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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
9章 霊魂衝突ー 傀儡師と円卓の領主たち
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9話 あるいは救いを求める・悪夢列車・本物の塔




DEADMAN首領

ノートン・ヒューズ・ウォーカー

「あるいは… 救いを求める。」



眼前に伝説の生き物が迫って来ていた。



竜、ドラゴン。

身体は分厚い鱗に覆われ

虎のような眼。白目の部分は黒い。

4つ足で翼を持ち、巨体からは想像できないほどの速度で飛行する。

竜の息吹、白色のようなエネルギーの奔流。

生き物でも建物でも浴びせられれば平等に消し炭にされるほどの威力。

身に宿しているマナの量は圧倒的であった。


少なく見積もっても悪魔化したノートンの倍。


そのドラゴンが6匹。

驚くほど強い! 単純な生き物としての強さ。

ノートン・ヒューズ・ウォーカーが

初めて見る竜というものを測った時、最初に感じたことはそれだった。


次にこの規格外の戦力を有しているナイツ・オブ・リバティ

とすでに対峙してしまっていることに対しての不安感。

自由騎士団。やはりと言うべきか敵対して良い相手ではなかった。

嫌な予感は当たっていたのだ。


時は巻き戻らない。

悪魔と竜の戦闘は始まる。

高速で上空から急降下してきた竜が強烈な息吹を吹き付けた。

悪魔が背に生えた黒い翼から魔力を爆発させる。

竜に立ち向かっていくように飛行し竜の息吹を空中で回避。

他2体の竜も悪魔を追い立てる。

さながら空中戦の最中の曲芸飛行のよう。逃げながら悪魔が灰色の砂嵐を呼ぶ。


竜の視界はテレビの砂嵐の中に閉じ込められたかのようになる。

舞っているのは遺灰ならぬ死灰。死霊術師たちがそう呼ぶものであった。

砂嵐に混じり不死者の体の部位が飛び交う。

悪魔がそれを取って貪り始める、

ひと噛みするたびアンデッドの腕や脚が灰と水銀に変わり

それが悪魔に吸収される。


悪魔が自身を強化していることを察したドレイクと

騎士達が竜騎士の槍を投擲。

不死者と合体してはより強力になっていく悪魔を

竜のみに任せないほうが良いと判断。


―聖種は自由騎士団の側に着く。戦闘はしない。

デッドマンには戦闘を止めて投降を勧める。


ここに来て

聖種の当主が騎士団の

Deadmanに対する攻撃を支持。


―いよいよ死人は怪しくなって来たからね。

多勢に無勢で可哀そうだけど……


カドゥケウスが言い終わらないうちに

マンフリードがこの雌雄一体の化け物。

「恋人」の背後をとった。その速さと

霊拳の輝き具合から最大威力の一撃を叩きこむ

ための隙を狙っていたことが伺い知れた。


しかし、光り輝く拳をマンフリードが当てる寸前にはもう。

周囲の空間が捻じれ始めていた。

マンフリードの顔が自身の身体が固まったように動かないことに驚愕に歪む。


いくつかの鈍い輝きを放つ光球がカドゥケウスの周囲にぐゆんと現れる。


まるでゴッホの絵。なんというタイトルだっただろう。

少し連想しただけだが気になった…

夜にゴッホ特有の黄色の光…

そうだ、スターリーナイト。星月夜だ。

まだ日は昇っているが、淀んだ青い空に浮く鈍い黄色の光を見ながら

マンフリードはそう思った。


周囲に現れた光球は水車のようにゆっくりとその場で回転を始める。

我に返ったマンフリードがもがくが、

万力で体中を固定されているかのように

あらがえない。骨がみしみしと悲鳴を上げる。


―次はこっちも。

恋人の化け物が言うと…


眼下にあった黒い洪水が妙なうねりを持つ波を作る。

まるでこの光球の、黄色く光る星の回転に従っているように。

波が強化寄生死物を優先的に狙うように動き出し

死物が次々と飲まれていく。


黒い波が大量の魔物を飲み干し、周囲の黄色い星たちが消えると

波のうねりも無くなった。



「あの悪魔くんの合体の素材も消していかないとね。

もちろん君も捕えさせてもらおう。

ここで殺されるよりもいいでしょ? 」

化け物が振り返り言った。


「ハハハ、テメェ覚えてろ! 今度会った時は!」


マンフリードが言い終わるのを待たずして

もう一度化け物が杖を振るうと

マンフリードの意識が暗闇の底へと落ちていった。


実際悪魔にマンフリードと聖種の長の戦闘に気をとられている余裕は無かった。

竜が、騎士が、休む暇もなく襲い来る。全てを焼き尽くすような息吹だけではない。

竜はまるで巨大な唾でも吐くかのように重戦車を一撃で破壊させるような

燃え盛る炎の弾を連続で放つ。空中で軌道を変化させギリギリで回避する。


他の竜たちは

地上にいる死物も不死者の軍勢をブレスで焼き尽くしていく。

このままでは逃げまどっているうちにデッドマンの不死者たちが殲滅される…

もっと不死者を呼ばなければならない。

SINシティに蠢く亡者達は

凡そ2万… 今相対している相手には心持たない。


ドレイクが竜と他の竜騎士と連携しながら

電気のように強烈に迸るマナの塊をこちらへ投擲。

属性は雷とは少し違うようだが。

雷そのものを投げているかのような威力。

音の壁を破ったような爆発音と共に此方へ向かってくる。


ただの雷なら問題はなかった。

しかしこの騎士団長様の

投げる雷は問題だらけであった。

マナの防御フィールドを破壊する性質を持っている。

それに暗黒の存在に対しても効果的。

ノートンにはわからなかったが、聖なる属性も帯びているのかもしれなかった。


分かっているのは当たるとマズイこと。

兎に角回避すること、それだけがノートンの頭にあった。

灰色の砂嵐を街中に起こすが、

この霊槍も竜の息吹も周囲の砂嵐を霧散させてしまえるほど強力。


連携している騎士団長付の高位騎士達の実力は本物で、

死人(デッドマン)のリッチやアンデッドキングも討伐出来るほどの実力。

一人一人が少なくともあの少年。

アインに匹敵するほどのマナを内包していた。

地獄の鍛錬を積んだ適性も才能も文句なしの一級の戦士達。

一体どうやってこんな猛者をここまで集めたのか。


奴らが装備している鎧は不死者や死物の攻撃をまるで通さない。

特殊な魔防具。

高位騎士たちは誰もが単身でヒト型エイリアン数十体でも

楽々相手どれそうな猛者揃い。

2人いればマンフリードをも抑え込められるだろう。


KNIGHTS OF LIBERTY‐自由騎士団。

まさかここまでだったとは…


何か感慨深いものがあった。

ついにブレスと聖なる雷ともにまともに喰らってしまう。


思わず膝をつく。マンフリードも落ちた。

カドゥケウスに捕らえられている。

ここまでか…

ノートン・ヒューズ・ウォーカーは

自身が運命の分岐点に立っていることを理解した。



「どうした悪魔。そんなものか?

いや、思ったよりはずっと強かったな。

円卓の領主になれてもおかしくはなかった。

まぁ、そのような未来はお前には来ないが。」


「……」


「さて、血迷った下手人。

このドレイク・スティングレイが正義の名のもとに貴様を裁いてやろう。

悪に堕ちたこと後悔して死ね。」


ここまでだった。自分が出来ることは。

マイケルはとっくに何処かへ消えた。

頼るものはあまりにもない。

他の選択肢も問題を先送りにするような物ばかり。


ノートンの変身が解け、悪魔の姿からスーツを着た人間の男の姿へ戻る。


だから一度認めなくてはいけない。

ビッグボーイとゲームをしなきゃならないのなら

こちらもビッグボーイを頼らなければ。

素直に救いを求めればいい。


身体の中からパイプとライターを取り出して

手に持った魚の形をしたネックレスに近づける。


―デッドマンは傘下に入る。


デッドマンの象徴であったアイテムが消失。

ノートンの持っていたネックレスが指輪へと変化して

それは装着された。


賽は投げられた。空から有り得ない程強大な魔力反応。

この場にいた者全てが異変を察知した。

カドゥケウスがドレイクに何か言おうとした、その時。


太陽から何かが降って来た。


正確には太陽からではないが、太陽を背にして空から飛んできたもの。


一人の男。

淡いベージュのスーツを着てサングラスをかけている。

白い髪に髭。まるで成層圏からパラシュート無しで

スカイダイビングしてきたかのように手足を大の字に広げて降って来た。

歯をむき出しにして余裕たっぷりの笑みをした時。


太陽が増えた。


男の背後にある太陽以外に7つほど、その眩い太陽が

超強力な破壊光線を放った。

一瞬の出来事。その場にいた者たちが何が起きたのか理解したのは

竜の鱗が砕かれ、貫通し、すぐさま3体の竜が地面に倒れ伏した後。


飛んでいた伝説の生き物が堕ちる様は恐竜の時代の

隕石や氷河期による終わりを描いたイラストを何故かノートンは思い出させた。

竜たちの叫び声。否、絶叫がこの死霊術師の意識を現在へ戻らせる。

3Fが一匹の竜の首に腕をねじ込んで首の中の筋繊維を掴み

投げ飛ばした。恐ろしい勢いで竜が吹き飛ばされていく。


その光景に思わず呆けそうになったが

気配を感じてバっと横を向く。

いつの間にかノートンの横に立つ男。


眠そうな男だった。

数人の騎士を連れていた。見覚えのある鎧。

特徴的なボウガンを持っていて竜と竜騎士達に狙いをつけている。

彼らを引き連れているいつあっても眠そうにしていた男。

何度か顔合わせしたことがあった。




ーなぜここにいる! ルーーベェェンン!!

ドレイクがありったけの声量で叫んだ。

騎士達と竜らもそれに続くように声を荒げる。




―やぁ、悪いニュースを持ってきた。皆眠たい中申し訳ないが

本日をもって西方騎士団は解散。円卓の席は所有したまま

これからは愚者の勢力「SCARECROW スケアクロウ」に入る。

見知った顔にも一応挨拶しておこう。


「スケアクロウ、案山子の1「英雄」のルーベン・ナイトレイだ。

よろしくね。」











@@



「悪夢の世界」


==星の隠者

財布の中に一枚のカード…

背景は夜空に煌めく星々。隠者が立っていて

ランプを持っているその中にはひときわ輝く星。




あのカードだ。運命のカード…

絵柄が変わって一枚になっている。

何か成長したように思えるが、確かめている場合じゃない。


目の前の車掌に意識を戻す。


切符を拝見。

してもらいたいので何か代わりの物を差し出そうか…

ということで煌めく傀儡糸を差して傀儡化させてもらう。


車掌に傀儡糸を刺そうとすると、糸が刺さらない。

「何をシテイル!」

ギョッとすると車掌が笑いだして、掴みかかって来る。

何発か殴りつけると

男は膝から崩れ落ち服を残して体が溶ける様にして粒子に分解され消えた。

床に残された服と共に。


強い…

あの車掌自体は強くはなかった。

いや… 俺が弱くなっているんだ。

今しがた成長したばかりのはず。

どういうことだ?


負ける感じは全くなかったし、

大人と子供以上の差があった。

それにしても強く感じた。通常の人間との今の俺の力の差は

ハッキリ言ってそんなものではない。

5歳児と象、ナマケモノと虎のように数百人いようが問題が無いような差が

10人もいれば少なくともパワー負けしそうなほどの差に縮んでいた。


状況を把握したい。

扉を開けて、個室が並ぶ車両に入る。

幾つか鍵がかかっているが、開いている部屋もあった。

客はいない。鍵の開いていない車両をノックして回る。

応答なし。


全ての部屋をノックしないでもいいかと、一つの部屋を後回しにしていこうと

したときに踵を返し、ノック。


ドン! ドン!


扉を激しく叩き返してきた。

何だ?

怒り、憎悪? のようなものを感じた。

此方も強く叩く。


ドン!!


さらに強く叩き返してきて部屋の中で物が投げられたりしているような音。

扉を開けようとするが開かない。

指先から霊糸を出して戸の隙間に入れて錠を切断。


引き戸を開けると、無人。

部屋の中に入る。

綺麗に整頓されているし物があちこちに散らばっているということもない。

ベッドのシーツも未使用。

一瞬背後で気配を感じた。


振り返ると、ドアの外。

青白い生気の無い表情をした女の子が

寝台車両の狭い廊下からこちらを覗いていた。


少女に向かって歩いていく。

見たところ10歳から12歳。

明るいブルネットの髪。近づくと彼女は俯く(うつむく)

表情、雰囲気ともに暗く死人のように見えた。


―私が見えるの?


「ああ、見える。」


―そうなんだ、でも意味ないよ。


「何の?」


―ここに来ちゃったんだもの。みんなと一緒になって消えるだけ。

何をしてももう意味なんてないよ。


「皆と一緒になる?」


―溶けちゃうんだよ、それにすり減っていっちゃうの。

アイスみたいに… 私だってそのうち…


「君も? 今まで君のことが見えるやつはいた?」


―ううん、あんまりいなかった。でも少しはいた。

お話しできるのは嬉しいかも。


「ここは何処かわかる?」


―わかんない、死の世界の少しだけ前の辺りかも…

あ、でも。それとも少し違うはず。


「少し違うって?」


答えずに

少女は消えてしまった。


車両を移ろう。兎に角前に進んでいくしかない。

カフェやビュッフェのある車両に出た。

客がまばらだにいる。誰も此方を気にしない。

隣に座っても無視されるが、肘でぐっと押してきたりもする。


無視はするが、邪魔だという意思表示はするらしい。

接客をしているスタッフが2人。彼らも表情は暗い。

まじまじと見ていると、雰囲気に違和感を覚えた。

歩き方が少しおかしい、微妙にがに股な気がする。

彼女らは本当に接客従事者だろうか。


昔サーカスでみた人たちを思い出した。

少し二人の雰囲気は彼らに似ていたから。


国をまたにかけてパフォーマンスをしていた人達。

色々な、統一性のない訛りに体操選手のような身体。


窓の外を見ると、地平線の辺りから黄色のようなオレンジ。

その上に群青色のカーテンがかかっているような空。

このまま窓際で何時までも見ていたくなるような美しさだった。


ふと疑問が湧く。

この列車の目的地は?

少女の霊はみんなと一緒に消えると言ってた。

駅へ着くと消える? ついた後に行く場所で消える?

それともこの列車の中で消える?


外に出たほうがいいかもしれない。

車両をいくつか移っていくとさらに豪華な車両。

さっきのがエコノミーのレストラン的な車両で

此方が一等客のための物なのだろう。


何となく

空いている席に腰を降ろす。またあの綺麗な空を見ていると

食事が運ばれて来た。スタッフに礼を言って皿を見ると料理が無い。

白い皿に黄色のソースで文字が描かれていた。


―ジョン・スミス!

そこは3Fの腹の中! 逃げろ!

超占術師のアシュリー様より―



アシュリーって誰だ? 

俺の名を言っているのが何故か伝わって来た。

超占術師。占い師のことか。

それに3Fの腹の中というのも… 記憶が、上手く浮かんでこない。

皿に書かれたメッセージの意味は何一つとしてわからなかった。

ただここにいてはダメなことは同意出来た。


立ち上がり車両を移る。列車が早くなった気がした、少し揺れる。

人気のない個室に入り、窓を開ける。

何事もなく開いたことほっとする。

身をかがめ外に出ようとすると、体の周囲の電磁力フィールドが

バチっと静電気のように動いた。

何かのセンサーに感知されたような感覚。


誰かがやってこない内に窓から車両の上に登る。


100キロくらいは出ているだろうか。

寝台特急は見渡す限り建物のない丘陵地帯を進んでいる。

車内で、何人かが他の霊気と違う動きを見せ始めた。

俺を探しているのか?


列車から飛び降りて、一度受け身をとるように転がって立ち上がる。

取りあえず東へ向かう。

西かもしれないが別にどうでもいい。太陽が地平線と共にある方向。

歩いていると、15分ほどで寂れた街が見えて来た。

何か情報を仕入れたい。


太陽は相変わらず動かない。空は

日の出、もしくは日没前の黄色と群青の二色だった。







@@@@



スナッフシティ


とある塔民


ヘルシティにある救いの塔行きの

一団が明朝5時から出発する。


世界は霧の中に包まれ危険である。

誰もがそんなことは知っている。だから塔の中に住んでいるのだ。

いや、だから塔に住めと言われ住まされているとも言えた。


救いの党が建設する塔の中ならば今までよりもはるかに安全に暮らせる。

秩序申し分なく。犯罪も少なく、食べ物にも霧にも、魔物にも悩まないと。

ここならば人類の新たな文明を築きなおすことが出来る。


正し、ここスナッフシティに立っている今はまだ安全な塔は簡易塔である。

らしい… 簡易塔はいつまでも住める塔ではないということ。

いつか簡易塔からでなければならない。中では農業も皆で行っているが…

塔という奇跡を維持するためには魔力が必要。それは住民のマナを

まるで献血するように塔内の施設で抜かれる。

抜かれたマナは特殊なタンクに保管され何処かへ運ばれていく。


塔内で犯罪を何度も犯すものは機械兵に無理やり改造される。

人口を維持するのも苦しいらしく機械化すると維持費がマシになるのか

職員たちは半機械化を推奨している。強制改造は今の所犯罪者のみであるが。

機械化するとコントロールできるということは機械化は個人の支配権を

売り渡しているようなものでは? という疑問が湧く。




塔の外は災厄が渦巻いていて

その恐ろしさはここの市民たちは赤ん坊でもない限り、身をもって経験済みだった。


その恐ろしい外の世界から人類を守る

塔の建設。

救いの党の偉大な魔法使いと科学者たちよる奇跡。


定期的に党の兵士や職員達が

本物の救いの塔「ヘルの救いの塔」に行く希望者を募り、

希望した市民たちが過酷な旅に挑む。

戻ってきたものはいない。当たり前だが…

戻ってきたら本末転倒だ。


稀に機械化兵となったり、職員になってスナッフシティまで来たのもいるにはいるが、

みんな一様に外の恐ろしさを語る、皆トラウマになったような表情。

それに酷い外傷を負い改造手術を受けた旧友を見たが

酷い顔つきだった。手術を受けたものは皆一様にやってよかったというが

無理やり言わされているような、強張った顔つきで言うので私は恐怖した。

正直普通の人間らしく、この塔の中で安全に暮らしたいと思う。

しかし、自分もまた旅に挑むことにした。


何か胡散臭いのだ。この救いの党の人間達は。

最近少し態度が変わってきている。

党に入った瞬間も変わったのを覚えている。まるで…


私は、何か嫌な予感がして旅には志願しなかった。

しかし旅立っていった友。妹家族に姪っ子。

片思いしていた女性。ああ、ついに一度も話しかけることも叶わなかった。

今になって後悔している!


気になって来ていた。

皆本当に大丈夫なのだろうか、と。


最近能力に目覚めた。偶然だった、きっかけさえ不明。

街の占い婆によれば私は役=ロール

天馬らしい。ペガサスのロール…

一体何なのだろう。力が仕えたことも無い、実感がわかない。

身体能力は確かに上がっている。


しかし能力者になったおかげというべきか。

つい先日ここにやって来た能力者の旅人達と救いの塔行きの馬車に相乗りすることに。

彼らはこのスナッフシティの塔からの一団の護衛も食料などのため引き受けた。

戦闘力の強い彼らと、救いの塔の職員が先導して今回は100人ほど外へ出る。

私自身は能力者は優遇されるというので周囲からは羨ましがられた。

引率する党の戦士達も僅かではあるが扱いが丁寧になったのは確かだ。


「ヘルの救いの塔」に向かう一団が受け入れていた旅人達。

しかしこのよそ者たち、ただ物ではない気がする。

能力者らしい。5人の男女を見て

私よりも遥かに強いのだろうと何故か直ぐに分かった。


強そうな旅人達は男が4人。

その内3人は顔見知りで一人は道中で知り合ったようだ。

1対3でお互いを詮索しないようにしながらも、

時折探るようにして質問し合っていた。


3人組は、リーダーのようにふるまう自信過剰な男。

名前は何だっけか、コナーだ。

良く笑い、喋る男だった。

腕っぷしにも自信がありそうで、獰猛な野心に満ちた目をする。


その横に背は高くないが、がっしりとした体躯のチェシャ猫のような男。

握手したときに肩に触れると

分厚い筋肉が装甲のように肩を覆っているのに少し驚くほどだった。

常に口角がニッと上がっている。前の男よりも明らかに口数が少ない。

だが人とはよくコミュニケーションをとろうとしているあたり、

おしゃべりでないだけで外交的な人間なのかも知れない。

人を良く見ている人間で外交的な奴はこのような時がある。



3人目は無口な男。特に野心家な感じの男、今はそう呼ぶとして。

野心家のコナーとはあまり喋らない。こいつも酷く無口、

無表情で何を考えているかわからない。灯台下暗しと言うか…

半径5mくらいを見ないで生きているような印象。

ボーっとしている時は置物のような雰囲気さえあった。

好戦的な人間には見えないが、チェシャ猫はこの置物に一目置いているのか

それとも恐ろしい奴なのか少し気を使っているように見えた。

いや、それともコナーとコイツの関係を取り持っているのかも。


私の勘だと。3人の中では能力者として最も優れている?

もしくは貴重な能力を思っているとか。


その3人組と時折話している男がひとり。

坊主に眼鏡、無表情。

顔立ちは端正なのだが、どうにも印象に残らない。


「野心家のコナー」「チェシャ猫」「置物」の3人が元々の仲間で。

「記憶に残らない男」がこいつらと話していた。


そこに私も混ざる。


クラウス・ローゼンベルグ===

型  天馬 ペガサス

サブ 観察者

技 天馬の呼吸 慧眼 ブースト



皆で塔の外へ行って特別製の馬車を待つ。

馬車の中ではぎゅうぎゅう詰めにされるだろうと思っていたが。

この旅人達と同じ車両ならそうならないだろう。

外では先ほどの4人とはまた違う所からやって来た旅の女がいた。

白い鳩を何処かへと飛ばしていた。


オリーブ色の外套を頭から纏っている。

遠くからでもシルエットから女だということは読み取れていた。

身長は170センチとちょっと。平均よりも背が高い。

フードからブロンドの髪が見える。

眼は時折見えるくらい、一瞬目が合うとドキリとさせられた。

美しい女だった。この旅人たちは皆一様にそうであったが

この女もまた特別な雰囲気を纏っている。

天使のような雰囲気に妖魔のような魅力を持っていた。

つまり危うく魅了されてしまいそうになっているということであって、なので

この女のことは心の中でこっそりと「魔女」と呼ぶことにした。



これまでの経験から間違いなく能力者だと思った。

どのような奇跡を行使するのかまではわからないが、その落ち着きようは

相当な実力者がもつものだ。


馬車は機械化改造手術を受けたと思われる馬の魔獣が二頭立てで引いて現れた。

前見た時とは違う。

この前までは、凄まじい形相のまま時を止められたかのような改造機械人の走る人。

スプリントボットと呼ばれる兵士たちが人力車のように引いていたのだ。

正直異様であったし、党員が今だけの措置などと言っていたが全く信用していなかった。

本当に代用だったか。いや、それとも最近手に入れた?

最近魔獣の機械化に成功した?


分からない。

兎に角言ってみなければ何もわからないことに変わりはない。

外の世界に関してもだ。


「クラウスだ。よろしく、旅人の方。」


馬車の前で魔女に挨拶した。


「よろしくね、クラウス、あなたはこの都市の人? あ、私は… えーとメアリー・スー。」

「よろしく、メアリー・スー。」


と言うと

その後女はちょっと考えて、


「やっぱりマリー・スミスにしよう。そっちでいい? あとあなたも能力者みたいね?」


などと聞いてきた。どうやら本名を名乗る気はないらしい。

それと直ぐに能力者だと見破って来た。

一瞬ドキリとして心の中で

魔女などと呼んでいることはバレていませんようにと祈った。



  


死灰の砂嵐

悪魔化したノートン・ヒューズ・ウォーカーの技

舞台に不死者の死灰を吹き荒らす。

ノートンに回復と強化の効果。舞台に存在する不死者からエネルギーを集める。

ノートンの敵に魔力循環阻害と感知能力の低下。



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