8話 円卓の領主たち・首無し騎士とラビリンス・白衣の男
州都 東
魔女領
夜も深まった頃
「いたたたた…」
ブロンドの髪の女が首をさすりながらしかめっ面をする。
どうやら寝違えたらしい。
いつからそこにあったかわからない、ダストシューターのようなものを開けると
郵便受けのようなもの。
こんなもの作っただろうか、記憶にない。
確かANKHに関連する設備だったかもしれない。
蓋を開けると、死物の頭部のようなデザインのりんご飴や、キャンディ。
同様に生首のような形のチョコレートに混じってクリスタルで出来た入れ歯。
この入れ歯についてはマジックアイテムの素材になりそうだ。
貰っておこう。それ以外はルーシーやイーヴィーにでも上げることとした。
BBQをやっていたテラスに出て、夜風に当たる。
頬に手をやると顔が火照っていた。
「何で飲んだり、BBQやってたんだっけ? ……まぁ、理由が無くてもたまにはいいか。」
ふと大事な人を思い出した気がしたが、
すぐに記憶の奥へと消えていった。
冷たい風が心地よくしばらくそうしていると
もう夜明け前。
もうすぐ日がまた昇る。
幻視----
湧きだす黒い水
洪水
世界が溺れる
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???
謎のヴィジョンが脳裏に浮かんでくる。
領土内も外も洪水になる?
全てが流され、水没していく?
近いうちにこれが起こる?
突然未知のエネルギー体が現れる。
胸の中にあったWitcheryの十字短剣が反応。
光は、馴染みのある椅子の形に変わった。
また座れってことね。
迷うことなくそれに向かって足を踏み出した。
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死者の都
地下迷宮
ANKH・D
石畳の地下通路
そこで巨漢の戦士が
ハイエナのようなエイリアンの死物数十体に
囲まれながらも応戦していた。
10体程のハイエナが男を飲み込んでしまうような勢いで
襲い掛かる。
耳を食いちぎられながら戦士は斧を振り回して何体か仕留めた。
一度双方距離をとったあたりで、巨漢が斧の柄に触れてから
腰から何か取り出して、弾倉のように装填する。
斧の部分が外れ歪な鉄塊が飛び出すと、それはメイスの形状に変化した。
それが合図になったかのようにまた両者がぶつかり合った。
ハイエナの死物達もタフだったが、頭を食いちぎられても
まるで知らん顔で、意にも介さずに死物と打ち合う男のタフさは
ハイエナ死物の群れを凌駕していた。
結局全てのハイエナは首無しに打ち殺された。
首無しの戦士が
ハイエナたちが巣食っていた場所を調べると隠し部屋。
壁の脆い部分を手でこすると
大きなアメジストや、翡翠のような緑の宝石が出て来た。
マケンナズ・ホーンテッド・セーフルーム
首無しが斧を片手に、もう片手にいくつかの首と袋を持って
乱暴にドアを開けて帰って来る。
部屋が少し大きくなってた。
ふくれっ面のキューピッドの像の横にボーっとしているキューピッドの像が増えた。
レコードプレーヤーの横のCDは数が増えていた。
腰に下げていた人間の頭部を、
シンクで軽く洗ってからベッドの近くの棚にある容器に入れた。
持ち帰って来た残りの首を乱暴に
ダストシューターに放り込む。
宝石類は一部は机にあった鍵付きの引き出しの中へ。
残りはやはりダストシューターへ放り込まれた。
カプセルの近くから新しい頭を取り出して装着。
首と体が繋がるときに、2Mは優にある巨躯が
190センチほどに縮み、体系もスリムなものへと変化した。
ゴキゴキと首を慣らすように鳴らすと、椅子に座り地面を見つめたまま
動かなくなった。
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自由都市フリーダム
カジノ
深夜24時間営業のカジノの外を
獏が歩いている。
奇妙な足音を鳴らして目が何だか笑っている。
霊体のようなソレを
真面目そうな青年が鋭い目つきで睨んでいた。
カジノの中
関係者以外立ち入り禁止のドアを通ると床も壁も真っ白の通路がある。
途中でカギのかかったドアを開けると、
通路の明かりが足元を照らすためのフットライトだけに変わった。
その通路を人影が進んでいく。
一方は、淡いベージュのスーツの男。
もう一方はボサボサの目にかかりそうな髪に無精ひげ。
酷く無気力そうな目で、さっきから欠伸ばかりしていた。
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白衣の男
明るいコンビニのような灯りの研究室のような部屋から
足元灯だけが光源の廊下を歩いて、薄暗い応接間に出る。
溜息を吐きつつ、応接間にある鏡で自身の顔をまじまじと見る。
SINシティが落ちた日から、顔を変えた。
未だ、新しい顔にはなれないが、何故かずっと昔から
この顔であったかのような
気持ちも湧いてきている。
元々は長髪の疲れ切った初老の男のようだったが
今は30代のロックスターに成れそうな見た目の男が白衣を着ているようだった。
応接間の椅子に座り待ち人を待つ。
途端、様々な思考が溢れてくる。
・あの日パンデモニウムに日蝕が起こった日。
悪魔派が攻めて来た。本流も把握していなかったゼフの能力。
自身は狂科学者エドと共に転移のアイテムを使い脱出。
その後すぐには反撃に出ず、相手を油断させるため
そしてこちらの切り札を使うためにここに潜んでいた。
・切り札はあの堕天使のゾンビ。空飛ぶ呪われた巨人。
エドと共に作っていた自身のクローンを生贄に捧げ、
ゾンビウィルスをさらに発展させたウィルス「SINウィルス」を操る能力を持たせることに成功。
「SINウィルス」
死体を魔物化して操る人工の災厄。ゾンビのような消費期限はない魔物。
さらに霧の中の黒いものはこれを殆ど攻撃しないことも後に分かった。
これを使って悪魔派を撃滅しようとした。
ゼフがどれだけこちらの兵士を爆殺しようが
その死体は死物となって奴らに襲い掛かりつづける。
好きなだけ世界に自分たちの兵を増やし、
そして置いておけるようになるはずだった。
・そこで中立地帯となったSINシティに新勢力が発足。
災厄に飲み込まれ死亡したと思い込んでいた、
ノートンが生き延びて戻ってきていた。
そして私が生きているか、確認もせずに「Deadman」を発足。
SINシティを奴自らの領土ととし、死者の都へと変えた。
ノートンが創り、操る不死者たちは死物とは別。
こちらからは操作できない。
しかも死物自体の指揮権も効率は最悪だが。
ノートンが奪うことが可能。
・確かに自身の生存をエド以外には隠したが、この行為は自分にとっては
背信行為に思えた。あまりにも切り替えが早すぎる。
私が死んだなんて、報告はこちらからはしていない!
本流継続の知らせを流したはずだ。
受け取っていないかもしれなかったが…
・次に悪魔派にスパイと召喚獣「小鴉」を送り込んだ。
そこでノートンの配下のスパイ「スタン」が
悪魔派と接触しているところを確認。
そこまでは良かった、
ただし、そのスタンが私の隠れ家の場所と知っている限りの堕天主の能力を
コンラッドに流していなければ、だ。
・ノートンの離反は確定。私が生きている可能性ありと見て
なんとゼフを焚きつけた!
小鴉はゼフの親衛隊に感知され大ダメージを負わされて消滅してしまう。
そのうち召喚できるようにはなるが。この力が露見したのは最悪だった。
隠れ家の一つに暗い火の兵が殺到、拠点を移さねばならなかった。
・それから自身はこのまま死んだことにして、
計画通りクローンから堕天使ゾンビを作り出し世に放った。
ただもう本流は恐ろしく小さくなってしまった。
堕天使ゾンビ自体を制御する力もない。
さすがにオリジナルを襲わない使用のままでいてほしいが…
しばらくは隠れながら力を蓄えるしかない…
嫌悪している3Fに力を借りなければならないのも苛立たしい。
奴のことは嫌いだ、いつも自分が正しいと思っている奴。
操作的で、常に私を疑っていた!
アイツといると私はいつも否定されているように感じた。
たまにかっこいいなと思わせられたのも癪だった。
ただ、奴は利用できるし有能。そして正しい場合が多い。
ノートンが元本流の領土を着々と領土に組み込んでいっているのも不快。
そして、それ以上にここフリーダムには近づかせたくない。
だが奴ら「deadman」がここに来るのも時間の問題。
3Fになんとか頼んで他の勢力のリーダーの一人と顔は繋がりそうだ。
それに近い内にデッドマンがフリーダムを取りに来るかもしれないと、連絡が来た。
ノートン自身が本当に私に何か思うことがあったかは不明。
絶対の忠誠を誓われるような人間じゃないことは自分自身が一番わかっている。
ただノートンについている二人、奴らがそそのかしたと考えたほうがしっくり来た。
コルトンにマンフリード…
奴らは八つ裂きにしてやる…
さて、奴らが裏切っていることに私が気づいていることは
勘づかれないようにしなくてはな…
おっと、その前にそもそも別人のふりをしなくては…
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足元灯しか光源のない
薄暗い通路を歩いていくと上へと続く階段があり、
扉を開くと森の中にでた。
扉から斜め前にある、小さな像の後方に丸太があり
それの上にスーツの男が何かの薬品を振りかけた。
するとたちまち周囲の景色が変わり、物置が現れる。
物置に入ると地下へと続く階段。
男に促されるように眠そうな男も続く。
中では白衣を着た一人の男が待っていた。




