6話 恋人・帰還2・首無しの探索者
節制と恋人
南方大陸 X州 東部エリア
多数のエイリアンや魔物の死体が燃やされていた。
ハイウェイ近くにあるとあるハンバーガーチェーン店。
人気はなく、ただ燃えて灰になっていく生き物たちの中には
奇妙な個体がチラホラとあった。
―ああ、だから行ってはいけないよと言ったのに…
子供たち…
エリザベス…
キミなら何て言うだろう。
「そうね、でもあなたのせいじゃないわ。 大丈夫、私たちに出来ることからやりましょう。」
うん、そういうだろう。エリザベス…
でも僕は悲しい。ああ…
それは人間とエイリアンが融合したような生き物であった。
雌雄が溶け合うようにして繋がっている。
服は布を纏っているだけ。
男の異形に女の異形が抱き着くようにして一体化していた。
女の方は眠っているかのように目を閉じて、動かない。
男とは違い顔にエイリアンの要素は無い、目を閉じていてもわかる美貌が神秘的であった。
―ちょっとこっちに行っててね。エリザベス。
男がそういうと男の前方にコアラのように抱き着いて一体化していた女が
男の皮膚と混ざり合っている部分を動き背中へ回る。
おんぶされるような格好でまた体が半分ほど溶けあっていた。
男の異形が自由になった両手を前方に出し、手のひらを上に向ける。
すると幾つかの魔物たちの死体から
マナの粒が立ち昇り、この雌雄一体の異形に吸収された。
―子供たちに別れを。
君たちの力は僕たちがちゃんとツカウヨ。
そうだろう? エリザベート。
そう言うと
男のエイリアンと溶け合った顔が眠そうにウトウトとし始める。
そのまま居眠りをし始めると、今度は女が目を覚まし
男の首から上を少し肩の方へどけて、自分の首をより良い位置に動かす。
男の足は女の異形の意思通りに動くらしく。
そのまま燃えた死体の周りをぐるぐると歩き出す。
女は興味津々と言った様子で、周りを見て
ひゅう! と感嘆したように
口笛を吹いた。
その後遠く牧草地帯を見てから今度は
ピー! と何かを呼ぶように口笛を吹く。
良く通る大きな口笛の音が止むと
通りの向こうにあった牧草地帯から
犬と馬が混ざったようなエイリアンと
カタツムリの殻が背中から荷物を背負っているように生えているロバ。
ロバの方は恐ろしく大きな鳴き声で
ギョー!! ゴッ! オホッ! ギコギコ ンォー!
まるで機械が軋みを上げているような音が混じっている鳴き声。
ユニークで特徴的なロバらしい鳴き声を上げながら奇形のロバが
女の異形へと駆け寄って頭をこすりつけて愛情表現する。
「よしよし、いい子だね。 ロビン。」
ンォー! コオッ! ンホッ! ギョ―!
喜んだように奇形のロバが跳ねると
背中の殻から真珠とクリスタルが混ざったような玉が出て来る。
ロバが貰って欲しそうに女を見る。
「私に? ありがとう! ロビンの霊真珠があると私も心強いよ。」
そう言ってその玉を口に運びポリポリと食べ始める。
とはいったものの状況は厳しい。
この体の相方のこともある。
兎に角
この地にいた小規模な2つの勢力の抗争に決着がついた。
このファストフード店と周辺を改造して縄張りとしていた方が
強力な人間の男の力を借りて争いを制した。
敵対していた勢力は壊滅。
彼らは州都方面を目指して移動していった。
霧が濃いのにも関わらず、だ。
州都方面に何かあるのだろうか?
そちらに行けば希望がある?
「私も助けてもらいたいんだけど… 」
―新種になっちゃった生き物はどうすればいいんだろうね…
ロバを撫でながら溜息をついた。
エリー・メイ
雄種ミュータント
型 スリーピング・ミュータント・ビューティー
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John・Smith
風鈴と言う勢力と共に
魔物の群れを倒した後は…
やはりと言うべきか。
―えーと! すまん誰か重要な人のような気がしているんだが…
客人は誰だ?
あの熊のような大男。ジェイソンが俺にしゃべりかけると
さっき自己紹介したばかりのトニーとマリオも怪訝そうな顔で
誰だ? という顔で訝し気にこちらを見て来た。
「さっきの戦いで助太刀したものだ。」
―あ、ああ! す、すまん。
あんた影が薄くて、失礼した! た、確か恩人だった気もするし…
「気にしないでいい。」
また忘れられる前に、立ち去る。
兎も角魔女の元へ。
彼らも魔女の場所へ行ってみると話していた。
縁があればまた会うことになるかもしれない。
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X州東部から州都方面
西へ
走れば1時間ほどでWitchery領に入るはずだが
霧が濃くなってきて、思うように進めない。
霧の薄いところを無理に突っ切ろうとした時に
霧の中の黒い影に体を掴まれてしまった。
急激に霊気と生命エネルギーが抜けだす
振りほどいて何とか逃げたが。
少しダメージを負った。元々本調子ですらない。
霧の危険性を舐めていた…
休みながら行こう。ゆっくり。
仕方ない、一日でも二日でもかけて。
霧を避けながら、西へ向かって行くと
森と山のエリアに入る。
公道からはもうとっくに外れていた。
森の中では時折死者の都で見たような死体の魔物。
死物と呼ぶことにするが、それらが蠢いていた。
陽光の中でも問題なく動いていたが、日陰ではより活発だった。
白蓮で回復するも、周りに中立な霊気が無ければ効果は薄い。
そして死物からはエネルギーが殆どとれない。
風鈴と共闘したときにもっと白蓮を使うべきだったか。いまさら言っても仕方ない。
暗い火によって負った身体のダメージ自体が
急速に回復できる類のものではなかった。
本調子になるまでもう1週間はかかるかもしれない。
霧を避けながらも歩き続けていくと
死物達の動きに変化があった。
最初数体の死物が同じ方向へ向けて動き出した。
訝し気に思い、後をつけていくと
他のグループの死物達と合流して数十の死物の群れが何処かへと
進んでいく。
その先には、何処か既視感のある車両。
正確には別物ではあるが、デザインが似ていた。
イーヴィーの魔導装甲車に。
6輪の未来的なフォルムの車両は窓までも装甲で覆われ
中が見えなかったがその中には確かに人間の気配。
それに死物達が群がって叩いたり、無理やり装甲をはぎ取ろうとしていた。
時折、タイヤが微かに動くが。
何かにはまっているのか。
車に群がっていた死物に槍を突き刺して倒していく。
一定以上の霊気を込めなければならないのが厄介だった。
それでも災厄よりはましだったが。
全て倒し終わって、装甲車をノックすると
イーヴィーが窓の装甲を開けて出て来た。
死を覚悟して泣いていたようだった。
恐ろしい目にあった子供のような表情で
―名前思い出せないけど、ありがとう!
大好き! 大好きだからねぇー!
突然キスされて、びっくりする。
「大丈夫か?」
―うん。でも好きだって言ったのに、
なのに名前が思い出せない…
「そういう呪いに掛かっちゃったんだ。気にしないでいい。」
―えぇ、そっちも大変だったんだ…
何か疲れてそうだけど大丈夫?
魔導装甲車を引っ張り上げて、
ぬかるみから出す。
「燃料はまだあるか?」
―うん! バッチ恋です! あ、いやバッチグーです!
ねぇ、ウチのリーダーのこと好き? あたしは?
こんな時代だから恋愛は積極的なほうがいいと思います!
あ、あと御恩もあるし! あ、でもこんな話するタイミングかは怪しいかも。
「ああ、でも取りあえず、ちょっともう力が尽きそうなんだ…」
そう言った後に意識が落ちた。
薄れゆく意識の中で、イーヴィーが慌てて
車の中に入れてくれてるのを感じた。
次に目を覚ますと、見知らぬ部屋。
しばらく天井をぼーっと眺めていたが
魔女の領土にいることを感じ取って安心して再び瞼を閉じた。
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死者の都 地下迷宮
ANKH・D 本部
マケンナのホーンテッドルーム
部屋のドアが外から開けられ
首無しの男が斧といくつかの首を手に入って来た。
入り口近くに無造作に斧を置き。
ダストシューターの蓋を開けると
そこに手に持っているいくつかの首を乱暴に投げ入れた。
シュコン
機械的な音が、首が何処かへと送られたことを告げる。
そのままダストシューター横のダイヤルを回す。
また機械的な音。今度は何かがダストシューター内部で切り替わったようだった。
蓋を開けると、大きな郵便受け。
真実の口に少し似たようなデザイン。
首無しが手を入れると胸当てのようなものが出て来た。
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KBの胸当て ---- 対霊 対物理
ANKH・Rより 冒険者へ
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淡い緑のシャツの上から胸当てを装着する。
こんどはカプセルのほうへ近づいていくと
近くに首が保存されている容器があり、そこから一つの首を取り出して
それを自身につけた。
傷口がみるみるふさがっていき。
死人のような頭部に少しだけ血が通ったような生気が宿る。
死んでいた目がグルんと回ると、部屋の中を見渡す。
元首無しの大男は
部屋の中にある椅子に腰を降ろし、地面をじっと見つめていた。
どれくらいたったであろうか、
しばらくすると
壁時計と自身の胸当てを確認した後、斧を手に取って元首無しはまた
部屋から出ていった。




