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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
12章 円卓の勢力衝突・君主同盟VS悪魔党 
80/111

80話 解き放たれた男達・天馬と吸血鬼狩り


「解き放たれた男達」


悪魔党 ヘル 悪の塔


吸血鬼狩りと天馬がパパラッチの秘密工作員をつけまわしている間。

風鈴が1階層と3階層の隠れ家の完成を告げるも、マリオとジェイソンが

ANKH・Oの襲撃に会い負傷。トニーが独り隠れ家を預かることに。


魔女ルネー・リプリーは4階層壁際のボロ屋にてANKH・Oの白狼と対話へ。



蜘蛛や鳥獣、機械人が暴れ回り激突し阿鼻叫喚となった塔内1~3階層。

3階層から4階層に向かって視認できないほどの速度で飛んでいる物体があった。


ソレは音も無く、滑らかに滑るように、そして音速で移動。


--針尾雨燕--ハリオアマツバメ

white-throated needletail

世界で最も早く飛行する鳥。と言えば隼だが急降下でなく水平飛行はこの鳥だと言われる。

その速度は時速169kmに達すると言われているが記録は非公式だとか。


この鳥の速度の記録などは置いておいて。

今この塔内を飛行するこの個体は確実に魔獣であり、

通常の生物の飛行可能な速度を優に超えていることは間違いなかった。

音もたてずに広大な塔のフロアを周回。大きさ約20数cm強の燕は次々と瞬きをしていく。


燕が瞬きするたびに微かなシャッター音。微弱な魔力の動き。

どうやら情報を収集しているらしい。

スキャンし収集した情報が暗号化された思念に変化し送信されていく。


その思念の行き先を辿ると、塔の廃工場裏手に行きつく。

2人の男と猫が一匹。人気のない場所に居た。


一人はポケットにぶっきらぼうに手を突っ込んでいるスーツ姿の男。

どこかエリート意識を持っていそうな官僚のような雰囲気の40代らしき男。

短髪に眼鏡。


もう一人は明るい茶髪に優し気な顔立ち。

服装は此方もスーツ。30手前くらいだろうか。

そして2つに別れた尾を持つ三毛猫。


官僚風のブラックスーツの男がポケットから手を出すと小型の機械。

機械の横からアンテナを手動で男が伸ばした。


サイズはスマートフォン程度だが携帯というには

余りにも分厚いソレはミニPCと呼ばれるものに似ていた。

ただし通常のミニPCよりも更に小型である。

その機械から伸びたアンテナが思念を受信。


受信し終わると三毛猫がタタタと何歩分か駆けてから岩の上にぴょんと飛び乗った。

くるりと二人のほうへ向き直り、腹を出すように座りながら尻尾を動かし、

岩の中を見つめるように顔を下に向けた。


「OK。受信完了。大体必要な情報は分かったけど…… ねぇ、ジェシー。本当にやんの?

何かタイミング悪い気がすんだけど。」


三毛猫が背中を下に向け小さな頭を岩肌にこすりつけてくるんと腹を見せた。

猫の腹を撫でながらジェシーが言った。


「まぁ、デッドマンと手も切れましたし。それに3Faithさん。

あの人が本当にいなくなったのなら…」




ー我々はもう自由ですから。







@@@@


救いの塔(悪の塔)


クラウス・ローゼンベルグ



塔の階層を行き来する手段は2つある。


一つは各階層に複数ある巨大な柱。

それのどれか一つがエレベーターとなっていてそれに乗る事。

もう一つは階段である。階段は2種類。


螺旋大階段と非常階段である。

螺旋大階段は幅がありそして長い。


螺旋階段の方はチェックが甘い。

非常階段は場所もまちまちな上に厳重な身分証と通行パスのチェックがある。

かなり厳重なために魔女たちも非常階段は通らない。



因みに私は今町はずれの一軒家から引っ越して

塔2階層の高級アパートメントに住んでいる。


……漸く、漸く一人に成れた。

そして一人は… 最高だ!


レジスタンスの奴らともう朝から関わらなくて済むと思うと…


最高だ! と叫びだしたくなる。


我ながらなんて内向的な奴なのだ、と呆れてしまうのだが仕方ない。

だってそう生まれついたのだから。それに今の私は絶好調!


「ヒヒヒ、力がみなぎるぜぇ…」


思わず言葉が、気持ちが、声となって口から出てしまう。


視界の端に中か映り

バッと横を向くとご近所さんがギョッとしたような顔でこちらを見ていた。

普段なら赤面してしまうところであるが今の私はこんなものでは動じない。


ケッ、そんなもんかよ。ってな感じだ。ヒヒ。

不敵な笑みを隣人に向けて、あふれでる余裕と共に挨拶。


「どうもぉ⤴?」

「あ… どうも… 朝早いですね…」

「あぁー。たまにね。朝早いんですよぉ⤴ 能力がね、そういう感じなので… ねぇ?」


ぶるぶると震えてササーと隣人がアパートの中へと入っていく。

ちょっと驚かしてしまったかな? 変なテンションで申し訳ない。

いやぁ、しかし気分いいね。一人って最高!

心の中は雲一つない快晴。

「さぁて、今日も朝の配達にちょっくら行ってくるか!」


アパート前の通り、暗い塔の天井を見上げながら

そう思った時であった。


襲撃警報が鳴り響いた。


やばい! また魔物の軍団に対抗するために機械兵たちが出動する。

全身に緊張が走った。非常事態になると…


ピピピピ


連絡が来るのだ。魔女から持たされたトランシーバーらしきものを手に取る。


「はいぃ、もしもしぃ⤵…」

ーザー、ザー、此方コナー。 おい! クラウス。俺が指定した地点まで行け!

マジでちと急いでるからな。質問は後にしろ。


コナーがそれだけ言って通信を切って来た。

大丈夫か? トランシーバーのボタンを押すと思念が伝えられた。


---思念

3階層の空き地の奥の簡易アジトへ! 岩山のアジトからは行くな。ベアという女と合流しろ 

それとお前の予想が当たってた! パパラッチどもは塔の秘密警察やその協力者たちだらけだった! 奴らの一部が突然逃げようとしている、恐らく何かあった! 俺らはパパラッチを追跡する!

PSアジトのポータルは使うな。

---


ベア? 誰だそれは。 予想が当たっていた? パパラッチは党のエージェント?

え? そんなこと言ったっけ? 

適当いっただけかもしれない、覚えてないけど…


兎に角3階層に向かわねば。えーと後はアジトのAポータルを使うな? 

ふざけんな! 何のための装置だよ! 思わず何もない場所を蹴飛ばすように足を振る。

険しい表情で横を見るとアパートの入り口から違うご近所さんと目が合った。


神速で目を逸らされた。今度は少し私の心に効いた。


もういいや。

それよりもパパラッチのことだ。そうだ、この塔が何故パパラッチなぞの存在を容認しているのか。

案外秘密警察やその協力者だったりして、などと言ってたいたのだ。

まさか本当だったとは…

まぁ、影響力ある個人を監視できるし、写真などさして金になりそうでもないのに。

生活できる方が不自然であるし。その間塔の仕事をサボってて許されているのもだ。


あ、そうか。金に関しては普通の写真程度のは売りさばいて、やばいものは買い取らせるのか。本人に。それじゃ脅迫だ。しかし影響力ある個人を不良やギャングが好き勝手に脅迫するなんて塔が許すはずがない。いや別にそもそもしていないかもしれないけど。


って歌い手なぞ大した金など持っていないはず、この塔内で金儲けなどおおぴらには出来ない。

ん?

金じゃないということは弱みを握って? そして用意したトレンドや思想に乗っからせるとか?

そんなこと党はしてるっけ? 塔のメディアなど見ないからよく分からない。


もう頭がこんがらがって来た… 

私の頭は適当に言ったことがどう当たっていたのかなどと

推理し続けられるようには出来てないようで。なので。


まぁいいや、こんなことどうでもいい。思考を来年の最も正月辺りにまで投げ捨てておく。

クリスマスでもいい。どうでもいい。

兎に角秘密警察か何かだったんだろ。


それよりあいつら急すぎるし無茶苦茶すぎる。ええと、どうしよう。

正面から3階層に上がるには大階段だな。普段なら荷物と一緒に通っていけるが…

警報が鳴っている間は荷物無しでは怪しまれるだろうな。無理だ。

マリオの光学迷彩クロークを借りるか。


アイツが潜入中の賛美歌を歌うグループがたまに使うライブハウス。

まずはそこへ向かう。

ライブハウスは2階層の中心街から少し外れた場所。

到着して直ぐに裏手に回り合鍵を使って中に入る。

警報が鳴っているし、人通りは無かった。見回り番も見ていない。

恐らく誰にも知られずにここまでは来れたはず。


朝。施設内は無人。

舞台裏にある衣裳部屋のようになっているカーテンのみで仕切られたスペース。

その中に黒い布で覆われた箱に親指の指輪を近づける。この指輪がカギなのだ。


指輪から真珠のスプーンのようなものがシャキンと飛び出すとスプーンの丸い部分が親指の指の腹部分に合わさる様に装着された。


箱の蓋の錠に楕円形のマークがありそこに親指を合わせると魔力紋が認証され

レジスタンスの掛けた封が解けるようになっているのだが……


楕円形のマークが無い…

どころか箱を覆っている布の下には蓋すらない!


マリオ… あいつ何考えてんだ。なんの錠もかけていない…

またどうせ高を括ってたんだろう。

後で魔女にチクってやろうか迷う所だが、今はそんな場合では無かった。


以前あいさつした時に返事もせずに舌打ちで返してきた神経質で子供っぽいくせにガサツで怠け者で小物のおっさんであるマリオに対する小さな復讐には丁度いいと思ったが心の中で却下。

でも機会があれば絶対魔女に告げ口しておこうか。

結局その意思は私の中からは消えなかったのだ。


溜息をつきながら迷彩クロークを直ぐに着用。

しつこくジェイソンと提案して目の部分にメッシュの迷彩生地を付け足してもらった。

それを下ろす。これで目の部分だけ見えやすいとかが緩和された。

因みに改良するのは恐ろしく簡単。


今度は急いで施設から3階層に続く大階段へ。

街中はジリリリと警報が鳴っている。物々しい雰囲気。

機械人以外の市民は大方地下シェルターへと避難したのだろう。

殆ど見かけない。


大階段へと姿を消しながら駆けていくと何かが蠢いている。

何だ? 天井付近から建物の屋上。そこかしこに。

私以外にも姿を消している奴らが…


階段周りにいた機械人の集団がいきなり爆発!

けたたましいサイレンと共に

耳を覆いたくなるほどの爆発音が響き渡り空気を揺らした。


瀕死の機械兵の一人から黒く細長い腕が出て来て腕を振り回し始める。

やばいやばいやばい!

半分体から骨の馬の脚を出してほんの少しだけ天馬に変身。

殆ど馬でも何でもない正体不明な生物になるが足は速くなる。

急いでここから離れるために階段を駆け上っていく。


暗い火が爆発。


一瞬周囲が真っ白に、いや真っ暗になった。

暗い火が爆発する時の特徴。白い閃光がすぐに黒に飲まれるようになる。


目がチカチカする。

転びそうになりながら走り抜けていく。無理だった! 転んだ!

心臓が飛び跳ねて、息が上手く出来ない。

後ろを振り返ると蜘蛛の化け物達…


魔女たちが噂していた化け物の軍団が塔内に入り込んできていたのだった。

大階段の上から足音。

機械兵の大部隊と共に爆弾機械獣たちが現れた。

ヤバい、このままじゃ巻き込まれる! どうする? どうすればいい?


その時2階層天井から吊るされてる街灯が動いたのを見た。

眩しくてよく見えなかったが、誰かが天井からこっちへ飛び降りて来て…

そこで…


私の意識は落ちたのだった。





ーおい、おい! 聞こえる? 起きろー!


目を開けるとぼんやりと視界の中に女の顔があった。顔が近い。

何か話しかけられていたが、上手く頭が回らない。

「あそこで私は…気を失って、今目を覚ました?」


ーようやく意識が戻って来たね! 私はベア。ベアトリーチェ。

アナタがクラウスでしょ? 


目覚めた時に私の目の前にいたのは、

顔立ちは猫っぽさと犬っぽさ両方併せ持ったような美人。

何処か飄々とした雰囲気の女で茶色の外套に黒いパンツにブーツという恰好をしていた。


周りを見渡すと自身が知らない家のリビングのソファに寝かされていることが知れた。

部屋は暗く光源が蝋燭の炎しかなく

女の顔の陰影が炎のオレンジの灯りに照らされてチラチラと揺れていた。


ええと、あれこの女の名前何だっけ。

俺としたことが美人の名前を即忘れるなんて…


「ええと、俺はクラウス… アンタは…」

「うん、ベアトリーチェ、ベアでいいよ。コナー達から話は聞いてる? エデンから来たんだけど。

まだ意識がハッキリしてないならもう少し休んでてもいい。」


「ああ、今俺は何処に? エデン?」

「4階層のアジトだよ。この塔に時間をかけてられなくなって来てるかもしれないから。

中から引っ掻き回す作戦はもういつ本格的に始まるか分かんない。え、エデン知らない? じゃあ後で教えるから。今はアタシと行動してもらう。OK?」


大人しく頷く。するとベアが机の上にあるファイルを取って見せてきた。


「何だそれは?」

「一応ボスから頼まれてた仕事。あなたに関わる事。」


はい、自分で読んでおいて。と言われファイルを渡された。

ファイルの中に入っていた資料の中には。


・クラウス・ローゼンベルグ妹家族死亡確認。

・スナッフシティから本塔へ行った元近隣住民全て死亡もしくは行方不明。

・片思いしていた女性の名もあった。

報告書では行方不明。恐らく死亡。


何一つとして良いニュースなど無かった。肩の力が抜けた。

このレジスタンスが俺に覚悟を決めさせるためにこんなレポートを作ったのでは?

等という考えも浮かんだが。そこまでの価値は俺には無いことなど分かっていた。

それに俺は十分協力的だ,。


まだ目覚めたばかりで意識がボーっとしているせいか全く落ち込まないし、別に悲しくも無い。


ただ涙が一筋、ツーっと流れ落ちる程度に溢れていた。

何か疲れたなぁ。めんどくさいし。もうレジスタンスとかはいいかな。

別に復讐とかもする気も無い。一番助けたい人達はもう居なくなっていた。

もう別に何も。特にしたいこともないしな。兎に角……

もう疲れた。


涙を服の袖で拭いてベアを見ると彼女はリンゴを齧りながら家の窓の方を見ていた。

見ないようにしてくれているらしい。

茶色い髪。白い肌。銅色のアンバーの瞳。綺麗だなと少し見惚れた。

別に惚れては無いが。

目が合うとベアが『いる?』と果物かごからリンゴを出した。


あちらも少し気まずそうだ。

別にリンゴ何て食べたくないけど。


「うん貰う、ありがとう。」


適当な話をしてその後すぐに互いに押し黙った。


もう十分協力したし、塔内でやっていた様に荷物運びでもして生活できないかな。

塔からは出て… 魔女たちの所に行って…

どうやって頼もうか、交渉して。切り出そうかな。

考えていると、またベアが口を開いた。


「もうやる気なくなっちゃったみたいだね。」

「まぁそうだ。」

「復讐は?」

「全然する気が起きない。それに誰に? 個人ならまだしも…」

「好きにしたらいいよ。たまには断れない依頼、要請も来るかもしれないけど。

ウチにいるならね。」


「それとあなたにこの報告書にあった女性について聞きたいの。」


ベアが真剣な表情になる。


「この女性? 知ってるのか?」

ベアが報告書の中で指差したのは片思いしていた女性の名だった。


ーうん、私のお姉ちゃんなんだ。可能性は低いけど。まだ生きてるかもしれない。

お姉ちゃんとは別々の都市で住んでたから。知っているならあなたにも色々聞きたいことがある。


今は塔内が混沌としてる。少しの間だけでもいいからアタシの相棒になって!


お願い! とベアトリーチェに言われて。普通に了承してしまう。

あ、やばい! どうしよう。やめるつもりだったのに!

…まぁいいか。せめて彼女が生きてる確率があるなら。うん、これで最後かはしらんが

やってやろうじゃないか! 

何故かいきなり闘志が湧いてきた!






--針尾雨燕--ハリオアマツバメ

white-throated needletail

世界で最も早く飛行する鳥。と言えば隼だが急降下でなく水平飛行はこの鳥だとも言われる。

その速度は169kmに到達すると言われているが記録は非公式だとか。

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