3話
背後から肩をぶつけられた。
人間だ。通り過ぎていく。
いつの間にか、人混みの中のいた。
夢を見ていたわけではないのはわかる。
ここに転移してきたんだ。辺りを見回すも、
ここが自分の知らない街だということしか分からない。
転移の影響なのか、船酔いのように気分が悪い。
路地の近くにあるベンチに腰を降ろす。
ふとポケットの中のハンカチに違和感。
中のものを取り出すと、骸骨の傀儡。
これは… あの洋館の。
俺の前の傀儡の王と名乗った骸骨。
先代? 代々いるものなのか? 傀儡の王って…
ふと周りを見ると
待ちゆく人が骸骨を見て、一瞬ギョッとしていた。
急いでハンカチに仕舞うと、さらに驚愕させてしまう。
目が合うと通行人が目を逸らして歩いていった。
ANKHのこともあるし、Qに戻りたい。
そうだ、記憶も全く予想外のタイミングで取り戻した…
未来の世界?で見た光景。
人類のいなくなった世界…
翼竜型のエイリアンなどが大量にいた。
俺のヴィジョン、勝利すること…
胸の奥から感情がこみあげて来る。
怒りと、情熱?わからないけど。
あの未来にはさせない。ただそう思った。
あとはそうだ、マチルダとマケンナ…
どうなっているんだ。
真犯人の怨霊使い…
あの夢で見たことが、本当なら
敵はマケンナから離れた?
レゾは生きていて…
ダメだ。考えていると頭が痛くなってきた。
取りあえず、地理を把握して
Q、オースティン、メイヘム、ニブルス、
いずれかの街への行き方を知っている人を探そう。
ベンチから立ち上がろうとした時
ふいに声を掛けられた。
「お兄さん、すごいね。 さっきの技、あっちから見てたよ?」
「……」
「何もないところから一瞬で骸骨を出して、また何処かへ消したでしょ。
どんな力なの?」
興味津々といった顔の女に話しかけられる。
暗い紫のローブをセーターとスカートとという服装の上から羽織っていて
ローブに何かの紋章が入っている…
なんだ、このデザイン?
返答に困っていると
ベンチの隣に座って来た。
肘でこちらの肘を突いて来る。
ウフン♪
まだ20代前半くらいだろう、何故か
セクシーな女性のようにボディタッチしてくる、いや美人だけど…
何が何やらわからない。
ギョッとしていると、こちらを見て顔を赤らめながら微笑んでくる。
さらにエスカレートして指先で腕をツンツンとしてきては、何故か
身体をクネクネしだす。
(おい、マジでなんだこの女… 美人だが、ちょっと気味が悪くなってきた…)
「え、えーと君は?」
「あ! いけない! 自己紹介まだだったよね、あたしはセレン。」
「おほん、私はセレン・オニール。賢者の学院で普段は教鞭をとっているんだよ。
初めまして、よろしくね。」
「俺はジョン、ジョン・スミス。 よろしく。」
「ジョンっていうのね! それでこんな世界だけど、職業は?」
「えーと、旅人かな。」
「旅人なんてやっているの? すごい! もしかして霧を抜ける方法も知っている?」
「霧? えーと気合でまれに抜けられるかもね。 ……運が良ければ。」
「あ、そうなんだね。」
「この街の前はどこにいたの?」
「えーと、ああ。えーとどこだっけかな。」
「……」
段々と気まずい雰囲気に。
ニブルスやメイヘムの街を知っているか聞いてみると。
「えーと、ニブルスは聞いたことある気がする。
ニブルスから来たっていう人に会ったことがあるから。」
「ほんとか? 行き方は?」
「確か魔導列車が通っているんだよね。
でもニブルスとどの町が繋がっているかまでは知らなくて…
ごめんね? 魔導列車は最近はなかなか乗れないらしいけど、そこに行きたいの?」
「ああ、この街からはいける?」
「ううん、この街は駅馬車は通っているけど
魔導列車がある街は何処だっけ、えーと
かなり治安が悪いけどグリムシティか、ポーターっていう都市
で乗れるかも。」
「グリムとポーターか。」
「私も魔導列車については詳しくないんだ。賢人連盟の領土は列車は通ってないし。
路面電車ならあるんだけどね。深淵教っていう宗教が列車作りに関係あるらしくて。
そこと関わりがある企業が列車を作ってるって聞く。」
「深淵教団?」
何か暗黒教団と関係があるかもしれない…
「うん、治安が悪いところで生きている人たちの心の支えとなる宗教とか謳ってたと思う。
けどあまり良い噂は聞かないね。大体治安のよくない街に教会を置いている場合が多いって。」
その後いくつかセレンから教えてもらった情報をまとめると
・この街は「学都アリステス」、賢人連盟という勢力の3賢都市のうちの一つ。
他に「問都ソクラス」、「解都プラトス」がある。
何処が首都とかはないらしい。
何人かのリーダーがいて彼らと幹部の有力者が定期的に住まいを移動しているとか…
・セレンはマナの扱いの指導をしていて、ここ「学都アリステス」には仕事で来ている。
「解都プラトス」にある賢者の学院という所の先生らしい。
・賢人連盟は住民に知識の面でも戦闘力の面でも英才教育を
施して勢力としての力の底上げをしたいようだ。
才能あるものは優遇されるし、適性ある場所に行ける。
才能が見受けられないものもひどい扱いは受けずに
何度でも大抵のことにはチャレンジさせてもらえる。
・ここからいける街は3賢都市以外では「グリム」と「ポーター」。
グリムからは「自由の街フリーダム」にいける。
そこは一切の法律がないとか、大丈夫なのか?
礼を言ってセレンと別れる。
ようやく、普通の世界に戻れたばかり。
一息つきたいし、この街も見て回りたいが。
早く帰りたい気持ちがそれを上回ったいた。
まずニブルスに向かうか…
そこまで行ってしまえばメイヘム経由でエレーニたちと合流できる。
マチルダも心配だが繋がりは感じている。
そうだ!
ルネーたちがどうなっているのか気になる。
WITCHERYとも是が非でも再会したい。
感情と共に、記憶が蘇って来る。
また会いたい。あれからどうしてるのか、大丈夫なのか?
思い出すと気持ちが逸る。落ち着け。
まずは、いける所からだ。
近くにいたカラスを傀儡化して浸食。
自走傀儡にして解放。
あまり具体的な思念までは残しておけないが
俺の思念をつけておく。
足跡を残しておくようなものだが、何もないよりいいか…
さて、ここからグリムとポーターね…
駅馬車で行けるらしい。
住人たちに道を聞きながら町はずれの駅馬車乗り場に向かう
と鱗鎧のようなものを掛けられた重装甲の馬。
デカい。アラブ馬とかだろうか。
霊気の量からただの馬ではないことが伝わって来る。
竜燐の巨馬。
馬車は4人乗りで一つしかない。
すぐ横の床屋の前で、煙草を吹かしながらカードゲームに興じる男。
そいつがこちらを見た後に、またゲームに意識を戻した。
「駅馬車に乗りたいんですが…」
「馬車? 予約は?」
「いえ……」
「じゃあ、無理かな。」
「じゃあ今から予約いいですか?」
「行先は?」
「ニブルス。」
ニブルスと言った瞬間に眉が少し動いて、その後表情を悟られないように
輪にかけて無表情になる。
「そこへは馬車はいかないよ。」
「あ、そうだった。えーとポーターかグリムで。」
「ポーターは今は無理だ。もしニブルスへ行くならグリムしかない。」
―じゃあグリムで。
「料金は前払い、賢人連盟の通貨で。」
「賢人連盟の通貨って、どこで手に入ります?」
「役所に近くに行きな、因みにしばらくグリムへは乗り合いではいけないから料金は千ドグマ、
2日後ここで正午に来なかったら次は3週間先だ。」
まずいな、金のことを忘れていた。
一度街の中心部に行き、噴水がある広場の近くで役所の場所を聞いて
向かう。金銭と交換できるものなにか、持ってたっけな。
舌打ちが思わず出てしまう。
役所をたらいまわしにされているような感覚になり始めていた。




