1話 深界の洋館にて・牛鬼と翼竜型エイリアンの大群
「明るい夜の丘」
丘の上から見えるたった一つぽつんと
立っている一軒家に向かって歩き出す。
体が熱い、意識が朦朧とする。
大きめの洋館。フェンスに囲まれていた。
家の戸を何度か叩いたときに扉がかちゃっと開いた。
中から着物を着た美少女。18歳くらいにも20代にも見える。
人形のような顔立ち。アジア人との混血だろうか……
俺を見て、彼女の瞳がハッとしたように大きくなった。
お辞儀をして中に入るように促してくる。
ついて来てという具合に洋館の中を進んでいく。
寝室につきベッドで寝ているようにとジェスチャーで伝えられた。
ベッドに入ると、急激な眠気が襲ってきた。
そのまま意識が深いところに落ちていった。
***
不思議な夢を見た。
滅びゆく宇宙。
2つの宇宙の衝突。
何者かが世界の最後を眺めていた。何か言っている…
何だ? 種は蒔いた?
いつの間にか。自分は高度な生命体になっていて、
いつの日か自分たちと同じ存在が生き残った宇宙で生まれることを。
それが自分たちの歴史の続きを歩んでくれることを…
最後の日の希望とした… そして消えた。
場面が切り替わる。
マチルダが夕暮れの街で誰かと戦っていた。
するとその男の中から死んだはずのレゾが現れる、
もう一人の敵の男が手を空に掲げると拳が光り輝いて、次の瞬間には
レゾもそいつらも消えていた。
気を失ったマチルダを、KBが扉が開いているビルに引きずって入ろうとしてた。
扉の中には倒れているマケンナ人形。
また場面が変わる。
雲の中に巨大な城がある。
城内の廊下を誰かが歩いていた。
どこかの部屋にある椅子の背に自分の名が浮かびあがっている。
「JOHN SMITH」
場面がまた変わる。
荒廃した大地。見たことのないエイリアンや
化け物が跳梁跋扈している。
何故かは知らないが、未来の…
人類が居なくなった未来だと思った。
俺の負けか。俺の負け? 敗北。
なんで俺の?
何で人類が居なくなったら俺の負けになるんだ?
また映像が切り替わり、今度はANKH
細胞らしきものや、霊気の粒子の渦の中にANKHがある。
2枚のカードがANKHの中へ入っていくところ。
夢の中で
いきなり幻視が見えた。
===
円卓 外部からの干渉は認められない
城に入る資格無き者は###
其方椅子に座る資格あり
特例とペナルティー
愚者のカード → 隠者のカード
===
二つあったカード「愚者」「星」
の一つが「隠者」へと変化した。
***
起きると明け方で。
まだ体が熱を帯びていた。
どうにも調子が良くない。
上体を起こすと、体中が痛い。
全身筋肉痛になったような痛みに筋肉自体が劣化しているような
謎の苦痛。肉体を酷使しすぎたのかもしれない。
それなのに。
心は弱っている感じはしなかった。
そこで胸の部分に違和感。心…
何故か心が強くなっているような、何かが変わったような。
何か世界が隅々まで、自分に味方しているような感覚。
自然と背がピンと伸びる。
ベッドから出てドアを開けると、廊下には着物を着た人形が足を放り出して
壁に寄りかかっている。
確か、ここまで案内してくれた子。
恐ろしく良く出来てはいるが、人間ではなく人形。
俺じゃなければ見抜けないだろう。それほどまでに人間と区別が付かないもの。
俺の傀儡に似ている……
壁にもたれ掛かって動く気配がない。
抱きしめる。瞳を覗き込むが、何もそこにはない。
廊下に置いておくのは可哀想になってベッドに俺の代わりに寝かせておく。
洋館の中を探索する。
幅の広い階段がリビングと玄関の間にある。
家には本棚が多く全体的に埃っぽい。
観葉植物は何故か、枯れていないが…
これも良く見ると作り物だった。
なのに何故か生きているような雰囲気。これもだ。
自分以外の気配も無く、館内の霊気を目で観察していく
微かな霊気が空気中に漂っている。
1階はリビングが2つ。一つはキッチンとダイニングと一緒になっていて
もう一つのリビングは1階の角のゲストルームの手前。
玄関は広い。はいってすぐのところにもう一つ部屋がある。
中に入ると高級そうな絨毯に家具、グランドピアノが置いてあった。
窓から外を見るとあの丘が見えた。
ふと霊気の光が通り過ぎて行った気がした。
追いかけるように部屋から出る。2階へと続く階段の裏だ。
いくつかの本棚にシーツが掛けられている。
気になって外すと
本棚の中に紛れてたクローゼットに
シーツが掛けられていたことに気づく。
クローゼットを開けると、地下へと続く短い階段。
降りるとひんやりとした空気の廊下。
進んでいくと行き止まりにドアが一つ。
ドアは開いていて、
年月を感じさせる木目のフローリングが見えていた。
何か、緊張する。
中へ入りたくない。とりあえず2階へ上がって
この家をもっと調べてからでも…
それからここに戻ってきてもいいんじゃないか。
何故か後回しにしようとする、思考が次々と湧いてきた。
==幻視==
勇気 鍵 切符
======
勇気を支払わないと入れない部屋。
そのような場所か…
この場で払わなくてもいいが…
入ろうか迷うと、謎の恐怖に襲われる。
考えるのをやめて、一歩踏み出した。
そこは書斎のようだった。
書斎のデスクの前の床に海賊物の映画の中でしか
見ないような宝箱。
半開きで、キラキラと光るネックレスや金のコインが
溢れるほど入っている。こんなもの実際に見たことなどない。
一体いくらくらいの値打ちがあるのか。
デスクの椅子の上には人の骸骨。
力尽きたような姿勢で椅子に座っていた。
骸骨に近づいてよく見てみると、これも人形のような気がする。
質感もところどころオカシイ。
いや、もっとおかしいのは…
この骸骨の人形…
本物の骸骨から作られている?
だから余計にわかりにくいのか?
触るとしっくりと深く心になじむ感覚があった。
骸骨はようやく役目が終わったとばかりに崩れおちた。
バラバラになったそれを拾い集める。
パーツ自体は無事だが、それをまとめていた
糸が切れたようだった。
糸……
何となく傀儡糸を差した。
骨が、静かに集まり人の形に戻っていく。
―マスター…
フフ、初めてのマスター。
初めましてだよな。
「……」
ー私はこの骸、傀儡の王だったものだ。
「傀儡の王…」
ー私は、結局のところ自ら傀儡となっている。
最も善き王は最も善き僕でもある。
そういうことなのかもしれない。別にどうでもいいが、
運命には感謝しているよ。
「一体何を…」
ーどうやらお前はこの世界の住人であり、しかし住人でもなさそうだ。
しかし、ここは君の心と共にある。
お前の心は私の心と共にある。俺の心と共にある。
「 ? 心と共に…」
ーここは第一の世界。
未来の世界。概念の世界。可能性の世界。これからの世界。
この世界は不安定で未熟でもある。お前が逃げた世界。
世界と言っても結果は様々。まだまだやれる事は尽きない。
「俺が逃げた?」
ー様々な世界との境界は未だ曖昧。
しかしせっかくここまで来たのだ。
どうか楽しんで行って欲しい。
「いや、楽しんでいって欲しいと言われても…」
思わず言うと、
脳がどくどくと動き出す。
脳の外側だ。視界がいきなり暗転した。
強制転移?
***
気がつくと、いつの間にか洋館の外にいた。
さっきまで中にいた洋館をぼけっと見る。
俺は最初から外にいたのか? それとも……
空の向こうから蠢くものが近づいてきているのが見えた。
竜のような物の大群。翼竜型エイリアンといった感じの生物。
万では利かないほどだった…
そして背後の洋館が轟音と共に崩れた。
洋館の瓦礫の下から巨大な怪物の顔。
見たこともないような怪獣。
牛の角。大きな目に潰れた鼻。
巨大な口は開かれていて鋭い歯が並ぶ。
洋館の半分はある巨大な顔面が地中から出していた。
こちらを見ている。
怪物が息を吸い込む。
喉の奥から巨大な溶岩のようなものが
立て続けに吐き出される。
丘のほうまで一気に駆けて距離を取る。
空をみると翼竜型エイリアンの第一波が迫っていた。
次々と降下してくる。
怪獣は溶岩の岩石砲を翼竜ごと巻き込むように立て続けに放つ。
翼竜型が被弾。空から落ち、地面に転がっていった。
巻き込まれないように溶岩弾を避けるが
目の前に翼竜型が迫っている。
シャドウをだして翼竜型に強化散弾を放つ。
予想以上に硬い。
この翼竜型エイリアン。一体一体が強い。
身体は人型よりも2周りは大きく、アルミ色の鱗に覆われていて
首は長く頭部のサイズは人型と同程度。
翼の他に手足はあり。前足はあまり発達していない。
逆に後ろ脚は明らかに気をつけなければいけない大きなカギ爪。
人型エイリアンのように口筒から弾丸を放つ。
全ての翼竜型エイリアンは普通の人型より強力な弾丸を放つ。
そして中には一際大威力の弾丸を放つ個体も。
駆け回り、回避しながら時折仕留めた翼竜を傀儡化。
溶岩弾が降る中、終わらない翼竜の群れと互いを倒すべく
動き続けた。我ながら追われながら踊っているようだった。
大威力の弾を発射していた個体の翼竜型を傀儡化成功。
こいつで他の翼竜型を貫通させるように撃ち抜く。
溶岩の礫を吐く怪獣。
牛鬼と呼ぶか。まだ翼竜型はいくらでもいる。
牛鬼にこの大群を誘導。三つ巴の乱戦に持ち込む。
お前だけに楽はさせない。




