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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
11章 魔女と塔・傀儡師の最後
72/117

魔女と悪魔の塔





晴天。

太陽を背に粗末な茶色い外套と

傷だらけの帽子を被った怪物が空を飛んでいた。


男の肩と脚には白い動物の部位。

男自身の骨格それ自体も奇怪でとても人間とは思えない。

無理やり内部から骨を変形させたような骨格。

2足歩行か4足歩行の動物なのか見ただけでは一瞥できない。


外部に突き出した骨が馬の脚の

ような形になっている。

骨で出来た馬の前足と後ろ足が

人間の両手両足と連動しているように動く。

背からは大きな白い翼。

羽根を広げて風に乗っている。

時折手足を動かすと羽根の方も連動しているように羽ばたいた。


背には鞍があり、人間を乗せていた。

速度は速く、高度は高かった。

奇妙な光景。


「クラウス・ローゼンベルグ」



どうしてこうなった!

そうだ塔行きを決意してからだ!

あの時から私の運命は巨大な並みに飲まれたように

連れ去られ、そして問答無用に巻き込まれていったのだ。

能力者になり、塔行きを決意し、そして奴らに出会ってしまった!




そうして私は今、空を駆けている。

魔女を背に乗せ、奇怪な人間骨馬の姿で!

塔に向かっている最中にいきなり魔女が記憶に残らない男を捕縛。

続くように3人の男たちが私を脅迫した。

意味も分からないまま奴らの指示に従うことに。

こいつらは全員グルだったのだ!

魔女と知り合いだったのだ。全く会話していなかったので気づかなかった。

確かにチェシャ猫とコナーがチラチラと魔女を見ていたが

それは単純に美しい女だからだと思っていた!



数日前===


コナーたちに馬車内で脅迫された。

今しがた襲撃してきた犬型エイリアンとの戦闘で

こいつらの強さを目にしてしまった。

逆らうという選択肢はなかった。


まさか、他の旅に参加した市民たちも私のように

脅迫されて…

なさそうだった。

不安と困惑を行ったり来ている間に

本物の塔の建つ都市の手前に到着。


―おい、低級能力者。

俺らはこの塔は人類の敵なんじゃねぇかと思ってる。

協力者が欲しいんだ。

というわけで後で解放するし危なくなったら

守ってやるから従っとけ。ハハハ。

それと魔女…

いや御館様、…これでもねぇ。

あの女性に失礼がねぇ様にな? おっかねぇからな、いやマジで。



コナーの奴がそう言って

3人組に従いながら行動を共にする流れに。


こいつらも塔を探りたい? 何故? 

外部からの偵察。救いの党は何処かと敵対している?

元々やつらはスナッフシティに災厄に乗じていきなり攻め込んできた。

職員の話しぶりから他の都市にも同じように

攻め込んでいたことは知っている。


奴らに飲み込まれずに抗戦している都市があるのかもしれない。

救いの党は敵に攻め込まれるというような

心配はしていなさそうなので大規模な戦争はしていないと思うが。

能力者たちが結成した小規模なグループとやりあっている?

もしくは既に都市は陥落してしまったが

奴らから逃げおうせた生き残りの能力者達。


この魔女たちが

救いの党の敵対勢力か、レジスタンスであるならば

私にとっても今後重要な協力者となるかもしれない。

もしも党が私の予想しているような邪悪な組織ならばだが…


さっきコナーが魔女といったので、お前も同じあだ名をつけていたのか

と内心突っ込んだが。そちらより御館様のほうが気になって来た。

というのも魔女がこの能力者達のリーダーだったとしても

小規模なグループには似つかわしくない呼び名。冗談でいったとしても

失礼ではない。わざわざ言い直すようなことではないだろう。


ということは…

このグループはそれなりの規模がある? 少なくとも魔女が地位を隠すほどの。

この3人の能力者は魔女と地位に開きがあるのかも。

コナーたちもいままで見た能力者の中では

強い部類だと勘が告げていたのだが…



丘陵地帯の比較的霧が少ない丘で馬車が停車。

職員たちが全員外に出るように告げる。

皆ぎゅう詰めだった馬車から解放されて

外に出たものから次々と伸びをする。


小高い丘の影になっている部分から

ぽつぽつと人影が現れて近づいてきた。

皆ヘルメットにボロボロの軍服を着ている。

以前まで馬車を引いていた「走る人」

スプリントボットであった。


まるで恐怖で絶叫したまま

時が止まってしまったかのような形相の機械人達を見ると、

彼らは無理やりに改造されたのではと不安になる。


馬車を回収しにきたらしい。

馬車の方へ来ると半機械馬(スタリオンボット)と交代。

それぞれが時折痙攣しながらぎこちないフォームで走り、

馬車を引いて何処かへと去っていった。


逆に私たち塔移民はスプリントボットの

やって来た方へ向かうように指示される。

丘の一部が人工芝のカーペットのようになっており

そこから隠し通路を通って塔付近の廃墟まで行くことになる。


因みに能力者の護衛チームは塔の住民にならない限りは門の中には入れない。

中に入れるのは何度も依頼を受けて長いものだけであった。

コナーが棟内に入りたいという旨を伝えると

職員が一度マニュアルの確認をしたいと言って

廃墟内の関係者以外立ち入り禁止の部屋へと向かう。


ふと職員の首元に違和感。

何だ?

いつの間にかその職員の首にはドッグタグが掛けられていた。

ついさっきまで職員はこんなもの首にかけていなかったはず…


魔女が当たり前のような顔でその職員の首に手を伸ばし

ドッグタグをインナーの中にすっと入れた。

そして「チェシャ猫」に指示。

チェシャ猫は少し緊張しながらへいへい、というように従い

職員と共に部屋に入っていく。職員はついて来るなよと言いながらも全く

チェシャ猫を気にしない。


あのドッグタグが怪しい。

この女の仕業な気がしてきた。魅了するようなアイテムを持っているのだろうか?

伺うようにこの女の美しい横顔を観察しながら

ますます魔女みたいだと思った。


近くにいた他の職員を見るとやはり彼らの首元にも同じ紐が見えた。

これもいつの間にか魔女がやったに違いなかった。






本物の救いの塔がある街。

地獄都市ヘル。

年中霧に包まれており、外に出て行ったものはまさしく地獄だと皆口々に言う。

そんな都市に塔はある。

塔の維持には市民だけでなく土地の魔力も必要だったのだ。

そしてこの土地からは非常に強い魔力が得られる。

人の時代ならばパワースポットなどと呼ばれるような場所。

それを目当てにこの土地を狙う魔物も犠牲を払って何とか撃退しているらしい。

最近は人間を殺戮することを目的とした自動人形なる魔物たちが

攻め込んできたりするとか。


他にも塔を手に入れることを画策している生き残りの人類の勢力も

あるので救いの党の大統領府は防衛に四苦八苦しているとか…

塔は人類の最後の砦であり、ここが落ちたら最後であると

繰り返し強調していた。外界は絶対に人間は住めないと。


様々な事情を職員が話していた。

話している職員は生気が無く、目を見開いて瞬きをしない。

質問をした移民の名前を必ず聞きメモしてから

容量の得ない答えをするのが恐ろしかった。

疑問を抱く個人を記録してるんじゃないだろうな。



しかし奴らが言っていることが本当ならば時折現れる旅人たちは

何故ここの職員たちよりも健康そうなのか。

住めないはずの外界に一体どうやって住んでいるのか。

なぜ外部の人間と接触できる機会が少ないのか。



疑問がつきない…


塔側は塔の住民と外部の人間の接触しにくい

ように運営をしているように感じる。

外部の人間グループと敵対しているならわからないでもないけれども

塔が言っているほどに本当に人類の他のグループは塔を狙っているのだろうか?

それに塔が無ければ人類は絶えるというのも怪しい…


今回の旅人たち。

魔女と例の3人組を見ている限り、

偵察するために中に潜入したいのであって

安住の地を横取りするために、塔に住みたいがために。

という風には見えない。


地獄都市内部まで地下で繋がる隠し通路を通りぬけ

塔周辺にある廃墟の地下で待機すると、そこには先客。

他の都市からも集まって来ていた移民たち。

今回塔に入る人数はこれで千人近くになりそうだ。


合図があるまで1時間ほど待つ。

門が開いた。

合図が来たと同時に移民皆で一斉に駆けだす。



本物の救いの塔は巨大だった。

外壁は粘土のような色。

特別な模様などもない。


スナッフシティの簡易塔が高さ100mほどだとすれば

この塔は800m以上はあるのではなかろうか。

雲に届くというほどではないが

塔の頂上は外壁が十分でなく、半分ほどが内側が見えている。

人は見えない。霧が雲のようにかかっていて

まるで未だこの塔は建設の途中であるというような印象を持たされた。




塔の中に入るとそこは夜。

地上階は天井まで20Mほどか。

内部には街があった。アスファルトの道に住宅街。

街灯が真っ暗な街を照らしている。

スナッフシティの塔との違いは

街灯の数と住宅街の有無、そして広さだった。


元居た簡易塔の広さは見た目に近かった。

しかしこの塔はいくら巨大だとしても

一階の目視できる範囲だけでも外から確認できた塔の幅を遥かに超えていた。

最低でも1フロア1㎢はあるのではないかと思った。


職員に皆が普通の住居で暮らせるのか、市民の一人が聞いた。

通常の住宅が割り当てられるのは一部で、

その多くは能力者と職員その他は党に貢献した市民たちが殆どだと言う。

住宅地は途中で途切れていて

その向こうは人通りが多い小さなビルが立ち並んでいた。

さらに向こうに畑や農場があるとか。



ここまでが

地上階入口付近の奥にある丘から見えた光景。

入口周辺事態は避難所のようになっており、

ベニヤ板などで仕切られた狭いスペースが

市民歴の浅い者たちに仮住まいとして与えられている。


ここがしばらくは住処になるのかと思ったが

私は能力者だと知られていたので特別扱いされた。

他の市民より早く良い住居が割り当てられることに。


コナーたちは護衛の仕事が済んだということで

報酬をもらいそのまま塔の外へいくらしい。

魔女は誰だっけか、誰かと何処かへ一度消えた。

一緒にいた奴だったかもしれないが、覚えていない。


私の目的が塔の実態を知る事だと何故か魔女は見抜いており

それを3人組に告げていた。


―ならばお前にも得があることだぜ?

俺らに協力するほどに

強制に近いが目的は果たせるぜ?


「いや、強制なら嫌なんだが。」


言い返すとコナーの奴に睨まれた。

結局やつらの協力者として塔の中に住むことに。

そして問題の塔の中は…

可笑しな雰囲気であった。


まず大きなガスタンクのような外観の施設に入ると

そこで能力の確認が行われた。

正直発現したばかりで使いこなせたこともないと言うと

職員が何かメモした。

その後一人部屋に移される。水族館のアクリルガラスの

ように分厚いガラス越しに職員が


―ちょっと怪しいなぁ… では。


と呟いたように聞こえた気がした。

しかし何も職員はしない。

この職員の首にもあのドッグタグの紐が掛けられていた。

此方を一瞥して通って良しと言われ先に進むための扉が開かれた。

渡り廊下があり役所のような施設に繋がっていた。



あの部屋は本来は何をする部屋なのか。

ガス室じゃないだろうな。

能力者で怪しいものはここで刺激して無理やり能力を使わせて

大人しくさせられなければ催眠ガスや毒ガスを…

などという想像をしつつ

一通りの入党手続きを終えた。


職員に先導されて役所のような施設を歩いていると

あの3人組と通路で鉢合わせた。

いつの間にか奴らは党内商人

のIDを手に入れたらしく胸にぶら下げて。

特にコナーは図々しく歩いていた。

用があるからまたな、とだけ言って奴らは消えた。




私に割り当てられた家は塔の町はずれの

岩山を背にした一軒家。

ベッドルームが5つ。

書斎が1つ、バスルームが2つ、リビングが1つ。

ここに住んでいた住人は上階へ移動したらしく

ちょうど空き家になったところだという。

近日中に同居する能力者が何人か来るらしい。

人数は2人。




夜には人が私の新しい住処を訪ねて来た。

2りの同居人ではなく、

その同居人の名前を語った「置物」と「チェシャ猫」であった。

その日から家の中で何かが変わった。

割り当てられた住居の地下に「チェシャ猫」と「置物」

が何かしたのだ。

恐ろしく巧妙に、そして迅速に。奴らは仕事は済んだとばかりに

小一時間ほどで去っていった。半地下にある家の保管庫には

ちょっとした保存食や容器などがあるだけで

奴らがここで何をしたのかは私には分からなかった。




翌日職員に呼び出されて

馬になる能力者ではないか予想されたと告げられて

目の前でなって見せようとしなければいけなくなった。

結局の所、確かに出来た。

本当の意味で馬などでは絶対にない見た目の化け物に私は変身したのだ。

そして私は「走る人」と「半機械馬」と移民用の馬車を競うように引き

走る人に勝ち、

そして荷物が200キロ以下である場合はスタリオンボットにも優越したのだった。


帰宅途中魔女に出くわす。というよりは家のドアを開けたらいたのだ。

彼女は2人の男を連れこんでいた。

魔女は一人の男は

例のドッグタグと似た雰囲気の

チェーンのネックレスのを着けていた。記憶にはないが見たことがある気がする。

そうだ、記憶に残らない男だ。

それから不思議なことが起こった。もう一人の男だ。

記憶に残らない男がもう一人そこにいた。しかもこっちはかすんで見える。

黒く塗りつぶされているようにも。透明なようにも。

良く覚えていないが。同じ男だと思った気がする。


???


何を言っていたのか自分でも忘れてしまった。

えーと、確かもう一人の同じ男が魔女と何かやりとりして…


魔女が何かするとネックレスを着けている方の

見た目が変わった。背の高い白衣を着た男。

白衣は土だらけで酷く汚れている。

顔つきも体つきも別人。


魔女に対して緊張しながら対応していた。


―さてエディ? 薬品はあれで全部? 

あのテレポーションはこれからウチで作ってもらう。

転移はどれがどこと繋がってるのか教えてね。

それとその爺さんの居場所は?


―わ、わからない。

俺に嘘を張り付けた後は爺さんも何処へ隠れるとか言ってた。

それ以外の質問も、もう知っていることは殆ど教えたよ。


何か会話した後

魔女が残った残った記憶に残らない男に抱擁してキスをした。

突然のことでびっくりしつつ羨ましくも思った。


「一体何者なんだ? 」

と言うと

「ジョンよ、ジョン・スミス。どうせ忘れちゃうだろうけど。」


魔女が何か言った後

液体の入った試験管を男が手に取り

男はそれを割る、液体が霧のようになり

たちまち男は消えて影も形も無く消えてしまったが、それもすぐに忘れてしまった。



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