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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
12章 円卓の勢力衝突・君主同盟VS悪魔党 
81/111

月と審判の魔物・囚人マンフリード



【Moonly Pond】ムーンリィポンド 

大きな月が輝く湖のほとり、この土地の名。

異形が顔を水面につけては離し

つけては離し、と何やらやっていた。


猿のような人間のような顔つき。だったかも知れない。

というのも異形の顔面は歪でボコボコで傷だらけ。

丸い顔の痣だが火傷痕だかも分からない変色した部分があり

見ようによっては月の海に形が少々似ていた。


肌は灰色に近い。

じゃぶじゃぶと顔を洗う様に水面に頭をつける異形の身体は

痩せこけていて、あばらも肩の骨も皮膚のすぐ下にあるかのように浮いていた。

反対に腹は大きく突き出ている。


地獄の餓鬼を連想させるような化け物だった。


それが湖のほとりで一心不乱に水を必死にかき込んでいた。

まるで久方ぶりに飯にありつけた、という具合に。


しばらくすると水筒何杯分の水を腹にかっ込んだのか分からないが、

餓鬼は満足したように倒れ込む。


ばしゃんと水飛沫が舞った。


水深は膝下ほどで、餓鬼は仰向けに倒れ込んで

水面から顔と太鼓腹を突き出して綺麗な月を眺めていた。


餓鬼は頭があまり回っていないのか。

焦点の合わない瞳に口は開けっ放しでよだれが出ている。

それに酷く疲れているようで、そのまま眠ってしまった。


餓鬼はその日不思議な夢を見た。

己が見上げていた月に巨大な黒雲がかかった夢。

いつの間にか黒い雲は鯨に変わって、直ぐにまた雲の形に戻った。

黒雲からは大きな力が溢れ出していた。溢れ出したエネルギーは空から

花火の如く落ちていく。幾千もの光。



視界が夢の映像から目の前に切り替わる。

夢から覚めたのか未だに夢の中なのか餓鬼には分からなかったが

目の前。夜の湖の水辺には輝く光球が浮いていた。


途方もない霊量だった。

何故かは知らないがその光球はきっとあの雲の、鯨の力だと思った。


光球が輝くとふと声なのか文字なのか判別できない情報が伝わって来る。

餓鬼は何となくソレが餓鬼へ話しかけたのだと思った。

そして餓鬼は夢の中で光球と会話した。餓鬼は何かしらの奇跡が自身に起きているのだと確信した。

文字通り餓鬼は夢中になって話す。


ーX*&@#^? 

「オレrr?」


ー(@&#^@*?

「オrhdレ?」


ー*#&%#@@&?

「ワkrnイ」


ー^&%$#

「ク、レ。んmエ、ナマエ! 名前!!」


ーMOON FACE

「ムーンフェイス… 月面…」



言葉の意味は異形はよく分からなかった。

しかしムーンフェイスという響きは気に入った。

こんな格好いい名前等とても貰えると思っていなかったから。


とてもこれ以上に欲しい物などないと思ったのだが段々と餓鬼の意識は鮮明になっていく。

そして欲張ろうと思った。


「俺に、私に、相応しいもの… 私が欲しいものは何?」


何故か流暢に言葉が出てきた。人間の言葉だった。

それに応えるように光球が明滅。


すると餓鬼はたちまち前世で人間だったこと。世界がオカシくなって死んだこと。

死んだはずだのに何故か魔物になってしまったこと。

次々と思い出していく。


そうすると不思議なもので欲しいものが分かって来たような気がするのだ。

意識が鮮明になっていくと、欲しいものもつられるように具体的になった。


堰を切ったように餓鬼は光に向かって願いを言った。


いい終わると餓鬼の体内から勾玉が出現。

深緑色の勾玉に光球が入っていく。すると餓鬼の身体に変化。

餓鬼らしさはほんの少し残ったが。


どちらかと言えば痩せぎすの老人のような体躯のエイリアン。

腹はさらに突き出てもはや臨月の妊婦のようでもあった。


背は2m程。人とそう変わらない。毛は無く手足は細く少し長い。

臨月のような腹は突き出ていて肌は月のような色。

腹からはへその緒のように触手がぶら下がっている。

エイリアンと少し違うのは大きな赤い眼が2つ顔にあること。

顔にあった月の海のような痣は錆色で更にハッキリと目立つ。



月面(ムーンフェイス)の腹。

へその辺りから、へその緒のような触手。

先端が壺型でウツボオカズラのような形。勿論植物ではなく、肉で出来ている。

その触手を持って軽く握りこむと触手の先から霧を噴出し始めた。

辺りを霧が包み月面の目の前には一層濃い霧が漂った。


月面が霧に向かって何か言うと

霧はたちまち消え去った。


霧が無くなると月面は砂浜に穴をほり、その中へと身を沈め

大事そうにカードを体内から取り出して眺めた。


月面の宝物だった。「月」と「審判」のカードはいつの間にか

一つのカードに変わっていた。


カード:「最後の月が昇る日」

大きな輝く月の前に湖。全身血濡れの子供が独りラッパを吹いている。





月と審判の魔物ー月面‐ムーンフェイス

勢力:HARVEST MOON

領土:総LMP  ???




@@@@





「囚人マンフリード」


----マンフリード・アダムス SIDE




ー…きろ! ……おい! 起きろ!


何か固い物でこめかみ上の額を強く殴られて男は目覚めた。


筋骨隆々、上背は185cmを超えており金髪はオールバック

襟足はこだわりで少々長い。しっかりとしたアゴでまつ毛は長い。


もう一度殴られて思わず手が出そうになった、が身動きできない。

身体中が軋み悲鳴を上げている。意識が多少戻った時には

自身が最悪の状況にいることをマンフリードは理解した。


恐らく馬車の中にいるようだった。恐らくでしかないが。

自分がいる部屋が移動していること、自身の身体が揺れていること。

すぐ近くに2人いることだけ分かった。それと

後ろ手に縛られて、頭には薄い布を被せられていること。

目隠しという感じでもない。多少は布越しに外が見えた。


ただ視界は不鮮明で、ぐにゃぐにゃと不安定な世界を見ていた。

目にしっかりと力を入れて集中しなければ

今にも白目を剥いて卒倒してしまいそうだった。


吐き気も有るものの、気にするほどではなかった。

それに別に吐いてしまっても構わない…

いや、布を被せられているのだからやはりマズイと

マンフリードは考え直した。


手には手首から手錠のように。足は腿と足首を縛られ固定されていた。

膝とつま先だけ地に足をつけることを許されたかのように

特殊な革製の拘束具で縛られている。


大抵の拘束具などはマンフリードは破ってしまう自信があったが、

そもそも霊気が身体を正常に循環していない。

力も入らない。拘束具のせいではなく何かしらの薬を注入されたのだろう。

とマンフリードは思い至った。


ゴッ


再度頭部を殴られる。ここで漸く視線を上げると、薄い布越しに

頭部が蛸なのか烏賊なのか見分けがつきずらいミュータント

が銃床で殴りつけていた犯人なのが分かった。

もう一人、それとも一体か。

この連中をどう呼ぶべきかはしらないが

少し獣に近い人間のような化け物もいた。


(2体か…… ダメだ。霊量も上手く量れねぇ……)


間違いなく2体とも自分よりも弱い。少なくとも普段の自分よりは…

そして間違いなく強い、今の自分よりは。

マンフリードに分かったのはそれだけであった。


まだ小部屋は揺れていると思っていたが

目的地に着いていたらしく、立ち上がれと命令されていた。

腿と膝をくっつけられているんだから立てないだろうと思ったが

足の拘束は既に解かれて代わりとばかりに足首同士を鎖で結ぶような錠に変わっていた。

それでまた殴られたのかと少し合点がいった。


馬車から出ると、そこは森の中であった。

暖かな陽光が差し込んでいる。

冷たくなっている右手の指と頬と耳に光が当たっていた。

暖かい。光の持つ熱に感謝するほど体は冷たかった。芯から、

骨から冷たくなっているように感じていた。


まだ早春くらいだろうか。

いや、もはや季節などあてにはならない世界だ。


かじかむような寒さが

このミュータント共の森は秋から冬に近いのではないかと

マンフリードに思い直させた。

ミュータントオリジンの領土の中でもここ最近のこの辺りの気温は

朝から5度、日中の最高気温も精々が11度くらいであった。


薄い布越しに大地を見れば落葉。


へへ、やっぱ秋だ。何だよ、寒さなんか気にしてねぇで最初からよく見てりゃよかった。

囚人は独り言ちる。


無論彼の感じている寒さは霊気の循環阻害などが関係している。

マンフリードからすれば気温程度のことをここまで気にするのは久しいことだった。


要するにこの俺は弱っているのだ。季節や天候などを気にするほどに。

囚われの拳闘士は思った。


服の襟首をつかみ上げられ無理やり歩かされる。

抵抗はしない。してみてもいいが。

これからこの化け物共に何をされるのかも分からない。

いや、むしろ多少抵抗しておくか。そうしよう。

理由はシンプルでこれからこの化け物共に何をされるか分からないからだ。


ついつい少し上がってしまった口角を直ぐに直し、

身体を左右に動かして抵抗する。

直ぐに銃床で殴られる。


(おいおい、そのパターンしかないのか?)

この囚人は不敵にもそんなことを思った。

更に自分から倒れ込んで起き上がらないことを選ぶ。


蛸のような烏賊のような顔をした人型の化け物が溜息をついて

マンフリードの頭に被せられていた布を取り、

ナイフで突如マンフリードの眼を突き刺そうとした!

瞬間的に霊気を左目の眼窩にかき集め霊気の盾を作り抵抗。


「おぉぉ、お! やめ、やがれ。」


小声で言って踏んばる。やばい、やばい、まずい。

冷汗がドバドバとアドレナリンと共に出て来る。

霊気操作が普段通りに出来ない。呼吸がどんどん荒くなっていった。

一歩間違えれば目を潰される。再生能力もどのくらい失っているのかも不明なのだ。

元々再生能力に特化している方でもない。

ネフィリムだった頃から待ちこしてはいるもののそれも不安材料だった。


ーおい、手間をかけさせるなよ?


そう言って立たせられた。今度は素直に従ったが

耳の付け根からナイフで削ぎ落そうと切り付けてきた。

咄嗟に今度は耳の付け根に霊気を集め防御が間に合って少々の切り傷で済んだ。

耳からドクドクと血が流れだす。耳が少し熱い。


思わず心の中で悪態をつく。

(この野郎! いきなり1から100まで行くんじゃねぇ! もう少し段階を踏みやがれ!)


覚えてろよ、この糞野郎! 

心中穏やかではなかったが腹の中で重い歯車が回転を始めた感覚が来ていた。

内臓とは違う動力が囚人の目から光を失わせない。


その後は大人しく従って森の中の開けた場所にまで連れていかれる。

大きな樹があった。

何の変哲もない樹のようにも見えない。幹が変な模様だ。少し迷彩のようになっている。

それに葉が奇妙だった。全て鳥の羽のような見た目なのだ。

それに木の洞うろ。その樹には大きな洞があった。

その前に立たされた。何が始まるのか。

中は闇しか見えない。まるで井戸の底を覗き込んでいるような気分。

洞は下に続いていて数人くらいすっぽりと入れそうだった。


背後にいた烏賊人の横の獣人が何事か呟いた。

後ろを振り返ろうとした時、ふいに背中を押された。

もう少し抵抗してやろうかと

「テメェ」

言いかけようとした時。頭の後ろ

木の洞がある場所から気配。

大きな見えない何かに体が掴まれた。


次の瞬間にはマンフリードは

その場からいなくなっていた。



@@@@





ーーー種の始まりの森


傷つき霊的ダメージを負ったカドゥケウスの眠りは頻度が増し深く長くなっていた。

必然的に聖種ー「SACRED・SPECIES」の主エリー・メイに体の主導権自体が渡ることに。


聖種の本拠地の一つでもある【種の始まりの森】

その一角は塔とも見紛うばかりの大樹が連なり、

広大な屋敷を形成していた。


「聖なる種母の館。」

主だったミュータントの幹部たちはここを住まいとしている。

少なくとも建前上は。というのもミュータントは個性豊か、多様性に富んだ種であり

同じ場所に常にいたい者ばかりではないし、

その他領土の防衛も考えれば当然皆ここに住むわけにもいかない。


そういう意味ではこの城ともいえる屋敷はミュータント達の実家というほうが近かった。



そんな屋敷の中、始祖の広間では当主エリー・メイが部下からの報告を聞いていた。

化け物の見た目は随分と様変わりしていた。

円卓の領主。『恋人』の異名で知られる雌雄一対の異形はカドゥケウスの部分が

萎縮、縮小し特に下半身は

人間の男とエイリアン混じりの物からエイリアンの肌の色合い混じるヒトの女の物になっている。

さらに上半身もカドゥケウスらしき部分は彼の頭部と両腕のみが、それぞれ

頭部が胸部に。乳房の辺りに。両腕が長くなり背中から触手の様に出ているだけに留まって居た。

服装も一枚布をか折り返してピンで留めたような物から比較的多少凝ったものに。


恋人と節制のカードはデザインが変化。

飴細工のような陰陽のオブジェがある背景。

その前に雌雄一対の化け物、片手に剣、片手に杖を持っている。







囚人マンフリード2


____種の恥アンリの繭の森


「うおぉおぉぉ!!!」



落ちている!

真っ逆さまに木の洞の中の穴に!

恐ろしく長い間落ち続けた。

一体どれくらい落ちていただろう。

マンフリードが思わず悲鳴を上げ、叫ぶのを止め。

全身に霊気を纏わせ衝撃に備えようとする程度には

冷静になり始めたくらいで、したたかに地面に背中をぶつけた。


マンフリードはうつぶせに倒れ込んでしまった。

目からチカチカ星が飛んでいるような感覚はあった。しかし違和感が凄かった。

本当の意味で高高度から落ちた感じではない。

落下の衝撃もこんなものですむはずがなかった。


(幻術か、それか何かのギミックか… 分からねぇ。)

悪態をつきながらも周囲を見渡すと真っ暗闇。何も見えない。

少しだけ風が吹いているのは肌で感じれた。何処かから風が入って来る穴があるはず。

光源は無いものの、男は多少の暗視くらいの芸当は出来る。

目に霊気を集中させて凝らす。

そして今マンフリードは木の根がそこら中に蠢いている洞窟にいるのだと理解した。


脱出するため進もうとすると根が動き出して足を掴まえられてしまった。

無理やり引きちぎり逃げる。意外と太く硬い上に根は水を含んでいるのか重い。

素直に壁をよじ登ってあの洞から出ようと考えた時。

途端地面から壁から大量の根が動き出し牢が形成された。

牢は10m四方くらいだろうか。

固い根で出来た格子に触れるとその根が手に絡みつき

霊気を吸い取ろうとした。


「おっ、あぶねぇ! からっからに乾かされちまう。」


溜息をついて座り込む。

少し地面からも違和感を感じた。

地面の下から小さな毛細血管のような根が動き出して

自身の下に移動してきているのだが。マンフリードは原因に気付いていなかった。


マンフリードはただ集中していた。

ここから脱出するための方法を考えるために。





【種の恥アンリの繭の森】


種の恥アンリが囚われ封印されし森。

【種の恥アンリの繭の森】は聖種領土西部を任されたヒュドラ族の管理する

羽の大樹の洞の下にある呪われし森。


ヒュドラ族:ミュータント・オリジンの爬虫類系ミュータントの一族。





月の海:月面の黒い部分

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