第二十一話 修道女は策謀がお好き
真夜中、少年が去った後の教会で修道女はまだ壁画を見つめ、立っていた。
「嬢さんが人を気に入るなんて珍しいこともあるんですねえ」
後ろから男が話しかける。
長身の痩せた男――ある幽霊が言うにはひょろ男である。
「嬢さんという言い方はやめるように、と前も言った気がしますが」
「そうですか。では、シスt
「嬢さんでいいです」
修道女は男の言葉を遮る形で発言する。
「では、嬢さん。勇者の弧剣なんて渡していいんですか?」
「どうせ、勇者の刀なんて数百本はあります。それを全て宝庫に押し込めておくなんてもったいないにも程があるでしょう」
「確かにそうですね。でもあれを持っていたらあの少年、保護会に目を付けられるのでは?助けた方がいいでしょうか?」
「いや、大丈夫ですよ」
修道女は微笑する。
「そんなことより、報告をしてもらっても?なぜ、南領主のところに潜入していたあなたが盗賊などをやっていたのか、興味があります」
「ああ、そのことですか。私は南領主にある程度信用されてたみたいなんですが、色々ありまして厄介払いされて盗賊やらされてたんですよ」
「子供を攫うという盗賊ですね?」
「ええ、盗賊のやつらは10歳前後のやつなら誰でもいいと思って攫っていましたが、正確に言うと今から丁度12年前に生まれた不思議な力を持つ子供を連れて来い、という依頼でしたね」
「12年前、ですか」
「これは確信犯というやつですねえ」
「南領主は第二の勇者を欲しているというところでしょうか。まあ、それはいいです。問題はこれをどこから知ったかですね」
「周期までを知っているとなると、かなり限られてきますが......南領主の館に帝国人が出入りしていました」
「帝国ですか。南領占領時の記録がまだ残っているのならありえますね。厄介な」
「ですねえ。ちなみに盗賊団は壊滅したんですが、私はまた潜った方がいいですか?」
「いいえ、あなたには新しい仕事があります」
「なんでしょう?」
「アンカ村などの南領の中でも南の方ではまだ空想話が蔓延っているようです」
「空想話ですか?」
「ええ、勇者と大聖女が結婚したとかそういったことです」
「それで、私は空想話をどうすればいいので?」
「抹消してください。特に勇者と大聖女が恋仲だという話、そして――悪魔の話を」
「了解しました。嬢さんはどうするんですか?」
「私は聖都に行きます」
「ああ、あそこは最近きな臭いですからね」
「ええ、ですから」
修道女は不敵に笑う。
「ちょっとした策謀を巡らせようかと」
第二部完です。




