コタツバトル
我が家の居間には長方形の大きなコタツが置いてあり、上にはコタツ布団、下には電気カーペットを敷いて、寒い時期はこれで暖をとっている。
その夜。
コタツに入ってテレビを見ていたら、そのままうとうと眠ってしまったらしい。気がつくと見ていた番組は終わり、別の番組になっていた。
と、そのとき。
足の先が突かれるように押された。
――うん?
思う間もなく再び押された。
どうやらこれで目が覚めたらしい。
横では妻が寝ている。
はからずもオレの足が妻がいつも座る定位置に侵入し、それで妻が足先で押し返してきたのだろう。
めんどうくさいと思うが、敵の陣地にあった足を我が陣に撤退させた。
が、それからもしつこく押してくる。
――そこまでやることはないだろう。
オレは仕返しとばかりに、押してくる足をやはり足を使って押し返してやった。
だが敵もさるもの、意地になってオレの足を押してくる。
こうなったら意地と意地のぶつかり合いだ。
オレは負けてなるものかと、それまでにもまして強く押し返してやった。
そしてどうだといわんばかりに妻の顔をのぞき見るに、妻は平然とした顔をして、しかも目は閉じられている。
うまく寝たふりをしているのだろうか。
で、足だけは変わらず動かして押してくる。
――恐ろしいヤツだな。
妻の執念に恐怖さえ覚える。
だが、本当の恐怖はこれからだった。
妻が突然起き上がり、コタツ布団から出て立ち上がった。それから何事もなかったようにスタスタと隣の台所へと向かった。
それでいて、コタツ布団の中では足のバトルが今も続いている。
――どういうこと?
オレあわててコタツ布団をはぐってみた。
それと同時。
それまであった反応が一瞬にして消えた。
そしてこのときオレは、コタツの中で「しまった!」と、小さく叫ぶ女の声を聞いた。
もちろんそこには、何の姿も見られなかったのだが……。