絶体絶命の塔3 魔女VS二人の男・悪党逃走
悪の塔 上層 天空庭園
悪魔大統領自慢の庭園。
常に春の穏やかな気候に調節され
茶を飲むにしても、散歩をするにも
気持ちの良い所でゼフ・アドリエルもお気に入りの場所だった。
しかし今や天空庭園は目も当てられない状態に変わりつつあった。
芝は抉られ、土がむき出しになり、庭園から庭園へと
繋ぐ道路脇の街路樹はなぎ倒されるか、熱や高純度の霊気に当てられて枯れ果てた。
オブジェや施設も例外では無く破壊され瓦礫と化してゆく。
それは丁度この天空庭園の外壁が乱暴に破壊されこじ開けられた時に
今場所の命運は決まったかのように自然な流れだった。
魔女と二人の男の戦闘は即座に始まった。
天馬に乗って来た女は挨拶代わりだと言うように
超高純度の魔力の矢を作り出しそれを放つ。
ブラックスーツの男2人が躱し、挨拶を返すように
特大の飛翔する鉄柱が魔女を襲う。
それが戦闘開始の合図となった。
***
Renee Ripley ルネー・リプリー
眼前に鉄塊が迫りくる。質量、速度、霊量、どれも
叩き落とすのを断念し、回避一択を選択するには十分なシロモノ。
身を捻り、間一髪の所で避ければ
その槍が通った場所の大気がビリビリと揺れる。
これを避けながらこの黒服の二人組と戦闘か…
霊量的に格下だとは思うけれど。
2人がかりなら自分に手が届く可能性も。
白から聞いた。
マザーと白が能力者の男達と戦闘に。
しかし予想を超えて、このスーツの男達は強力で
危うく返り討ちにされかけていた所。付近に潜んでいたベアが横やりを入れて
マザーと白は撤退に成功。しかし今度はベアが逃げ切れたのか心配になった白が
急遽思念を寄越してきたのだ。
大至急向かってみればテリーが加勢して共闘しているし。
しかし悪魔党配下にあの2匹にもこの2人にも手に負えない手練れがいるとは
把握して居なかった。無論その可能性は十分あり得たのだけど、事前調査では
そのような幹部や兵士は見つからなかった。
そもそもが、この悪魔党と言う組織は
優秀な個人と言うのを育てたり、引き上げようとする意識が
そもそも希薄だった。
独裁者の誇大妄想がそうさせるのかも知れなかったが。
理由など知らない。ただ大統領の役に立ち忠誠心の高く、
不安に感じさせない者が
ヒエラルキー上部多数を占める組織。
だからこそ、捨て駒にされることもする事も
躊躇ない軍団が作れたのかもしれない。
この組織を調べている内に浮き彫りになった事。
悪魔党職員と塔の人口の割に…… 余りにも、
異様なほどに高位能力者が少なかったのだ。
優秀なものを見つけ出して
スカウトするわけでも無く、
むしろ警戒、危険視する組織。
独裁や恐怖政治というのはそんなものなのかも知れないが、
自分にはそこら辺の事はよく分からなかった。
兎に角。そういう理由でこのような個人が二人も
存在すると言うのが寝耳に水。白から思念を受け取った時は
驚きであったのだが。
しかし実際に向かってみればこの2人の男と言うのは
以前思念の残骸を構築して見た事がある男達だった。
旧摩天楼派の幹部。
悪魔派とは戦争していたはず…
何故ここにいる?
名は確かジェシーとオジー。
何故塔に入り込んでいるのかは不明。
悪党のもとで働いている? 分からない。
なんにせよ戦闘は既に始まってしまった。
余裕があれば捕縛して何か情報を引き出せるかもしれないし。
それで良い。隙を見て天馬から降り箒に乗り換える。
クラウスにはベア等を回収させこの階層から離脱するように指示。
2人を背に乗せたクラウスを追いかけようとした鉄柱を横から
蹴りをくらわし吹き飛ばす。
未だ消息がつかめない悪党の居場所だが
この二人は知っているのだろうか。
ヘルシティ会戦では君主同盟が既に勝利。
魔防壁も解除され悪魔党は死に体。
一刻も早く親玉の【悪党】を見つけ出して
勝鬨を上げたいのが本音。
そんな魔女と似たような本音を持ったジェシーが魔女の放った矢を回避。
その内2本を消し去り、次の瞬間には
あらぬ方向から矢が出現し、塔の外へと飛んでいった。
空間干渉系スキルを極めている様な奴…
あの可愛い猫ちゃんが怪しいけれど、
それとも、両方が空間魔法を極めてる?
茶髪の優男が転移を繰り返し、
その肩の上では尾が二つに分かれた猫が
魔女を捕捉しようと小さな頭を忙しなく右に左にと動かす。
かなりの技術を要する瞬間転移を楽々と繰り返す男。
自分にも出来ない芸当。背後から大気を抉る様に巨大な質量が
一瞬前までルネーの頭部があった場所を通り過ぎる。
飛び回る破壊の化身のような鉄柱は減速などするものか、
という勢いで旋回。舞い戻り
ジェシーごと貫くような軌道で突撃をする。
そして当たる寸前にはジェシーは難なく猫と共に消え、
鉄柱は男がいた場所を通り抜け
魔女へ戻ってくるというフェイントまがいの戦法も。
この戦い方から鉄柱を操っているオジーが
ジェシーの回避能力に関して絶対的信頼を置いているのが見て取れた。
あの眼鏡の男が操作しているのならアイツを倒せば……
と思うけど、どうにも自動操縦な気がしてきた。
あの眼鏡の男からそれらしき魔力の動きが感じられないのだ。
戦い始めて疑問が湧いて来る。
これほどの能力者だ。テリーとベアが生きていたのはおかしい。
もしその気ならとっくに始末できたはずだ。
手加減していた? 何故?
私たちにとっては幸運だけど。腑に落ちない。
それにあの槍はともかく猫といる男は防戦一方で攻撃してこない。
言いようのない違和感を感じ始める。
……この二人は。
何か隠している。
***
鉄柱が飛翔。暴走するかの如く。
庭園の柱や建物を破壊し、穴を穿ちながら音速に近い速度で
ただひたすらに突撃を繰り返す。
怒涛の勢いで狂奔し自らの意思で動く獣じみた凶槍。
直径50センチ、全長20m。
見た目は鉄塊、かろうじて穂先と言えないでもないような
尖塔のような形の穂先。
槍全体からは火花が散り、歪なノイズのような霊気を発生させる。
銘はオジボルグ。
破壊対象は目障りな魔女。そしてジェシーである。
---銘、メイ:製作者の名、もしくはその作品。茶器や刀剣などの固有の名前。
巨大な鉄柱は執拗に箒で空を舞う
魔女を狙うがことごとく回避される。
魔女と男たちが戦闘を開始してから1分が過ぎようとしていた。
ジェシーとオジーは苦い顔で困り果てている。
戦闘は魔女が現れた瞬間に止めようとしていた。
魔女が放ってきた矢は危険極まりなかったが、それはいい。
直ぐにでも戦闘の意思はないことを伝えたかったし、
その機会はあったはずだった。まずは矢を避けてから……
しかし、オジボルグが暴走。
あろうことか魔女を破壊対象として認識。そしてジェシーまでも!
最大出力で動き出してしまう。
原因は恐らくあの時の黄金太陽フレアに中てられた事。
感知系や対象認識機能が不具合を起こしたらしい。
オジボルグが魔女に突撃し始めた時。
その時、ジェシーは「何をしてるんですか!」
と攻めるような目でオジーを見、申し訳なさそうな
子犬のような目を返してきたオジーを見て何となくいきさつを悟った。
そしてオジボルグが執拗に魔女を攻撃する中、
当たり前のように戦闘は開始され、
事情を説明して信じてもらえる自信は無かった。
2人は連続で自分たちを見舞う不運に心中悪態をつきたかったが。
今2人に出来る事は「死なないように全力で立ち回る事」だけであった。
ジェシーから見てもオジーから見ても
魔女は強かった。
瞬間転移するジェシーを見失わない処か、速度負けせずに
転移術を使い、先読み、先回りまでする。
距離があれば魔力の矢を撃ち、近接戦では杖先から出す衝撃波。
中距離では手の平から昇り立つ霊気がびちゃびちゃと液体に早変わり。
複数の水球を形成。高速でそれを放ち、一定距離まで近づけてしまうと
水のカッターへ変化し炸裂する。更には火の玉の爆弾にも成る。
水魔法が、である。
それ以外の近接戦闘も技術自体が、魔女の魔法よりも
更に危険に思える程熟達していた。
この女を近づけさせては拙いと
ジェシーがオジーを移動させなければならない程であった。
そして戦闘パターンを覚えるのが恐ろしいほど早い。
この1分間でジェシーは自らの戦闘の引き出しを手を変え品を変え、
何とかごまかしていたのだが。
結局殆ど出し尽くさなけれなならなかった。
***
ルネー・リプリー
……強い、手練れの中の手練れ。
スーツの男達を見て思った。
ウチでこの二人と戦えるのはグラム位かな。
他の誰でも無理だ。
私が直ぐに来れて良かった。
このハチャメチャな空飛ぶ鉄柱に匹敵する兵器
は今の所見た事が無いくらい。思念の残骸で見かけたけど。
実際に相対すると決戦級の兵器だと分かる。
摩天楼派の幹部では
特に猫使いの男が厄介そうな印象だったがビンゴ。
昔予想していた通りだ。
しかし自分に対して殺意を持っていなさそうなこと。
攻撃する気が無いことが気にかかる。
どちらかと言うと焦っているようだ。攻撃手段が無い?
悪党が逃げる時間を稼いでいるとか?
いや、どれもしっくりこない。直接聞きだしたい。
しかし戦闘はピークに達しており、
いかに戦いを優位に進めているとはいえ
ここでいきなり会話を始めるような余裕は自分にも無かった。
迷いが発生。本気で戦闘を終わらせに行くか、決めきれない。
更にもう1分戦った。
地面からは鎖が大量に出て来てそれがジェシーとオジーを守る様に動き出す。
更にオジーが腕に持っていた外套を布の盾のように使用し始める。
ここに来てまだ置くの手が2つもあったのか、と思ったが
既にジェシー、オジー共にボロボロ。
2人はまだ立っているものの、消耗具合は隠せない。
このまま行けば捕縛出来る。
そのまま戦闘は続き、途中
ジェシーの腕の中から肩に飛び移ろうとした猫の
隙を逃さず魔女が「見えない魔手」を使用。
三毛化け猫を奪取。
捕まえた猫を黄金の魔力で包み込むと
体を硬直させ借りてきた猫のようにおとなしくなった。
猫を抱きかかえ拘束すると
まるで滝水が落ち緩やかになってあるべき場所に落ち着いたよう
にこの場にいる者が皆足を止め、自然と戦いを止めた。
オジボルグ以外は。
漸く対話できる時間が来たと思いきや、この槍は穂先に
エネルギーを収束させ最後の突撃を繰り出そうといきり立つ。
形状に変化が起こり始めていた、歪になっていく。
はい? ふざけてんの!?
苛立ってオジーを見ると。
「いや、違う違う! 俺じゃないの!」
降参するように手を挙げて声を上げた。
「はぁ!? 何いってんの!?」
と思わず声を荒げる。
舌打ちして即座に左手に魔導書を召喚。
右手を上げ黄金の太陽から
膨大なエネルギーの光を手に集める。
この間もオジボルグを回避。避けるついでに蹴りを喰らわす。
背後の壁から見える黄金の太陽がより
一層輝き庭園全体が眩いほどの黄昏に包まれた。
「あなた達の事は後で決めるとして。コレは壊さなきゃいけない!」
ーやめてぇぇぇぇ!
オジーが焦ったような顔をして何か叫ぶ。
魔女が集まった黄金の輝きを収束させようとした時。
魔女と二人の男、そしてオジボルグその中間の空間が歪んだ。
ポータルでも出現したかのようにその場所に光が迸る。
それと同時にオジボルグが煙を上げ墜落。
地面にゴン!と落ち、転がった。
空間が光った場所に人影。
年季の入った灰緑色の外套につばの大きな帽子。白髪交じりの長い髭。
背の高い魔法使いのような容貌の老人が魔女と二人
と槍の狭間に立っていた。
……その太陽、納めてくれんか、魔女の嬢ちゃん。
眩しくて敵わんわ。
少ししゃがれた厚みのある声。
その姿は魔女が円卓で目にしていた
【賢者】の影によく似ていた。
@@@
「マイ・マニュフェスト1」
スーパーロボット・ビッグゼフは
中層と下層で地面に埋め込まれていた棺桶を
あらかた引き上げ作戦は最終段階に。
一応ジェシーやオジーには兵士に断りのメッセージを持たせ送ったが
伝わっているかは不明。一応ゼフなりに筋を通しているつもりだった。
魔女にだろうが、他の者にだろうが
殺されるのはまっぴらごめん。
そしてあの2人の下につくのも、である。
彼らと敵対する意思はゼフとしては無かったが。
これから悪党の一味はヘル一階層に隠されていたトンネルから
地下を通ってこの塔から逃げる算段であった。
逃げられそうだからだ。
棺桶の中にはぎゅうぎゅう詰めにされた悪魔党職員。
そして動力にする暗い火を埋め込んだ機械人。
棺桶と呼ばれるコンテナ1つに2百人以上が搭乗。
スーパーロボットは地下トンネルに入る為、
1階層へ向かう途中も蜘蛛の魔物やらに出くわすが
ビッグゼフの分厚い装甲を通す攻撃などは無かった。
安心して振り払いながら進軍を続ける。
しかし3階層に着いた時。巨大な魔力反応を複数感知。
それぞれ何階にいるのかも不明。ただ塔内からだった。
ビッグゼフは感知、索敵系機能が弱い。そもそも当たり前だが
隠れた獲物を追い回すように作られていないのだ。
そのため認識できなかったが
最高格の能力者が複数塔内を恐ろしい速度で
駆けまわっているのは理解できた。
何かが起こっているのは確かだった。速く逃げなければならない。
魔女かもしれない。ジェシー達は
【悪党】は【魔女】には敵わないと思っているようだった。
奴らが言うならそうなのだろう。ゼフはこの二人の目利きを信用する。
実際にこの魔力反応が魔女ならば、なるほど確かに敵わないだろう。
それ自体はどうでもいい。
【悪党】は自身が最強でない事も、近接戦闘力に
特化しているタイプでないことも理解している。
そしてこの事実を受け入れているからこそ、勝ってきた戦いがある。
2階層では一軒家ほどもある熊の怪獣が出現。
ビッグゼフに猛追。
怪獣は屈んだビッグゼフと比べても半分以下のサイズであり、
口から放たれる光線は大威力だがB・ZFの装甲は貫けなかった。
それより厄介なのは重力干渉系能力持ちだったことで、
ビッグゼフを押し返し、突き飛ばす力を有していた。
無論ビッグゼフは紙のように飛んではいかない。
それでも軽くされたり重くされたりというのは
スラスターで移動を行うこのロボットに
とっては非常に厄介だった。
ここでやり合わないほうが良いと判断。
散発的に黒い火砲を撃ち込み、怯ませて
追撃を振り切った。
3階層で振り切った怪獣のお次は2階層で
見慣れないヒト型エイリアンの部隊に追われることに。
その中にはメカデビルの装甲を切り裂く個体も存在していて。
これらには肝を冷やした。
しかしビッグゼフの余りにも分厚い装甲を両断することは出来ず、
指を斬られる前に自ら犠牲にして、暗い火のフィンガーロケットを発射。
何とか対処しながら1階層へ。
1階層へ着くころにはこのエイリアン達は
遠くから見守る様に着けて来るだけになり
何処かへ消えた。理由はゼフ達には分からなかった。
そして地下トンネルに直前。天井が一部崩壊。
細長い巨大隕石のようなものが出現。
それは視界に入ったすべての物を破壊する意図をもっているようだった。
コンラッドがオジボルグだと叫ぶ。
動きなどは確かに似ている。変形するのかも知れなかった。
報告の上でのオジボルグですら対処法すら不明だったが、
オジーたちがゼフの返事を得て許すまじ、となったのは容易に想像できた。
とても手が付けられない。
この形態のオジボルグは更に輪をかけて強化されていた。
内包する魔素は巨大。
全身全霊で対象を貫き、破壊する事。
それだけの為に存在するモノのようだった。
何より頼りの暗い火が一切効かない。
当てるだけでも恐ろしく難しかったが当ててもダメージが無い。
ビッグゼフを操縦。ペダルをベタ踏みし、
地下トンネルに死に物狂いで機体をねじ込ませる。
!!!!
コックピットの座席から吹き飛ばされそうなほどの衝撃と揺れ。
後ろから容赦ない体当たり。
もう一度、と言うように一度距離を取って再度舞い戻って来る。
そして今度はビッグゼフの背面装甲を貫いた。
その上満足もせず、繰り返し、しつこく突いて来る。
コックピットに深刻な被害。
コンラッドが負傷。
オヤヂ…
「コンラァァッド!!」
コンラッドは腹にねじ切れたコックピットの破片が刺さり、出血。
目を見開いて天井を凝視したまま、動かなくなる。
返事をしろ、テメェ! おい、コンラァッド!
コンラッドの名を呼びながらも、
ゼフも頭部から血を流していた。
何かの破片が当たったのかも知れなかったが
考えている暇はないほど必死だった。
===ビッグ・ゼフ
Super Robot
Rocket Finger Napalm Palm
Gloomy Fire Dimming Light
Height 30m
Weight 800t




