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第九話 少年は地味に強欲である


「ゴードンのことは完全に忘れてたなあ」


 教会をあとにした僕は暗い道を歩きながらつぶやく。


『全然人いないな』


(ああ、みんな寝てるんだろう)


『まだ7時くらいだろ?』


(日が沈んだ後も起きてたら薪の無駄だろ)


『確かに』


(あと...夜は外にでるもんじゃない)


『なぜに?』


(あの子が言ってただろ。夜は魔が支配する時間だ、戸締まりをして家から出入りしないもんだ)


 自分がやらかしてしまったことを思い出して、また気分が少し沈む。


『だから、翻訳してくれないとわからないんだって...って、そっち右!』


 幽霊がわかれている右の道を指さす。


(うん?ああ、お前ゴードンの家わかるのか)


『まあ、あいつのオーラぼわって感じだから』


(というか、そのオーラってなんなんだ?)


『うーん、俺にもよくわからないけど、動かそうとしている部位の筋肉が特に明るくなるからもしかしたら電気信号でも見えんのかなと思ったことはあるね』


(電気信号?何それ?)


『えっと、うーん、脳が指示を送るやつ?正直俺もよくわかってないわ、ってそこの家だよ』


(ここがゴードンの家?)


 なかなかこぢんまりとした家である。

 とりあえず、扉の前の鈴を鳴らし、ゴードンが出てくるのを待つ。


「誰だ?」


 扉の向こう側から低い声が放たれる。


「アンカ村のフィルです」


 そう言うと、扉が開き、見慣れた男が出てきた。


「少年か、こんな時間に何の用だ?」


「ちょっと頼みたいことがありまして」


「依頼か?まあいい、とりあえず入りな」


 家の中へと通される。


『すっげえ散らかりようだな!おい!』


 ゴードンの家は足の踏み場もないほど色々なものが散乱していた。なんとか僕は物をどかしつつ進む。

 ゴードンはどうにか使える椅子を見繕おうとしていた。


 悪魔は目を輝かせてがらくたの山を見つめる。

 その気持ちは正直わからんでもない。僕も見たこともないような物の山に少しわくわくしていた。


 ふと、近くに落ちている絵が目に入った。

 決して上手いとはいえない絵だったが、妙に惹かれる絵だった。


 茶髪の赤子を抱えている女性の絵である。もしかしたら、ゴードンの家族だったりするのだろうか。


「おい、少年、いやフィルだったか。ここ座れ」


 椅子を探し出すのは諦めたようで、木箱を指さす。

 僕はそこに座り込んだ。


「茶はねえぜ、さすがに夜中に人んちを訪ねてくる輩がいるとは思って無かったもんでな」


「すみません...」


「で、要件はなんなんだよ」


「そのですね...ここで働かせてくれませんか?」


 ゴードンが固まる。


「ここで?」


「はい、無理を言ってるのはわかってます。でも、雇ってもらえ得なかったら僕は他に頼れるところがないんです!何でもやりますからお願いします!」


 ここで断られたら真面目に死ぬ可能性があるのだ。正に必死の形相で頼み込む。


「いや、でもここは...」


「体を動かすことならある程度出来ると思います!」


「そこは心配してないよ。でもなあ、うちは何でも屋だ。危険な依頼も多いんだぞ」


「大丈夫です!危険なことならもう体験済みですし!」


「いや、でもお前まだ子供だろ?」


「もう独り立ちしましたし、大人ですよ!」


「んー、まあなあ...」


「お願いです!僕、死にたくないです!」


「...わかったわかった。いいよ」


「本当ですか?」

(やったああああああああ、これで餓死しなくて済むううううう)


『よかったなあ』


 悪魔の生暖かい微笑みを横目にとびっきりの笑顔でゴードンに問う。


「ちなみに僕はどういう仕事をするんですか?」


「そういうことは明日説明してやるよ。だからとりあえず寝させてくれ」


「...ああ、はい」


 僕はもと来た道を引き返し、扉を開ける。


「ふぁ~、ちなみにどこでお前は泊まってるんだ?」


「そうですね、とりあえず今日は...広場のところですかね?」


「待て待て、野宿かよ」


「そうなりますね」


 ゴードンはため息をつくと、がらくたの山を崩し始める。


「俺もさすがに雇ったやつを凍死させるほど冷たくねーよ」


「っそれはもしかしてここで泊ま

「やるよ」


 ゴードンがこちらに毛布を投げてよこす。


「ほら、それは結構暖かいからな、外で寝ても凍死することはないだろう」


 ゴードンの笑顔を見つつ、思わずつぶやく。



「泊めてくれる流れだったんじゃん...」





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