨツケモ、あれは…タヌキ?が座っているテーブルを指さした。
ホントに何でもありだなこのゲーム。あ、狼さん手を振ってくれた。スクショしとこ。
「ありがとうございます、俺はレドックスです、よろしくお願いします。」
「いいってことよ。俺ぁジェムズだ、よろしくな。」
ジェムズと分かれて新規登録窓口へ向かう、眠そうな目をした俺と同じくらいの身長、3等身半くらいの羊のアニマディアが確かにいた。
顔と耳、手先は黒の毛が生えているが白い体毛に垂れ目で眠そうな琥珀色の瞳…頭から生えたツノはクルクルと渦巻きのように巻いておりアクセサリーだろうか、ベルを付けていた。
「すみません、新規の組合員登録をしたいんですけど窓口はここであってますか?」
「ん…あらまぁ、新規さんですねぇ、ようこそギルドユーティリティへ。
新規の登録用紙がこちらになりますので横にあるペンで記入をお願いしますぅ。」
1枚の厚紙のような用紙を取り出して渡してくる、記入要項はさもないな、名前に種族、それと拇印。
記入を終え用紙を受付さんに渡す、受付さんは用紙を慣れた手つきで別用紙に内容を書出し、元用紙を切り出し手渡してくる。
「こちらギルドカードになりますぅ、裏面の拇印が当ギルドを証明するものとなりますので別の国に行った時も身分証として使用できますぅ。再発行にはお金がかかるのでお気をつけくださいませ〜。」
ギルドカードを受け取る。
「さて、これからどうしたものか…初歩的な採取クエストにでも行ってみようかな、それとも街でも回ってみるか…」
(ピコン) アナウンスさんが告げる。
<チュートリアル達成おめでとうございます。チュートリアル突破プレゼントをメールボックスに転送しました。>
え?チュートリアルこれで終わり?クエストのチュートリアルとかそういうのないんだ、そうなんだ…
【マルチエリア ギルド:ユーティリティ】
お、マルチエリアに入った、チュートリアル中はソロエリアだったのね。視界の右下にUI、レベルと体力、あとスタミナかな?
「よし、とりあえずセーブポイントを更新しよう、宿屋は…。」
「あー、そこの貴方、レドックスって名前の貴方よ。」
話しかけられ振り向くと白い獣人の女の子。狼ベースの6等身に全身白ベースの体毛、髪をポニーテールに束ねている。
首元にふわふわのモフ毛のパーツをつけていてモフりたい欲求を刺激させる。
服装はカジュアルな水浅葱色のパーカーを選択しているがチャックを開けており前面が全開となっている。
胸元はスポブラのようなもので隠している、その胸は平坦であった。
下は上着に合わせるように水浅葱色のホットパンツを履いているがZ旗!?Z旗です先生!あーいけません、この人分かってます!!分かってる人ですよこれ!!
靴は明らかに大きいサイズのスニーカー、間違いなくその手の人だ。
後でスクショさせてもらおう。
頭上に名前が表示されていた。
[サギリ]
「えっと…サギリさんでいいのかな?なんでござんしょう…」
「ござんしょうって…貴方宿屋をお探しのようだけど根本的な事を忘れてるよ。」
「え?根本的な事…?」
「えぇ、私もやらかしたのよ…宿屋に行って部屋を取ろうとしたらどうやら私達プレイヤーって初期無一文なのよね。」
「え?マジ?」
「マジよ。」
至って真面目な顔で言い切られた。
まさかと思いインベントリを開く、ギルドカードのみが入った空のインベントリ。所持金の表示には無情にも0の表示がなされていた。
「えぇ…マジじゃん、気付かないで宿屋行ったらホントに赤っ恥…あ。」
やっべ口滑らせた、サギリさんめっちゃプルプルしてるよ、白と薄青色のキレイなお顔が真っ赤だよ…
「その…失敗は成功の母と言いますし…」
「先に謝んなさいよバカ!」
ゲンコツが落ちてきた、1ダメージ食らってしまった。まさか初ダメージが女の子からのゲンコツになるとは予想外だ。
「はい、すみませんでした。」
「ホントよ、せっかく善意で教えてあげたってのに。」
「ごもっともです、はい。」
「はぁ、まあいいわ。話を戻すけどお金が無いからクエストを見に来たんだけど受注料が必要なのよ。
要は1回フィールドに出てきてアイテムを売ってくださいね的なメッセージなのは分かるのよ。」
「どこまでも不親切だなこのゲーム…あぁ、ちょうどチュートリアル明けでさっきの自分と全く同じ行動を取ろうとしてた人を見かけてアドバイスしてくれた、と。」
「そうよ、それなにのアンタほんとに失礼な事を。」
「はい、すみません、ありがとうございます。」
「というわけでアンタ、私とパーティ組まない?ストーリー的に外には敵もいるっぽいしMMOなのに1人で遊ぶのも味気ないじゃない。」
確かにその通りだ、こんなケモナー専用みたいなゲームを一緒に出来る友人は喉から手が出るほど欲しい。断る理由もないしね。
「分かった、パーティを組もう。ついでにフレンドもしちゃっていいか?」
「いいわよ。こんなニッチなゲーム、リアルの知り合いとは中々出来ないし遊べるフレンド欲しかったからね。」
「やっぱそうなるよなぁ、それにしてサギリさんはよく理解っていらっしゃるようで。」
「んふふ、分かる?快活ケモ少女にホットパンツは黄金比よ、まさかZ旗まであるのは予想外だったけどこのゲームほんとチュートリアル以外は完璧ね。
レドックスくん、君も中々だよ…ケモショタに白タンクトップ、そこに麻呂まゆかつ下履かないとかこじらせ過ぎじゃない?下履かないで許されるのはプ○○ンまでだって小学校で教わらなかったの?」
『ふふふふふふ…』
ギルドの一角で怪しい2人組が怪しい笑い声を上げている。それは俺達だった。
この後めちゃくちゃスクショ撮った。
気がつけば昼の時間を過ぎていたのでお互いログアウトし指定した時間にギルドで落ち合う事にした、ちょっと時間あるし掲示板にスクショ貼っとこ。
後にアニマディアショックと呼ばれることになる移住ラッシュが起こることを、今は誰も知る由もなかった。
主人公もサギリちゃんもチュートリアル突破記念アイテムの存在に触れてませんがゲーム内マネーは入っていませんでした、不親切ですね。
2話までは貯め書きしていたので連日投稿しましたが次回からはボチボチ投稿になります。
よろしくお願いします。