2話 悪魔女史覚醒 / ANKH・Q攻勢開始
暗い部屋で目が覚めた。
見知らぬの家のリビング。ソファ前のテーブルの上に寝かされていたようだ。
炭の様に黒い雨が激しく窓を叩いている。
目の前のソファで眠っている男。
私の護衛だった男が今は私のマスターだということも理解できた。
自分が死んだことも。あの時体の内側から暗い火が沸き上がって…
そこで意識は途絶えていたのだった。
ジョンが私の魂を探してこの体に戻してくれた。
私は彼の傀儡。人形。確かに意識が生前よりもボーっとしている気がする。
「あ、アー。ワツィ、ワタ、しは。マチルダ。」
少し喋ってみるとたどたどしい感じがした。それも別にどうでもいいが。
死んだ実感なども特別湧かない。
でも有難う。主よ。
ベッドルームを探して主を寝かせておく。
-----ザー、ザ、ザー
キコエ、ル? キ、…キ…える?
スピーカーの電源が点き。
マケンナと名乗る霊がしゃべりかけて来た。
リビングにいる女の人形の声らしい。傀儡の身体とこの家自体。
その二つともがマケンナ……
状況を整理。
ジョンと私はポータルでこの「雨降りな死者の街 レイニー・オースティン」へ来た。
ポータルは消滅。しかし何処かに他にもポータルはあるはず。
ジョンも探していた。
黒い雨と風は霊気を奪う。
気を付けなければならない。この家の中は安全。
我が主は黒い雨にマナを奪われ過ぎてしまった。かなり衰弱している。
ここで回復に専念すべき。しばらく動けない。
マケンナの協力者だったレゾという男がマケンナを裏切って殺害。
この街を領土化した。街の名は「レイニー・オースティン」
レゾは死者や亡者を誘導したりそそのかしたり出来る力を持っている。
こいつを倒せば町は穏やかになるはず。黒い雨も落ち着くだろう。マケンナ談。
マケンナは黒い雨や風にもレゾが干渉できるのを知らなかった。
それとレゾにはマケンナも知らない仲間が何人かいるはずだとも。
そのうち一人は悪霊もどきを使う太った女。
さて私の選択肢は……
・この街から脱出
・この家を育てる(マケンナ推奨)
・レゾを倒す
後は、何だろう。私としては…
「この家を強化シて、レゾを倒し我らANKH領とすル。ソ、してキャリアアップして…」
-----ザー、ザザー
オイ、マチルダ! アンタ、ダ、イジョブ?
ザー、ザー……
「大丈夫だ、マケンナ。私ノ第二の人生。の幸先ノ良さに。
思ワず神に感謝してしまっテイただけだヨ。」
-----ソ、ソウ、カ ザー、ザー
意気揚々と外に出ようとするが、とても出れるような環境ではないことに気が付く…
そもそもこの黒い雨に当たるとまずいなら、外に出れない。
ドウシヨウ…
その日からはシャワーを浴びて紅茶をのんで
マケンナおすすめの音楽を聴いて寝て過ごした。
________数日後
今日も明け方に目覚めた。
傀儡になってからより規則正しい生活を送れている。嬉しい。
生前の私ならもっと喜んだだろう。
私は合理的なことや充実している感じが好きだから。
窓の外を見ると相変わらずの黒い雨。
時折窓が割れんばかりに叩かれる。
何もいないのだが。このような怪奇現象がこの家は良く起こる。
窓は強く叩かれてもまるで割れる気配も無く鈍い音がするだけ。
私がセールスをやって売り歩きたいほど頑丈な窓だった。
3階にジョンの様子を見に行くとやはり眠り続けたまま。
----ザ、ザー
ソウ、カンタンニハ。回復デキナイヨ。
ザー、ザザー
目を凝らして主のマナの状態を確認していくと
右手に何かが握られていた。
これは? 手が開いた。何か入っている。
種?
ジョンの目がうっすら開いた。何か言っている気がする。
ー受け取れ… うま、く使、え…
受け取れ? 私に言っている?
アレ?
主の手の中にあったはずの種が無くなっていた。
何だったんだ? 見間違いだった? それとも床に落ちてベッドの下に…
考えすぎると頭が重くなって意識が朦朧とする…
人形になる前からそうだったかもしれないが。
取りあえず…
まぁいいか。
@@@@
暗黒教団 悪魔派領土 メイヘムシティ
梅雨のように小雨が続いていた。
火の夜の惨事以降。未知の勢力が度々メイヘムに侵攻。幹部アインも離反。
悪魔大統領ゼフは市民や部下を攫っては人間爆弾に改造し一部暗き炎を仕込んだ個体も量産して対抗。
メイヘムに元からあった噂。人攫いを陰で行っている幹部がいる。
というものがあったがそもそも悪魔派トップが望んだ事であったのが
それとなく市民たちにも理解出来始めた。しかし戦時の混乱の中表立って講義できるような市民は居なかった。
今が好機と親衛隊などが進言しゼフ・アドリエルは悪魔派の機械化兵。
通称「機械人」を今まで以上によりおおぴらに生産していく改革を前倒しにした。
________夜更けのメイヘム
建物の上を走る影が一つ。
突然建物屋上が爆発するがそれを回避し
人影は家屋の屋根から屋根へと跳躍しながら街の奥へと駆けていく。
途中何度か爆発が起こる。
建物や通りにある家の塀等様々な場所に爆弾が設置されている。
さらに戦闘服を来た兵士や一般市民に見えるものも人影を探し回る。
今やメイヘムの街の住民の多くが機械化爆弾兵に改造され始めていた。
駆け寄って来ては直ちに自爆攻撃を仕掛けてくる兵士や住民たちを
速さで寄せ付けさせずに人影は進む。
爆弾兵の数が多くなってきている。
黒く長いエネルギーの腕が爆炎から出現し振るわれた。
アレには注意しなくてはならない、と認識しているように
ソレを視認した影は加速。
線路沿いのトンネルの中に入ると壁の一部が動いた。
そこから地下へと進んでいく。
男は足を緩めゆっくりと歩きながら上着を羽織りだす。
すると獣。狼のような頭部が、上半身を覆っていた毛並みが人間のそれとなっていった。
上等な革のジャケットが良く似合っていた。
身長は190近くあるだろう、鍛え抜かれた肉体にオリーブ色の肌、青い瞳。
精悍な顔つきの美丈夫であった。
地下にある作業部屋のようなところへ着くと机の上にある端末のスイッチを入れる。
「こちらアントニオ。A地点に到着。」
―こちらエレーニ。トニオ、そこで物資を拾ったらB地点へ行って。
糞餓鬼のカイトが用意されてるから。
あとC地点にはオートマタが20体ある。うまく使ってよ。
アイツらが一体何処に喧嘩吹っ掛けたのか身をもって教えてあげなきゃね。
「了解。」
----アントニオ・コンティ
ウェアウルフ LV4
・人狼の呼吸
・鋼体
・追跡する嗅覚
・超再生(人狼時)
・人狼化ー肉体超強化
エレーニとの通信を切り部屋にあるリュックを背負って、
迷路のような地下通路を進んでいくと大量に物資が積まれている部屋にたどり着いた。
美丈夫はジャケットの襟の部分を直すように触ってから、近くのスーツケースの中身を確認。
スーツケースと大きなカバンを手にした。
鞄は太いロープでグルグルに巻かれている。
ちょっとした机ほどの大きさのバッグには鉄隗がこれでもかと詰め込まれていた。
2t近くあるそれを当たり前のように背負うと巻かれていたロープを自分にも巻き付ける。
胸ポケットから小さなノートを取り出し何かを確認した後。
一つ息を吐きだすと狼のような顔つきに変化。
それらを背負いながら、人狼は獣のような速度で地下通路を駆けていった。




