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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
1章 異界衝突2― 傀儡師と漂流する弟子
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8話  放浪の弟子と次の世界

 

CINDY


気が付くとそこは夜の交差点だった。

通り過ぎた車が減速して左折したときに後続車に

ププッと軽くクラクションを鳴らされた。

車が通っている。


車が通ってる!


ようやく魔物しかいない生き物が居ない洞窟から出られた。

自分でもよくわからないけれど、とにかく人がいる街に出たんだ!


ストリートに店が並んでいるし

ガソリンスタンドに映画館もある!

歩道には……

人だ、人がいる!


やった! よかった。

思わず力が抜け、涙腺まで緩んだのか泣きそうになる。

横断歩道を渡って角のガソリンスタンドに入る。

すれ違い様に一台車が出ていく。フロントガラス越しに運転手を見ると

目を大きく見開き頭が小刻みに揺れていた。恐ろしい表情にも

恐ろしい目にあった人の表情にも見えた。


気にかかったが、それよりも気がはやっていた。

久しぶりに人間と喋れる!

自動ドアをくぐり店員に話しかける。


「あの!」

「何番ですか?」

「いや、車は給油してないんですけど、ここなんていう所ですか? 

あ、街の名前です!」


「あー、給油していかないんですか? ガソリンスタンドなのに?」

「はい。でも何か買いますのでね。そこは…」

「まぁ、いいけど。この街はなんて名前だっけか。すいません忘れちゃったよ。」

「はぁ、そうですか。ありがとうございます。」


店から出る。

まさか店員が街の名前をド忘れするとは…

ここが地元じゃないのかな、もしかして嫌味かな?

車じゃないけど何か買いに来るのってそんなに嫌味言われるものかな?

あ、冗談で皮肉っただけかも。真に受けてへこむ方が変だったのかも知れない。

久しぶりに人と話したから失敗しちゃったな。


トボトボと歩き出すと

夜の風が首筋を撫でた。


「うう… ちょっと寒い…」

 

でも。

ようやく人間に会えた。

会話終わらせちゃったけど…


あ! そうだ!

あの店員さんにエイリアンとかモンスターとか色々聞かなきゃ!

この街見るからに何も破壊されてないし、元居た世界のどこかだとは思うんだけど…

バッと振り返るとさっきの店員が立っていた。

無表情で感情が読めない。


「あの! 私聞きたいことがまだあって…」

「聞きたいことですか? こちらもあるからいいですよ? 」

「あ、じゃあそちらからどうぞ! 」


相手に譲る。


「トイレに行きたくないですか?」

「? トイレ? 行きたいけど、ちょっと意味が解らないんですけど。」

「いやぁ私勘がいいんですよ。もしかしたらトイレ借りに来たんじゃないかって…」

「ああ、そういうわけではなかったですけど… じゃあいいですか?」

「はい、いいですよ。」



この店員……

先ほどまでダルそうだった目つきが瞳孔が開いている感じに変わっている。

大丈夫かな。危ない人じゃないよね?

いや、大丈夫でしょ。


とりあえず、トイレに行く。

用を足してスッキリすると、飲み物も欲しくなってきた。

財布もあるし、カードも多分つかえると思いたい。


あ、さっき買うって店員さんに言ったのに質問したあと何も買ってなかった!

やっぱり何か買っていこう。

ピンクの(カバン)から財布を取り出す。


ジュースと、ポテチでも買おうかな? 久しぶりに食べるお菓子。

甘いものの方がいいかも。そうだ甘いものにしよう。

トイレを出るとさっきの店員が見当たらない……

陳列棚の死角の辺りを見ても誰も居なかった。

無人だ。


何処に行ったんだろう。

再度店内を見渡す。

勝手にペットボトルを取って水を飲む。


嫌な予感がしていた。

カウンターの奥に向かって声をかける。

返事がない。落ち着こう。


ガソリンスタンドの外に出て、周囲を確認する。

車も一台もない。

また人がいなくなっちゃったとかやめてよね…


そうだ。道路は? 車はまばらだが通っている。

やっぱり店の奥にいないか、もう一度確認しよう。


店内に戻ってカウンターの中に入り奥へ。

狭い廊下の奥にオフィス。

部屋の中には

監視カメラの映像が映っているモニター。

それと店員の死体があった。


死体は綺麗な状態で出血もあまりない。

ただ死体周辺には乾いた血痕が大量に残っていた。

本当にたった今殺されたのだろうか。

でも死んだふりじゃない、確かに死んでいる。


どういう方法で殺したのかわからない。

それに誰が他にいたのか。 

アタシに見つからずにこの店からこの店員を殺して逃げた。

この短時間で。

アタシが店内に入ってからここまで隠れる所は……

トイレしかない。


アタシがトイレにいたときに犯人が店員を殺害→ あたしが店内から外に出たときに

奥にいた犯人がトイレに隠れる

→ あたしが今ここにいる間にトイレから外に逃げた?


モニターを見るが、店内には誰もいない。

急いでオフィスから店の入り口に向かう。

やはり誰もいない。

トイレの二重ドアを開けると人が出て来た。


さっきオフィスで死んでいた店員だった。


「やぁ、どうも。トイレにいると思ったらいないから心配しましたよ。」

「オフィスにあなたの死体があったけど…」

「それ僕です。蘇生しましたのでキニシナイデ下さい。」

「じゃあ、なぜあたしより先回りしてトイレから出てこれるの?」


「手品ですよ。」

「どんな手品?」

「こんな感じだよ。」


背後まで来ていたさっきの店員の死体が後ろから襲い掛かってきた。

ハチから教わっていた劣化超聴覚の「凄い耳」で既に察知できていた。

動いている死体の手足を拳で砕くと

死体が崩れ落ちた。


「同じ見た目の死体を操る能力?」

「よくわかったね? 目を見開いちゃうよ。」

「生きてる人間と死んでる人間の音くらいは聞き分けられるんだ。」

「俺の双子の兄に酷いことして特技自慢? 最低な人間だって言われたことない?」

「性格がいいって言われる方だけどね!」

「どうでもいいよ、この力手に入れたばかりなんだ。もっと死体を所有シタイ。なんちゃってね。できれば綺麗に死んでね?」


床に倒れていた死体がまたも動きだす。

死体から能力者のほうへ跳躍して顎に拳を叩きこむ。

生きているほうの店員からナイフを取り上げて刺す。


やめてくれ! と懇願しながら死体を無理やり動かして

私のほうへ襲わせようとするのをやめない。

こいつ、質が悪いやつだ。

死体奏者にトドメを刺す。


「人間の能力者… 初めて戦った…」


心臓がバクバクする。

どっと疲れが襲ってきた。

全然強くなかったけれど、こめかみに汗が浮いてるのがわかる。


死体を操る能力者…


あ、レベルが上がった。

ちょっと待って多分出来るかも。



シンディ  

型  野良弟子 

師匠: 呪術師 仙人 オウム 犬 

弟子入り 仲間作り 師匠らの技 DIY

テント 見て盗む 凄い耳 4感強化 死体奏者new!


やっぱりマネ出来そう。死体奏者。


さっきまで戦っていた二人を動かしてみる。

ぎこちないが何とか動かせる、ようやく少しだけ出せるようになった

操り糸も死体に使用。スキル使用時の手ごたえが変わった。

やっぱりこの二つ。スキル相性がいい。 


練習を続ければもっと良くなるはず。

少しだけ練習していた所で、我に返った。

こんな明らかな死体を連れ歩けるわけないことに気づく。

ていうか死体とかどうするの?

普通に殺しちゃった……

私が人間を殺した? 確かに殺されそうではあったけれど。

いや、残念ながら初めてではないんだった。

自分が自分でなくなってきているようで少し怖くなった。


逃げるようにガソリンスタンドを出る。

丁度入れ替わるように、黒いSUVがスタンドに入ってきた。


あ、どうしよう…

焦って劣化隠形を発動して身を隠す。

車からライオンのような顔つきの中年女性が出てきた。

目つきがおかしい…

車に給油した後、支払いに店内に入っていく。

とっさに店員の死体を動かし相手をさせた。


「50ドルになります。」

「あ、そう。」


服に血がこびりついている店員に全く普通に接している。

あの客。何かおかしい。


カウンターに紙幣ではないものが置かれる。

キャンディの包装?


「ん? これは50ドルではないですよ。」

「あ、そうだった? じゃあこれは?」


獅子のような顔の女性は無表情のまま

カウンターに動物の舌のようなものを置いた。

まだ血が滴っている。


「これは?動物の舌ですか?」

「いいえ、人間のね。まさかこれもお金じゃないなんて言うんじゃないでしょうね?」

「お札じゃないですけど。あなた自分がやっていることを理解してい…」


いきなりカバンからナイフを取り出して店員を刺そうとした。

店内の角にいた、もう一人の店員を動かして羽交い絞めにさせる。

女の顔は目と口が大きく裂け肉食獣の牙のようなものが生えていた。


力が強い。店員では抑えきれず体を離す。

女が店員を刺していく。


直ぐに割って入り女を倒す。


一体何なの、この街は…

世界が変わってしまった?


異形の街。

怪人街……


人がいない街の次は、モンスターしかいない洞窟。

そして今度は怪人たちの街。


未だに、仲間ともはぐれているし。

あんまりいいことも起きてないけど…


だけど、ちょっとずつ良くなってる。

きっと大丈夫、明けない夜はない。 

人のいる世界に近づいていってる…

……はず。だよね。



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