3話 傀儡師、魔窟へ ・ 首無しと死の笛 ・ ラヴァーズ 報復の準備
魔窟 州都
北東部から都心へと入る高速道路に、崖上から飛び降りる。
馬型エイリアンがチラホラとアスファルトの上を駆けていた。
遠くにキリンのようなエイリアンが見えた気がしたが。
一瞬過ぎてよく見えなかった。
白狼率いるANKHの鳥獣部隊WOLFPACKSに
領土の守りを任せた。
マザーは途中までついて来ていたが、何処かへと引き返していった。
領土外のほうが俺を忘れやすいのかもしれない。
ということはハクのところに戻った可能性が高いか。
最初の方はナビゲートしてくれていた、アムスとも途中で通信が切れた。
その前に忘れられてしまったので、まぁ仕方ない。
ここからは、また一人。
隠形を使い
残骸都市となった都心のビルの谷間
を慎重に抜けていく。
崩れ落ちた壁、建築物の外壁には蔦。
チラホラと魔物たちを見かけるが
皆ピリピリしていた。
狼の魔獣が周囲を警戒しながら通り過ぎて行った。
何だ?
朽ちた廃ビルの3階。
割れた窓からクラゲのような人間。
いや、人間の形をしたクラゲのようなものが窓際に立っていた。
人の形をして体が透けていたので、霊か何かかと思った。
「……あれも、初めて見るな。」
妙な魔物にはあまり見つかりたくない。
宿している霊気の量も図りづらいタイプの魔物だった。
鳥傀儡を数匹飛ばし偵察に回す。
雨が少し降って来ていた。
ハンカチから鞄を取り出し、レインコートを着こむ。
途中で数匹のハイエナのような顔をした豚のような身体の魔物と遭遇。
大した脅威ではなかったが、絶命するときに恨むような目をしていた。
その眼光からは微弱な呪い系の力を感じた。
戦闘の後崩れた建物の中に入り休憩。
改めて呪いに掛かっていないか確認。
幸い特に何もかけられていなかった。
次は、子猿のような魔物の群れに遭遇。
戦闘しつつ白蓮を使用し回復に努めた。
魔窟は全体的にうっすらとした霧が立ち込めて、時折霧が濃くなる。
まるで霧そのものが生きているかのように移動しているようだった。
このくらい薄い霧には黒い奴は潜んでいない。
そこだけは幸いだった。
州立図書館を通り過ぎて
道を曲がると大通りを挟んで向かい合っている
商業施設。通りの上に二つの施設の上階を結ぶようにして
連絡通路がある。スカイウェイとかとも言うかもしれない。
その空中に橋のように渡されていた通路も真っ二つになっていた。
この地点で間違いない。
アムスから聞いた情報では
ここら辺を拠点としてその3人組が魔窟の探索を進めているはずだが…
近くの建物のレストラン2階へ上がり、通りに面したテラスに簡易的な拠点を作り始める。
ハンカチに仕舞ってきた子蜘蛛傀儡に拠点作りを立つだって貰う。
ここでしばらく待つか。
ついでに斧槍のメンテナンスと改良も行う。
周辺にどの程度物資が残っているか確認していると
路地のほうから妙な気配が漂ってきた。
俺に気づく生き物自体が稀だ。
やり過ごすつもりで建物入口前の階段に腰を降ろす。
@@
旧SINシティ
死者の都 地下迷宮
首無しが地下迷宮を進んでいる。
石畳の通路から階段を下に降り、慣れた様子で
右手のメイスを一振りすると、子気味良い音と共に
それは斧の形状に変化した。
何処からか手に入れた新しいラクダ色のマントで斧の柄を軽く拭いた。
グリップが気になったらしい。
満足したのか、前方の闇に向き直ると斧を思い切り投擲した。
恐ろしい速度で
回転しながら飛んでいった斧は闇の中に潜んでいた
蝙蝠人間のような化け物の首を跳ね飛ばしてから弧を描いて
首無しの手元へと戻った。
今度は腰から、人間の頭部のようなデザインの笛を
取り出して首無しがそれを吹こうとする。が吹けない。
頭部がないことに気づいた首無しが腰に下げていたヒト型の魔物の頭部を
手でつかみ、吹け! というように笛に近づける。
わしづかみにされた頭部がその笛を吹くと
人間の絶叫のような音を響かせる。
デス・ホイッスルという類の笛であった。
絶叫が闇の向こうへと響き渡っていく。と、魔笛の主が選んだ
闇の中に潜んでいた魔物が釣られるようにとぼとぼと姿を現す。
獲物であった蝙蝠人は魔笛の主の射程距離に入った瞬間に、
飛んできた斧によって首を跳ね飛ばされた。
…
……
地下迷宮
マケンナズ・ホーンテッド・ルーム
マケンナの呪われた部屋
以前と比べて随分と拡張されたANKH・Dの拠点
には大きめのキャビネットが新たなに追加されており
ガラス戸の中には様々な生首がコレクションされていた。
またそれとは別にある、首無しの腰の位置よりも若干背の低い
胡桃色のチェストの上には植木鉢。
ミイラのようになった生き物の頭部が実のように生っている。それは
拳大の人間らしき頭部からエイリアン、ハイエナのようなものまで多様であった。
そのうちのエイリアンらしきもののミイラのようになっている頭部をもぎ取って
机の上で首無しが作業している。
頭蓋骨に穴をあけたりしてどうやら笛を作っているようであった。
最終的に2つのデス・ホイッスルが完成し。
一つを腰に下げ、もう一つをダストシューターに放り込んだ。
首無しの死笛===
ルアーのように選択した敵をおびき寄せる、魔笛
===
仕立て屋===
州都 魔窟 深部
州都の中心部を走るX川の川沿い。
人の時代だった頃はジャズフェスティバルなどが開催されていた
コンサートが出来る会場がいくつか連なる区画。
川の上に立つ橋の下のストリート。
両腕両足が鳥のような人間の魔物が休息していた。
そこにどこからともなく謎の球体が投げ込まれる。
怪しげな霊気を纏った球から灰色の一角獣が飛び出した。
灰色のユニコーンは正気を失っているかのように暴れまわる。
突進した先には近くで休息していた人間と鳥が混ざったような魔物。
男性のハーピーに突撃、ねじれた角がハーピーの心臓をつらぬき絶命させた。
「やった! やったぞ!」
通りの脇にあるオブジェに擬態していた子どもように
小柄な老人が興奮した様子でガッツポーズをしている。
「やっぱり、この一角獣は強い!
ハーピーも結構やるけどユニコーンには敵わないのは予想通り!
この魔窟は最高のスポットかも! 」
「あ、そうじゃ! もう少し、ここで魔物と戦わせて成長させたら
この前見つけたポータルを見にいこう! そっちの方も見たことない魔物がいたはずじゃし!
それが終わったら、一度拠点まで戻ってぇ… うわぁ、やる事一杯だぁ。」
仕立て屋の爺がリュックから
地図を取り出す。
指を舐めてからページをめくる。地図を眺める目は
子供のように輝いていた。
@@@
黄色の葉の木。
森の中ポツンと佇んでいた。
特に大きい樹でも
特別な花を咲かせているわけでもないが、ひと際目を引いた。
よく見ると葉が全てヒョウ柄であった。
何処か独特な雰囲気を纏い他の樹木とは一線を画すほどの
濃密な霊気を内包していた。
それは能力者でなくとも気づくほど。
子供のような体躯の老人が茂みの中からその木を見ていた。
仕立て屋の爺である。
木の前には申し訳程度に整えられた細道があり
今カタツムリの殻のようなものを背負ったロバがその樹に向かって何やら供え物をしている。
マナの塊のような真珠だった。
小男はリュックサックから球を取り出して、ロバの様子を凝視している。
うわー、緊張する。
わ、わ、わ、ど、どうしよう。
魔物を集めてたらわけわからん化け物共の縄張り深くまで来ちゃった…
こいつら何か見るからにヤバそうだし、見つかったら無事じゃすまないかも。
で、でも。すごいレアな魔物がいっぱいいるし…
つ、捕まえたら殺されちゃうかな?
どうしよう、一度帰ろうか。
エドのヤツがフリーダムにいるらしいのはわかっているし。
うん、そうだ。一度引き返そう!
エドが交渉次第でまたアロンソの像を強化してくれるかもしれない!
よし! そうと決まったらあのロバだけ捕まえて…
SACRED SPECIES===
秋も中頃だった。
その日勢力「聖種」のリーダー。
エリー・メイの愛馬であり、友の「ロビン」が忽然と姿を消した。
「ロビン」は濃密な霊気の塊である霊真珠を体内で作れる貴重な怪物であった。
セイクリッド・スピーシーズの神樹である
「レオパルト・メイプルの樹」に霊真珠を供えに行ったっきり
帰ってこなかった。
他種と距離を置く新種、最も孤独な種である
ミュータント・オリジン達の仲間意識は非常に強固であり。
仲間の捜索と犯人に対する報復の用意が始まる。
二体一対の異形が神木の周りを調べている。
カドゥケウス・アンダーソン
「良かった… レオパルドは無事みたいだ。
あ、いやこんなこと言ったらキミに叱られるかな? エリカ…
いや、違うんだよ。ロビンももちろん心配さ! でも…
キミが寝ている間に、僕が起きている間にロビンが誰かに攫われてしまうなんて…」
「君が起きている間じゃなかったのはむしろ良かったのかもしれない。
少なくともこれは僕のせいだ。だから犯人は必ず見つけ出して見せしめにしなくては…
ううん、僕に任せてエイミー。」
頭の中で誰かと会話しているように
身振り手振り動かしつつ、異形はヒョウ柄の葉の木になった実を2つとった。
一つを口に入れむしゃむしゃと頬張る。
「ふむ、B、B-、いやC+って所かな。まぁ別にいい。」
「サージ! ちょっとこっちへ!」
後方から馬の足音。
呼ばれて現れたのは半人半馬の男であった。
下半身が黒い逞しい馬の物。
上半身は毛皮のコートを着た歴戦の勇士といった雰囲気を纏う男。
毛皮のコートのまくられた袖から見える左腕は墨のように黒く
手は人間のものというよりも悪魔の腕のようであった。
特殊な形状の鞍には弓矢と斧。
―カドゥ、俺ガ、ヤルカ?
「うん、他にも追手は放つけどサージに指揮を執ってもらいたい。
必要ならケンタウロス族の配下も連れてっていいよ。」
そう言いながら先ほど神木から採った実を渡す。
受け取ったサージが実を食べる。
「どう? 前はジャガー・オークの実を食べたでしょ?」
―ウム、当タリだ。
Aトオモウ。ジャガー・オークの実が好みダト思ッタガ、コッチモ良イ。
「犯人捜索の自信は?」
―大丈夫、報復ハ成功サセル。
オレノ追跡は絶対ダ。
2人の二体一対の怪物がお互いに笑った。
===
セイクリッド・スピーシーズ
真祖 エリー・メイ ー カドゥケウス・アンダーソン
総LMP 135万
-----レオパルド・メイプル
ヒョウの葉の樹
型 ミュータント・ツリー
サブ スキルツリー
供物消化 交合成 スキルの実
神木の加護→対象 セイクリッド・スピーシーズ
-----ジャガー・オーク
ジャガー柄の葉の樹
型 ミュータント・ツリー
サブ ファミリーツリー
供物消化
家族の実 血統技の実
神木の加護 対象→ エリー・メイ




