6話 道化師と魔上人の事情
SINシティ
「エド!」
「おお! 仕立て屋の爺さん! 生きてたか!」
「当たり前だよ! いや本当はヤバかったんじゃけどね…」
ふぃー、助かったぁ。ようやくエドを見つけられたぁ。この街の連中はバカしかいないし、パンデモニウムにも入れてくれないし。どうしようかと思ってたけど…… 何とか狂科学者の奴を見つけられた。
「ねぇ、ワシがネフィリムになれる条件の話あったじゃろ?」
「おお、何か対価をもってこれたのか?」
「うん、えーとねぇ… これなんじゃけど…」
リュックからアイツのレストランから盗み出したアイテムを出す。銅像のようなものでデザインは赤ん坊らしきものが体を丸めている姿。赤子は人間というより、どことなくネフィリムに似ている。
「ん、何だこれは? 赤子の像?」
「えーとね、あのお前らの幹部で小さいネフィリムになった奴がおったじゃろ?」
「ああ、アロンソか。 死んだと聞いたが。」
「アロンソって名前か、それがこれだと思う。」
「これが? ほんとか? 全然別物じゃないか」
エドがまじまじと像を見ながら言った。
「そもそもこれは生き物じゃないだろ?」
「多分じゃけど、異人街を仕切ってた男がやったと思う。ネフィリムの死体をアイテム化したのかも。」
「ほぉそんなこと出来るやつがいるのか! すごいな、それは… でもアイテム化というと…」
うん、それでね…
エドとは結構気があう。そのままアイテムの説明と価値を話しあっていく。まだまだ謎だらけのアイテムではあるけど、結構調べたし価値があるのは間違いと思う。エドも興味深々で話を聞いてくれてる。最終的に交渉がまとまって、エドの実験に協力する形でネフィリムになれそー!
普通のネフィリムと試作段階のネフィリムどっちがいいか、聞かれて新しい方って言っちゃったけど、大丈夫かな…
ワシ、ちょっぴり心配。
***
摩天楼派=スカイスクレイパーズ
秘密の地下迷宮シェルター。高い所が好きな男、摩天楼から庶民を眺めるのが何よりも好きな男、魔上人ジョージは抜かりない男でもある。それが証拠にこんな地下施設まで所有し、必要とあらば地下に隠れる、普段のジョージであればわしほど偉いやつがこんな地下深い場所に隠れているなど誰も見破れんやろう、と調子に乗る所なのだが。
摩天楼派の主人は迷宮の寝室で頭を抱えて一人呟いていた。
「なんでや! 何で3Fは連絡に出ない!?オジーは資源が足らんとか抜かし始めとるし、ジェシーは役立たずのゴミ!」
「アダムも使えん!」
「まだまだ、抵抗は出来るが、このままじゃ… ジリ貧。ワシが負ける? 殺される?」
「い、一応投降の準備だけでもしておいたほうがええか… その後交渉に持ってけばええ… いや! あいつが、ゼフのキチガイがワシの事生かすわけがない! 本流の糞どもと使えない3馬鹿どもに全て台無しにされてしまった…
終わりじゃ…」
「ん? いや、ちょっと待てよ。ジェシーは何で力を温存している?」
今の今まで情けない顔だったジョージの表情が変わる。
「アイツまさか、本当に裏切る準備しとるんじゃ、自分だけ五体満足で本流に合流っ!? だからアイツのペットを全然戦場に出さんのか! 許さん! 絶対に許さん… あ、いやもしオジーもそのつもりならジェシー粛清はまずいか。チッ、どうしてくれようか……」
―せや!3Fにジェシーとアダムを売りつけるか!アイツの実験体になって行方不明になりゃええわ。大丈夫! アイツらは高く売れる! 今までで一番の人材や。
摩天楼派による悪魔派に対しての反攻作戦はまずまずの成果を上げてはいたが、領土を多少取り戻したところで土地のマナは痩せていて、とてもではないが追い風どころか負担になるだけであった。
ジェシーの忠告通りではあったが魔上人は強情になり、無茶な攻勢を何度も仕掛けた。ここまで敵を苦しめに苦しめたオジーの大魔槍オジボルグや魔鎖オジーチェーンもLMP消費がネックになり、これまでのようには戦場に投入できなくなっている。最近の魔上人は一人でふさぎ込むことが多くなっている。
そんな折魔上人の端末に着信。
―着信 3F
血相を変えて魔上人が端末を取って間髪入れずに喋りだす。
「た、助かった… 3フェイス! お前ホンマにぃ! 一番肝心な時にぃ!」
―もしもし、ジョージ? 早速で悪いんだけど、君さぁ、僕に精神浸食かけているよね?
「は? え? イヤ… カケテナイヨ… そんなことスルワケ…」
―君の能力、何だっけ? ライアーライアーとか色々使っているよね?
「チガ… ……」
―もしもーし。
「……」
―それ、「沈黙する能無し」でしょ? 使っているでしょ? いやちゃんと効いてるけどね。どうしても君のこと殺す気になれないのはキミが惨めすぎる存在だからなのか、それともその力のせいなのか僕にはもうわからないけど。こんなことされて許しておくわけにも行かないのわかるかな?
「……」
ジョージの顔つきは氷のように冷たくなり始める。
ふん馬鹿が…ワシの能力は最強じゃ、ゴミくず。ワシに利用され続けた能無しのボケが、何を偉そうに…… ……はいはい、また沈黙してほとぼりが冷めたころにあの裏切りモンのジェシーと一緒にこいつも罠に嵌めて殺すか… もう利用価値もないしの… 用済みのゴミは屑籠にってな。
―「ふん馬鹿が… ワシの能力は最強じゃ、ゴミくず。ワシに利用され続けた能無しのボケが、何を偉そうに… はいはい、また沈黙してほとぼりが冷めたころにあの裏切りモンのジェシーと一緒にこいつも罠に嵌めて殺すか。もう利用価値もないしの… 用済みのゴミは屑籠にってな。」
「え?」
―あれ? 言ってなかった? お前の心は最初から筒抜けだってこと。
「え? ……」
―ちなみに僕の変幻自在の能力でお前のところの幹部達はお前のスキルから守るために姿かたちを取り換えっこして、お前が何をしていたか情報共有もできてるよ。お前が僕に売り渡した本人たちも生きてるし皆知ってる。当たり前だけど彼らはもうお前にはついていかないってさ。
ジョージの目が点になり、一点を見つめ動かなくなった。端末を片手に魔上人が膝から崩れ落ちる。
「そ、そんな、だってワシがこの派閥のトップで…」
魂の抜けた顔でジョージが言った。
***
時計塔にて
3Faithが黒い端末をポケットにしまった。外は雷雨、稲光がして、3Fのサングラスの奥の瞳が少し眩し気に目を細めた。3Fが後ろを向き直ると何人かの男達がテーブルを囲み、立ったまま紅茶を飲んでいる摩天楼派の幹部3名と行方不明になっていた数名の摩天楼派の元幹部達だった。
幹部たちがそれぞれを見やって頷く。3Fがアダムに「決まりだね?」と言うとたちまちアダムの姿がジェシーになり、ジェシーだった者が行方不明だった元幹部に… その他の幹部たちも同様に姿が入れ替わっていった。
3Fが端末を操作。発信先は「ゼフ・アドリエル」
―あ、ゼフ? ドブネズミの居場所? はいはい今から教えるよん。それと、摩天楼派残党は僕がもらい受けるから。 ああ、それに関してはご自由に。
***
魔上人のスイートルーム
放心状態のジョージの耳に立て続けに地鳴りのような音が聞こえてきた。
まるで大地が自身を飲み込みに来たかのような音に地震でも起きたのか、一瞬間考えたがそうではないことは魔上人もよく理解していた。ジョージが最後に見た光景は、視界いっぱいに広がる暗い火であった。
>>魔商人ジョージ 死亡
3F
タイプ 超救世主
・夢喰い(記憶、精神干渉)
・夢移し (魂移動)
・催眠
・睡魔召喚
・サトリ (読心)
・変幻自在 (自分や他者の姿かたちを自在に変える)
・ソウルスティール (魂を取り込む、取り込んだ魂の個性を手に入れる。)
・エナジーバンク(手に入れたマナを保存しておける。)
・リビングストック (生き物を自分の予備に。魂をうつろに。)
スキルリスト:超再生、バリア、認識干渉、空中浮遊、飛行、テイム・エイリアン、テレポート、不老。
魔上人 ジョージ
タイプ 魔商人
・ライアーライアー (嘘を咎められにくくなる。)
・悪魔の舌 (話を聞いてもらえやすくなる、相手がOKする条件がスラスラ出てくる。)
・悪魔の契約 (相手に得がなく自分にだけ得がある契約を結んでも気づかれにくくなる。)
・沈黙する能無し (裏切りなどを咎められた時、疑われた時に沈黙すると、相手に見下される代わりにうやむやにしやすくなる。)
・差配の勘 (人事に+補正、 他人の才能に気づきやすくなる)
・悪魔の招待(相手に交渉のテーブルに座ってもらいやすくなる、相手はいい話だと誤認しやすくなる。)




